フォード フォーカス 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:原田淳
世界的な名車の初代モデルがライバル
初代モデルである先代のフォーカスは1998年にデビューした。発売から6年の間に全世界で400万台もの販売を記録する大ヒットモデルになった。発売翌年の1999年にはヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、翌2000年には北米でもカー・オブ・ザ・イヤーを受賞して、ヨーロッパと北米の両方でイヤーカーに選ばれた最初のクルマになった。
日本では2000年に発売されたが、その直後にデリバリーの遅れが発生するなどのタイミングの悪さもあって、5年ほどの間に1万台を販売している。世界的に見れば微々たる台数でしかないが、日本の輸入車としてはそれなりに良く売れたク ルマである。
そのフォーカスがフルモデルチェンジを受けて大きな進化を遂げてきた。今回のモデルはグループ企業であるマツダやボルボと共同でアクセラやV50とプラットホームを開発したのがポイント。クルマそのものはそれぞれの個性があるが、基本部分では共通のものを持つ。
デザインの良さはそのまま
初代フォーカスではデザインの良さもヒットの理由だった。フォーカスが採用 したエッジを効かせたデザインは、その後のフォード車のデザインの流れを作る ものだった。それだけに今回のモデルも初代モデルのデザインを受け継ぎ、フ ォーカスらしさを感じさせるクルマに仕上げている。特にボディサイドのラインなどにそれは良く表れている。
さらに彫りの深いデザインを採用したフロント部分から、リヤに向かって流れ るラインなど、スタイリッシュなイメージを強調するのは初代モデルと共通だ。
ボディサイズはひと回り大きくなった。特に全幅が1840mmに拡大されたのは大 きなポイント。ボディサイズの拡大には居住空間の拡大などのメリットがあるが、ルーフアンテナなどと合わせて日本の駐車場事情にそぐわない面があるからだ。
今回のフォーカスはインテリア回りの質感にもこだわって作られたとのこと。 インパネやドアトリムにはソフトな素材が使われていて、新しい感触の手触りが特徴だ。
快適なタウン走行
試乗したのは2.0。新型フォーカスには1.6Lエンジンの搭載車も設定されるが、 これは12月に発売される予定だ。直列4気筒2.0Lのデュラテックエンジンが発生する107kW/185N・mは、クラスでは平均的な実力といえる。
タウンモードで走らせたときにはまずまずのトルク感を感じさせ、わずかなアクセル開度でもしっかりした走りを示すので、とても扱いやすいクルマという印象だ。ただ、箱根の山道などを走るときにはアクセルのレスポンスは必ずしも俊敏なものではなく、もう少し元気の良さが欲しいと思わせる。マニュアルモード付きの電子制御4速ATのレスポンスなどもごく平凡なものといえる。
エンジンやATが平凡な印象を与えるのに対し、足回りは実にしっかりした印象だ。前後にスタビライザーが追加され、リヤサスの取付部の剛性を高めるなどの改良が効果を発揮して、高いレベルの操縦安定性と乗り心地の良さとがうまくバランスされている。電子油圧式のパワーステアリングの操舵感がとても好感の持てるものである。
サイズアップにより室内が広くなった
新しいフォーカスが従来のモデルに比べて確実に進化しているのははっきりと確認できるが、進化に伴ってボディサイズが大きく拡大されたのは考えものだ。最近はどのクルマもモデルチェンジをするたびにボディサイズが大きくなる傾向が顕著だが、フォーカスの全幅1840mmという数字は半端ではない。ひとクラス上のBMW3シリーズでも1815mmなのに、それを大きく上回るサイズであるからだ。
日本ではタワーパーキングがあるほか、駐車場の白線も1700mm程度のボディを前提にしているところが多いので、駐車に苦労することが多くなりそうだ。
ただ、ボディが大きくなった分だけ室内空間は大きく広がった。前後方向だけでなく左右方向の余裕が大きく、後席に乗ったパッセンジャーも快適なドライブを楽しむことができる。
価格は2.0で270万円と従来に比べてアップしているが、このボディが大きくなったほか、安全装備のESPが標準で装備されるなど、装備や仕様が向上したこと を考えると、まずまずリーズナブルなものといえそう。ゴルフやアストラなどと 競合することになる。
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