フィアット グランデプント 試乗レポート

フィアット グランデプント 試乗レポート
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イタリア車らしいセンスの持ち主「グランデプント」に4ドアモデル登場

日本に輸入されているフィアットはスモールカーのパンダと、横3座の6人乗りムルティプラ、スポーツカーのバルケッタ、それにこのグランデプントがある。

グランデプントは従来のプントの後継で、文字どおり一回り大きなボディを持つ。クラスとしてはフィエスタやポロといったクラスに属し、日本では今年の6月に2ドア+ハッチバックのスポーツから登場し、11月に標準車となる4ドア+ハッチバックのデュアロジックが加わった。

デュアロジックは2ペダルの5速セミマニュアルで、エンジンもDOHC・95psSのスポーツとは異なるSOHCの77ps仕様となる。またスポーツでは4人乗りとしていたがデュアロジックではリアシートを平板なものにして5座とし、ファミリー層へ訴求を図っている。ただやはりそこはイタリア車。いたるところにユニークなセンスが活かされており、欧州の他のライバルとは差別化を図ることに成功している。

ロマンチックで親しみのあるデザイン

ジウジアーロとフィアットの社内デザインチームによるエクステリアは一昔前のロマンチックなスポーツカーを連想させる丸みを帯びた面を持ち、特にフロントノーズは特徴的だ。スポーツの力強さとは違い、デュアロジックは若々しさの中にも落ち着いたサイドラインを見せる。

インテリアはイタリアのモダン家具を連想させるような造詣だが、親しみやすいのが特徴。またスポーツでなくともデュアロジックは十分スポーティなインテリアを持つのはいかにも“らしい”。

Tera仕様に標準、Mega仕様にオプションで選択できる大きな電動サンルーフも明るい室内を演出し、いかにもフィアットらしくてお勧めのアイテムだ。キャビンはこのクラスでは最大級の容積を持ち、ラッゲージルームはリアシートを倒すと638リットルの容積をひねり出す。パッシブセーフティの面では6つのエアバッグを備え、安全面では厳しいユーロNCAPで最高の5星を獲得している。

実用車らしいキビキビとした軽快さ

セミマニュアルのトランスミッションは軽量でコストがかからないのと手軽なので欧州では普及しているが、日本ではフルオートマチックしか見られない。トルコンやCVTとは違って、慣れないとタイムラグがあるのが難点。最近ではタイムラグを減らしたスポーツタイプのセミマニュアルも登場しているが、グランデプントは耐久性も考慮してスタンダードな仕様となっている。しかしコツをつかむとマニュアルの面白さと渋滞時のストレスから開放されるので、グランデプントのキャラクターには合っている。

エンジンは77psとしては実用トルクがあって日常的な使い勝手はよいが、もっとスポーティに走らせようとするならば、スポーツの95ps仕様は欲しくなる。6速マニュアルのスポーツを選択するか、迷うところだろう。ハンドリングはバシッと締め上げるタイプではないがフィアットの実用車らしく、キビキビとした軽快さを持っておりドライビングは楽しい。

デザインとハンドルから陽気さが伝わってくるのがフィアット

フィアットは一時、大不振と言われていたが、製品ではグランデプントの成功などがあり、立て直しつつある。何しろフィアットグループはフェラーリやマセラッティ、アルファやランチャなどの魅力あるブランドを取りしきる大元。こちら元気がなくなると全部が落ち込んでしまうので、自動車ファンとして回復は喜ばしい。

グランデプントはそんな元気なフィアットの一端を見てとれ、一時のフィアットらしくないクルマ作りから脱却したことが分かる。カチリとしたクルマ作りのドイツ車とは違い、ノリのよいデザインとハンドルから陽気さが伝わってくるのがフィアットなのだ。インテリアなどの材質は高価なものではないが、デザイン力の高さで素のよさを活かしている。また運動性能は小さなパワーを活かしきって、キビキビ走らせるというイタリア車の伝統を守っているだけでなく、高い安全性を併せ持っていることがセールスポイントでもある。

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日下部 保雄
筆者日下部 保雄

大学卒業後、モータージャーナリズムの世界へ入り、自動車専門誌をはじめ各媒体に新車の試乗レポートやコラムを寄稿。最近では、雑誌媒体のほかにFMラジオやインターネット自動車情報サイトでも活躍。記事一覧を見る

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