エコカーの真相 第十二回/テレビ・新聞が書かない「EVの真実」(2/3)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:オートックワン編集部
エコカーの真相 第十二回/テレビ・新聞が書かない「EVの真実」
東京モーターショー2011 トヨタブースにてトヨタ自動車 豊田章男社長によるプレスカンファレンス 一般公開日初日のトヨタブース FT-EVⅢ FT-EVⅢ トヨタ 86(ハチロク) トヨタ 86(ハチロク) プリウスPHV トヨタ FCV-R トヨタ FCV-R 日産 ピボ3 日産 ピボ3 画像ギャラリーはこちら

「トヨタがEVで出遅れている」という報道は嘘だ!

一般公開日初日のトヨタブース
トヨタ 86(ハチロク)トヨタ FCV-R

第42回東京モーターショー。

その西館のトヨタブースには、入口付近に「86(ハチロク)」。その先には、「プリウスPHV」「FT-EV Ⅲ」、そして「FCV-R」が一直線上に並んだ。つまり、プラグインハイブリッド車、電気自動車、そして燃料電池車だ。

これはまさに、トヨタが過去数年間に渡って主張してきた、電動化車両の正常進化そのものだ。つまり、2011年現在、トヨタはプラグインハイブリッドの量産化を決めただけで、量産型EVの具体案は示していない。だから、「リーフ」「i-MiEV」に先を越されているような印象を持つ人もいると思う。

しかし、EVは航続距離がガソリン車と比べると少ない、また走行条件により航続距離の変化量が極めて大きい、さらには充電インフラの世界市場での標準化が未確定など、様々な課題がある。

そのためEVは限定的な市場であり、その普及は急速に進まない。これが、世界の自動車産業界での定説だ。

だからトヨタはいま、EV量産化に動かない。その逆パターンとして、日産と三菱は動く。つまり「トヨタが動かない間に、ビジネスの基盤を築け」という経営判断だ。

また自動車業界のなかでは、トヨタはリチウムイオン二次電池技術で出遅れている、とまことしやかにいう人がいる。同分野で世界をリードしてきた三洋電機の技術が欲しかった、とも噂される。

だが、現実は違う。自動車用のリチウムイオン電池は、大量に製造するという点では、まだ創成期にいる。その過程で、トヨタであれパナソニックであれ、その合弁が基盤であるプライムアースEVエナジー社であれ、トライ&エラーは起こる。

しかもそれは、日産系の電池メーカー・AESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ)であれ、三菱系のリチウムエナジージャパンでも同様だ。

これが、自動車用リチウムイオン二次電池に関して、これまで数多くの現実を見聞きしてきた筆者の本音だ。

さらにいえば、トヨタは本社直轄のほか、グループ会社のなかにも、二次電池の基礎研究開発の部門がある。その規模と予算は、日系メーカーのなかで最大規模だと考えられる。

環境技術における中長期的な協力関係の構築に合意したトヨタとBMWグループ

さらに、次世代の二次電池開発をBMWと共同で進めることが明らかになった

重ねて言う。トヨタはEV戦略でブレはない。トヨタの社内教訓、適時適材適所はEVにも適用されている。

また、参考までにトヨタEVについて2点、付け加える。1点は「コムス」について。90年代後半の「RAV4 EV」以来、EV量産車はない。トヨタのグループ企業のトヨタ車体が今年春まで生産していた「コムス」は、トヨタ本社が直接関わったプロジェクトではないので、「トヨタのEV」とは言えない。

2点目は「テスラ・トヨタ」。昨年11月発表のテスラ・トヨタによる新型「RAV4 EV」のプロジェクトは、トヨタのEV開発陣もびっくりの飛び入り参加だ。

これは、北米での工場売却など様々な要素がある「経営判断案件」であり、あくまでも北米での特殊事例なのだ。そのため、テスラが推奨している、いわゆるパソコン用電池の「18650」(直径18mmx高さ65mm)のリチウムイオン二次電池を数千本単位で使用するEVは、トヨタ電動車ビジネスの本流にはならない。

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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