今、改めて考える「トヨタ問題」/河村康彦(1/2)

今、改めて考える「トヨタ問題」/河村康彦
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今、改めて考える「トヨタ問題」/河村康彦

いまだ進行形。加えて、世界広域の複数のモデルに関わる事柄だけに、なかなかひと言で片付けるのが困難なのが、現在のトヨタが直面する諸問題。とはいえ、一部にはそろそろ明確になって来た事柄もあるようなので、改めてこの話題に触れてみたい。

いわゆる「トヨタのリコール問題」とひと口には言うものの、そこではメカニズムにかかわる内容からその後の対処の方法論、果てはアメリカの政治問題に関わる事柄など、その範疇が多岐に渡っている事が問題を複雑化させている。

さらに、報道する側のメカニズムに対する無知などから、世に伝えられる情報が錯綜気味になってしまったのもハナシを複雑化、かつ長引かせている要因であるようだ。

例えば、ひとたび飛行機や鉄道事故が発生すると、通常ならばそれが無視されるレベルの不具合でも、その企業にまつわる“不祥事”として報道されるのは、よくありがちな事柄だ。現在のトヨタに関する日米での報道の“熱心さ”も、どうやらそんなモードに入り込んでいるのが一因であるように感じる。

こうした点では、「トヨタに対する過剰報道」というコメントにも一理があると思うし、ひいては「新手のジャパン・バッシングではないのか」という問いにも賛同の気持ちが生まれそうになる。

しかし一方で、特に米国において問題を複雑・長期化させ、それが“逆輸入”のカタチで日本でもトップニュースの扱いを持続させているのは、やはり主にトヨタ自身に責任があったように思える。

当初は「純正マットを使わないのが問題」という見解を示しながら、しかし結局は3ヵ月後にアクセルペダルの形状変更というリコールを実施した米国での『フロアマット問題』。

副社長が「お客様のフィーリングの問題」と会見を行いながら、そのわずか8日後にはリコールを発表した国内の『プリウス・ブレーキ問題』。

さらに、「出席の予定は無い」と社長自らが発言をしながら、追求の動きが収まらないとなると招致に応じる姿勢に転じた米国での『公聴会問題』と、結局は「前言を翻して要求に飲む」というカタチが続いた対応は特に「イエスかノーか」の即答を求めるアメリカの人々にフラストレーションを与え、それが誠意の無さと受け取られてしまった可能性は大きい。

そして最終的には、中間選挙へと挑む議員の格好のパフォーマンスネタにされてしまったのは、「この期に及んで米国での商売のやり方を知らない」と言われても仕方の無い事だ。

そもそも、一定の踏力でブレーキペダルを踏み続けているのに、途中で減速Gが低下するというプリウスでの現象を「お客様のフィーリングの問題」としたのはいくら何でも乱暴だった。

例えそれが保安基準に抵触、すなわちリコールに相当する案件ではなくても、ドライバーが不安を覚える違和感を抱くならば、それだけで「改善を行うための十分要件」であったのではないだろうか?

この点においては、前原国交省大臣が語った「顧客の視点がいささか欠如しているのではないか」というコメントには100%賛同したい。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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