「ポケモンGO」がアメリカで自動運転の重大課題に!(3/3)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史
自動運転に対する社会認識を大きく見直す時期
こうして「ポケモンGO」が度々登場した背景には、アメリカ市民の自動運転に対する不安や誤解を解消しようとの、米政府の思惑がある。
米政府はいま、運輸省を通じて自動運転のガイドラインを策定中だ。
これは自動車メーカー、自動車部品メーカー、さらにグーグルに代表されるIT系大手など、自動運転車を開発/製造する企業に対する技術的な指針になる。また、道路交通法における自動運転の法整備についても触れる予定だ。
だが、このガイドラインの発表が当初の予定よりも遅れている。その理由のひとつが、5月にフロリダ州で発生した、テスラ「オートパイロット」使用中と見られる死亡事故だ。
この「オートパイロット」は、前車追従式クルーズコントロール(通称:ACC)を作動中に、運転車がウインカーを出すとクルマが自動的に車線変更を行うことができる。
筆者も今年1月、カリフォルニア州内のテスラ本社工場を基点としたメディア試乗会で、この機能をフリーウエイで実体験している。
日本では、この機能を「自動運転と呼ぶのは、言い過ぎ。スバルのアイサイトの機能に近い、単なる高度運転支援(ADAS)に過ぎない」という声がある。
だが、アメリカの当局である米運輸省・国家高速道路安全局(NHTSA)の見解は違う。テスラ「オートパイロット」はNHTSAによる自動運転を示すレベルでは「レベル2」に帰属することを、今回のシンポジウムでもしっかりと説明した。
アメリカ政府はいま、自動運転の本格普及に向けて、大きな一歩を踏み出そうとしている。
NHTSA長官が「政府・産業界・消費者が、それぞれ相互に、自動運転のあるべき姿を協議し、自動運転を社会にとって有益な存在にしていく必要がある。そのなかで、最も重要なことは安全性を確保だ」と強調した。
その「安全性の確保」を認識するために「ポケモンGO」が引き合いに出されたといえる。
自動運転技術と法整備の国際的な主導権を握ろうとしているアメリカがいま、大きく変わろうとしている。
[Text:桃田健史]
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