プジョー 307CC 試乗レポート
- 筆者: 竹岡 圭
- カメラマン:難波賢二
307ブランドのイメージリーダー
ハッチバックをベースに広大なガラスルーフを持つSW、ツーリングワゴンタイプのブレークと、ラインアップを展開してきた307シリーズの、トップモデルとして導入されたのが307CCだ。
言うまでもなく特徴的なのは、電動メタルトップ。スイッチひとつでクーペからカブリオレへと変身する。
実はこの形、プジョーでは伝統的な発想に基づいていて、起源を辿れば1934年のパリモーターショウに登場した402エクリプスに行く着く。それは長い年月を経た後、1999年に発表された、20ハートというコンセプトカーに受け継がれ、ようやく量販モデルである206CCに辿りつくこととなる。そして今回の307CCと相成るわけだ。
プジョーではこれを世界初のフルメタルトップのフル4シーターのCCとしており(206CCは2+2)、307ブランドのイメージリーダーとしていきたいとのこと。今年のWRC参戦マシンがCCベースのところを見ても、その意気込みの強さが伝わってくる。
流れるように自然で、抑揚感を持つ流麗なフォルム
いわゆるオープンモデルというのは、ルーフを閉めたときも開けたときも、スタイリングとして完成していなければならないという、厳しい審査眼にさらされるものだ。
その点307CCは見事にこれをクリアしていると思う。流れるように自然で、抑揚感を持つ流麗なフォルムは、ひとクラス上の上質感と押し出し感を感じる。
そして注目の電動フルメタルトップだが、スイッチひとつ、わずか25秒で開閉できるすぐれものだ。しかも完全に停止しなくても、時速10km/h以内ならば操作が可能なので、急な雨の時などもすばやく対応できるのが嬉しいところである。
続いてインテリアだが、これもカブリオレモデルならではの心遣いがされている。なんとベースグレードにも本革シートが採用されているのだ。その上のグレード以上では、インパネまですべて革張りが採用されているなど、非常にプレミアム感が高いヴィヴィッド仕上がりとなっている。注目度の高いカブリオレモデルならでこそ、オーナーにはたまらない装備だろう。
クーペ&カブリオレというネーミング以上の静粛性とボディ剛性
カブリオレモデルとなると、気になるのが静粛性とボディ剛性の高さだと思う。ひと言で先に言ってしまうと、307CCはクーペ&カブリオレというネーミング通り、いや期待以上のものを持っていたのだ。 まずクーペスタイル時には、完璧にクーペと言い切っていいほどの静粛性を保っていた。そのレベル、これからルーフが開くモデルとは思えないほど。またボディの剛性感も非常にしっかりしたもので、パワートレインに対して十分と言えると思う。
それは307CCの中で最もスポーティなグレードとなるS16でも同じであった。爆発的なパワフルさはないが、きちんとトルク感の感じられるセッティングはなんら不満もなく、スポーツ走行を楽しめるといった感じ。足まわりも、プジョーの猫足とはよく言ったもので、固められている感はないのに、コーナーでもスッと粘ってくれる見事なもの。それでいて街中の乗り心地だって、まったく犠牲にされてはいない。
また今回試乗したのはMTモデルだったのだが、シフトの入りも非常にスムーズで気持ちイイのひと言だった。ちなみにATモデルも、シフトショックがずいぶんと軽減され、まったくストレスのないものに仕上がっていたことを付け加えておこう。
スタイリング、乗り心地、運動性能と期待以上の1台
スタイリング、乗り心地、運動性能と非常によくまとまっている307CCだが、さらにもうひとつ美点がある。メタルトップモデルとは思えないほどのラゲッジ容量を誇っているのだ。
さすがにオープン時には狭くなるが、クーペスタイル時にはカタログスペック的にはハッチバックをしのぐ積載量を持つ。上下高があまりないので、高さのあるものは厳しいが、積み方次第で日常のファーストカーとしても十分使える性能を持っていると言えるだろう。
非の打ち所がなさそうな307CCだが、ひとつだけ弱点がある。それは後席の居住性。メタルトップの収納の関係で、背もたれがかなり立ち気味なので、いくら4シーターとはいっても、大人が長時間座っているのは少々キツそうだ。しかし206CCのようにエマージェンシーという感じではまったくないので、日常のドライブならばさほど問題にはならないだろう。
そして日本で使うにあたっても、右ハンドル車でもペダルレイアウト的に、まったく問題がないのも嬉しいところだ。正直、期待以上の1台だったと素直に言ってしまうことにする。
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