アウディ、ル・マン24時間に「R15プラス」を投入

アウディ R15

第78回ルマン24時間耐久レースが、今週末の6月12~13日に開催される。他に類をみない世界でもっとも有名な耐久レースであるルマンは、これまでに数多くの新しい自動車技術の開発を後押ししてきました。

アウディは1999年以来、この西フランスで行われる伝統的な耐久レースを“Vorsprung durch Technik (技術による先進)”の発表の場として活用してきた。過去10年の間に8回の優勝を飾るという記録によって、アウディブランドは近代ルマンの歴史の中でもっとも成功したブランドとなったが、それは一貫した技術革新によって成し遂げられてきた。

前輪駆動、ラジアルタイヤ、ディスクブレーキ、ハロゲンヘッドライト、ターボチャージャー、そしてワイパーなどの革新的技術はすべて、ルマン24時間レースをその開発の起源としている。その中でも最近の2つの画期的技術は、アウディによってもたらされたもの。ターボチャージャーとダイレクトインジェクションを融合した技術の素晴らしさは、2001年から2005年のルマンで立証された。そして2006年には、アウディが世界中から注目と賞賛と浴びることとなった、ディーゼルエンジンでのルマン初優勝という快挙を成し遂げている。

これほどまでに燃費効率、持続耐久性、低燃費、CO2排出量の低下に焦点が置かれ、革新的なコンセプトをもったエンジンが活躍するレースは、ルマンをおいて他にはない。「それこそが、アウディがスポーツプロトタイプレースに参戦を続ける理由なのです。アウディは、燃費性能に優れたクルマを市販しているブランドという評判を得ているが、それはルマンへの挑戦を続けていることが後押ししているのです」と、アウディのモータースポーツの責任者Dr.ウォルフガング ウルリッヒは説明している。

2010年、アウディは燃費をさらに向上させたマシンでレースに臨む。昨年の3位という結果を受けて、ディーゼル レーシングカー「Audi R15 TDI」は数多くの部分に改良が施され、さらに燃費の良いマシンに進化した。アウディ スポーツの技術者達は、広範囲にわたり、細部を詳細に見直すことで、5.5L V10 TDIエンジンの出力を、レギュレーションによる厳しい規制が行われたにも関わらず、昨年と同レベルにまで高めている。R15プラスと呼ばれる、徹底的に改善された空力特性によって、最高速度も向上している。ラジエターはその取り付け位置が変更された。コクピットは、以前のそれよりもさらに人間工学的に進化した仕様となっている。さらに高性能スポーツカーR8に装着されているLEDヘッドライトシステムが、2010年型Audi R15 TDIの補助灯として採用され、その結果夜間走行において、高い視認性が得られている。

今年3月以降、R15プラスは勝利の為にやり残すことがないように、4万km以上におよぶテスト走行を消化してきた。テスト走行は、異なった路面での30時間に及ぶ2度の耐久走行や、各種の状況を再現した風洞を使った空力解析、ラジエターに悪影響を及ぼすことを想定した非常に汚れた路面でのテスト、ル カステロとスパ フランコルシャンで行われた2回のルマンシリーズレースへの出場、そして5月末に南フランスで行われた最終テストが含まれており、最終テストでは空力特性とマシンのセットアップ、タイヤのコンディションなどのバランスが確認された。

昨年よりも入念な準備体制

「昨年は、アクシデントによって入念な準備が出来なかったが、それはルマン出場において致命的だった。今年は、去年にくらべてずっと準備が出来ている。だからといって、我々が非常に強力なライバルと対峙するという事実に変わりはないし、また24時間レースでは常に言えることだが、予想だにしなかった数多くの問題が起こり得るだろう。それでもなお、我々の目標は明確だ。我々は優勝トロフィーをインゴルシュタットとネッカーズルムに持ち帰りたいのだ」と、Dr.ウルリッヒはコメントしている。

6月12日(土)午後3時のレーススタート時点をもって、この目標の達成は3チームのドライバーたちに委ねられます。2008年に優勝を決め、2009年には3位に入賞を果たしたリナルド カペロ(イタリア)、ルマン最多優勝記録保持者トム クリステンセン(デンマーク)、アラン マクニッシュ(スコットランド)のトリオは、ゼッケン7番のAudi R15 TDIを駆ります。ゼッケン8番のマシンは、3人の新しいドライバー、マルセル フェスラー(スイス)、アンドレ ロッテラー(ドイツ)、ブノワ トレルイエ(フランス)が担当します。ゼッケン9番のクルーは、2人のポルシェ“ワークス”ドライバーのティモ ベルンハルト(ドイツ)、ロメイン デュマ(フランス)と、DTMドライバーのマイク ロッケンフェラー(ドイツ)で構成される。

ウディ スポーツ チームヨーストの陣営は、6月2日(水)から現地入りしている。ドライバー達は6月6日(日)からとなる。シャシナンバーR15-202(7号車)、R15-203(8号車)、R15-204(9号車)の順番で行われる3台のAudi R15 TDIの公開車検は、月曜日の午後に行われました。水曜日の午後4時から8時にかけて行われる公開練習以外には、全長13.629kmにおよぶ本番と同じ“24時間サーキット”を走る機会が与えられないため、アウディR15 TDIにとってもその時が本番同様の周回を行う初めての機会となる。

水曜日の夜(10時から12時まで)と木曜日の夜(7時から9時までと10時から12時まで)合計3回行われる予選によって、スターティンググリッドが決定されます。しかしながら、ルマンでは予選順位はさほど重要ではない。土曜日午後3時のレーススタート前には、レース主催者のフランス自動車クラブ(ACO)が観客の皆さんに、自動車社会の未来を見る機会をプレゼントします。そのプログラムの一貫として、電動スポーツカー「Audi e-tron」がコースをデモ走行する。

「小型化され、エネルギー回生も行う電気自動車だというだけでなく、ルマン24時間での重要なイベントに参加出来るというのだから、アウディにとってこれ以上ない活躍の場となるだろう」とアウディモータースポーツの責任者・Dr.ウォルフガング ウルリッヒはコメントしている。

2011年以降、ルマンはより小型で燃費効率の良いエンジンを使用した新しいレギュレーションが適用されます。アウディ スポーツはすでに、新しい規格に合わせたマシンの開発を現行R15 TDIをベースに進めている。プロジェクトネームは“R18”。

アウディドライバー/アウディチーム首脳のコメント

Dr. ウォルフガング ウルリッヒ (アウディ モータースポーツ代表)

「ルマンにおいて、燃費は非常に重要な要素だ。また、低燃費であることは市販車においても非常に重要な要素のひとつだ。これが、我々がルマンのような形式のモータースポーツに参戦することが素晴らしいと言える理由なのだ。プロトタイプマシンでの耐久レースに向けて新技術を開発し、またその技術をテストすることが、市販車での新技術の早期採用を実現している。培われた技術は、なにもエンジン出力向上にだけ使われるのではなく、燃料消費の低減や環境性能の向上にも貢献している。その好例が、TFSI技術だ。我々がその技術を最初に使用したのは2001年のルマンだった。その後の長年に渡る軽量化とTDI技術に関するノウハウの蓄積の結果、2006年のルマンでは、それ以前では実現可能とは思われていなかったレベルでのパワーとトルクを発揮することが出来ている。優勝して成果を示すことが我々の目標だ。我々はここ数ヶ月の間、その目標に向かって邁進し、数多くの努力を重ねてきている」

ラルフ ユットナー (アウディ スポーツ チームヨースト テクニカルディレクター)

「すべては計画通りに行われ、レースの向けての準備は順調に行われている。それゆえにテストランはすべて去年に比べて混乱無く行われ、それは本番に対してより良い結果をもたらすと考えている。今年は、レース前の準備はすべて早め早めに完了している。最新のテストで、我々は多少の改善すべきポイントを発見したが、それらへの対処はすでに実行されている。来る水曜日と木曜日の予選では、我々はいつもの通りレース本番に焦点を当ててメニューを消化するつもりだ。公式練習走行も非常に有効な時間であることに間違いないが、すべてが予定通り行われているので、それを活用することはなさそうだ。我々が成し遂げたく、また成し遂げなければならない大きな目標に対して、出来る限りのことを行っている」

リナルド カペロ (Audi R15 TDI #7) 

「去年は、シャーシのセットアップと空力特性の調整が大きな問題だった。今年はその状況は改善され、特筆すべき進化を遂げている。エンジン開発者達は素晴らしい仕事を成し遂げた。数多くの制限があるにも関わらず、昨年とほぼ同等のパワーを発揮しているし、去年課せられたエンジン関連のレギュレーション変更に対して、もはや問題はなくなっている。おそらく、加速性能は去年を上回っているだろう。エンジニア達はこの冬の間に、本当に多くの開発を行っていた。そのひとつは、多くの人々を驚かせたボディデザインの変更だ。僕は、私と同様に新型デザインに感動した、本当に多くのレースファンからメールや手紙を貰っている」

トム クリステンセン (Audi R15 TDI ゼッケン#7) 

「アウディは、R15をR15プラスに進化させるという重要なステップを歩んできた。プラスの名が示すのは、マシンが燃費効率とパフォーマンスの両面で進化しているということだ。例えば、ヘッドライトの進化だ。ささいな事に感じるかもしれないが、これは24時間レースでは非常に重要なポイントだ。明らかに進化しているのが、エンジンの燃費効率だ。よりパワフルになっているにも関わらず、燃費も向上しているのだから。エアロダイナミクスも進化し、コーナリングでより大きなダウンフォースを発生させながらもストレートでの空気抵抗は最小限に抑えられている。サスペンションとミシュランタイヤの相互作用についても最適化されている。すべてにおいて詳細に検討され最適化されたおかげで、新型の“プラス”はルマンにおける我々の大きな目標を達成するために大きく貢献してくれるだろう」

アラン マクニッシュ (Audi R15 TDI #7) 

「ルマンファンにとっての、今年の目玉は? それはもちろん、我々の優勝だと信じている。今回は凄く接戦でエキサイティングなレースになると感じている。ル カステレとスパ フランコルシャンで、マシンが順調な進歩を遂げていることを確認することが出来た。その進歩は、他のサーキットではなくルマンでこそ効果を発揮すると信じている。なぜなら、あらゆる開発がルマンでの優勝を見据えて行われてきたからだ。今年のR15 TDIは去年より遙かに進歩していて、まるで新型車のようだ。もちろん、今年のプジョーも非常に手強いだろう。かれらも数多くの耐久テストを行っているし、充分な速さを保っている。昨年のルマン、そして今年のスパで優勝した彼らを決して見くびってはいない。しかし彼らもまた我々を、熾烈な闘いを繰り広げる相手として見るべきだと思う」

マルセル フェスラー (Audi R15 TDI #8)

 「ルマン24時間レースへの参戦は今回で5回目だが、LMP1クラスのワークスカーでの参戦は今回が初めての経験だ。アウディ スポーツとのテストでは、アウディR15TDIに慣れるための良い機会を与えてもらった。それは、初めてチームに参加するドライバーにとっては貴重なものだった、未だに多くのことを学んでいるところだ。僕は、トム クリステンセンや、リナルド カペロ、アラン マクニッシュ達がどのようにレースに臨んでいるかをよく観察しようと思っている。数多くのことをより簡単に達成させてくれる環境があるという点で、ワークスチームでのレース参戦はとても素晴らしいものと感じている。アウディチームでは、優勝するためのすべてが揃っている。あらゆるテスト走行を通じて、マシンは24時間レースをノントラブルで走りきれるだけの数多くの根拠を示してくれた。これほどのモノを事前に示してくれるチームは、私が過去に参戦したチームの中では始めてのことだ」

アンドレ ロッテラー (Audi R15 TDI #8)

 「昨年R10 TDIでルマンデビューを果たし、ある程度の経験を積んでいるとは言え、スポーツカーのドライビングに関して僕はまだ新人の部類で、まだまだ沢山のことを学んでいるところだ。しかし、これまでのテスト走行ではすべて順調にいっているし、日本のフォーミュラニッポンへの参戦で速いマシンの運転には慣れている。だから、Audi R15 TDIに簡単に慣れることが出来たのだろう。短時間でルマンのマシンの運転に慣れることは容易ではない。チームはマシンのストレートスピードを少しでも高くするためにトライしてきたので、コーナリングでは少し扱い辛い傾向が出ている。しかし、そこを何とかするのがドライバーの腕の見せ所だ」

ブノワ トレルイエ (Audi R15 TDI #8) 

「ルマンは僕にとって非常に重要なレースだ。ひとつは、僕がフランス人ドライバーだから。もうひとつは、僕はこのサーキットからわずか50kmしか離れていない場所で生まれたからだ。子供の頃の僕は、どうして人があんな速さで走れるのかが理解出来なかったし、ましてや将来自分自身が参加することになるなんて思ってもいなかった。だから、今僕はまるで子供の頃に戻ったように感じてワクワクしているし、家族も僕のことをとても誇りに思ってくれている。多くの人たちが僕を応援しに来てくれている。とても嬉しいことだし、彼らの気持ちに応えられると思っている。我々の目標が優勝して表彰台のトップに立つことだということはハッキリしているけれど、僕らはまだチームの中では新入りであり、まだまだ多くのことを学ばなければならない。マシンの仕上がりはとてもいい。特にストレートでの性能が素晴らしく、それはルマンでは重要なポイントだ。コーナリングに関しては、予選の時間を使ってベストなセットアップを見つけなければならない」

ティモ ベルンハルト (Audi R15 TDI #9) 

「レースが待ち遠しくてたまらない、と言いたい。今回の参戦は、私のキャリアに新たな功績を加える機会となるだろう。ルマン24時間レースに対しては、基本的には他のレースへと同様に専門知識を集中して望むのだが、しかしながらルマンには他のレースにはない要素、例えば走行距離が非常に長いという特殊性がある。私にとっては、今日のルマン24時間レースがスプリントレースに等しい状況になっていて、参加するマシンがその状況に充分に対応出来るだけの耐久性と信頼性を確保していることに驚かされている。これまでは、完走出来るかどうかが大きな問題だった。しかし今日では、速く走り続けられるかどうかが焦点となっている。今日では“人とマシン”への要求は非常に厳しくなっていて、またそれらは最高のレベルであることが必要となっている」

 ロメイン デュマ (Audi R15 TDI #9) 

「ルマン24時間レースは、誰もが知っているレースだ。フランス最大というだけでなく、世界でもっとも有名な耐久レースだ。フランス人ドライバーにとっては、そこに出場するということは非常に栄誉なことだ。また、アウディの“ワークス”ドライバーとして出場するからには、狙いは優勝しかない。アウディ スポーツの開発陣は恐ろしくハードな仕事をこなして、R15プラスを完成させた。ドライバーとして、いかに多くのエネルギーがパフォーマンス向上に注がれたかを考えれば、マシンに対する確かな信頼が生まれ、望むとおりの好結果が得られると確信している。また、今年は昨年以上に入念な準備を行えていて、耐久テストの結果も上々だ」

マイク ロッケンフェラー (Audi R15 TDI #9)

「コクピットに至るまで、今年のAudi R15 TDIはあらゆるところに変更が加えられている。スイッチの配置に至るまでが最適化され、操作しやすくなっただけでなくすべてにおいて良い方向に向かっている。運転してみて世界がガラっと変わるほどの違いはないけれど、あらゆる部分のきめ細やかな変更がR15 TDIのラップタイムを向上させる効果に繋がっている。それが何よりもR15プラスに求められた目標だ。例えば、ライトシステムだけでも数多くの開発を行っていて、より高い視認性が確保されたことで、夜間の運転がより速くなっている。また、その他の開発によってストレートの速度も少し向上している。これらによって、僕らは勝利を得ることが出来ると思う」

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筆者
樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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