ヒュンダイ ソナタ 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:小平寛
セダン見直しのタイミングで日本市場に投入
ヒュンダイ自動車は世界でも有数の自動車メーカーで、最近では品質を向上させることで欧米の自動車市場での評価を高めている。今回日本に導入したソナタは、ヒュンダイの主力モデルとして、アメリカ市場ではカムリやアコードと激しい販売合戦を繰り広げているクルマだ。
ヒュンダイ自動車として最後に本格参入した市場である日本では、販売台数が伸び悩んで苦戦を強いられている印象があるが、日本導入から最短で1万台を販売したのはヒュンダイ自動車である。時代の違いがあるとはいえ、あなどれない実力を持っている。
日本ではミニバンの時代が長く続いているが、ここにきてセダンに対する見直しの機運も生まれつつある。そんなタイミングに合わせて投入されたソナタは、日本市場でも一定の評価を受けそうだ。
ワイドボディに2.4Lエンジンを搭載したアッパーミドルセダンのソナタは、大きく向上した品質と、国産車に比べて1~2割安い価格設定を合わせると、ペ・ヨンジュンをCMキャラクターに起用するまでもなく、魅力を感じるユーザーはいるはずだからだ。
想像以上に広い車内空間
ソナタは全幅が1830mmという相当なワイドボディを持つ。これによって安定感のある縦横比が得られている。外観デザインはヨーロピアン感覚のものということで、上面を凹ませたボンネットフードなどに新しさがあるが、アメリカ市場で競合するアコードを意識した印象も強く、ヒュンダイ車であることのアイデンティティーが弱いように思える。
運転席に乗り込むと、まずは室内の広さに驚かされる。全幅の広さから横方向の余裕が特に大きく、助手席に乗るパッセンジャーが遠くに感じられるほどだ。広さを感じるのは後席に座っても同じこと。頭上にも足元にも余裕十分の空間が広がっている。
インパネ回りのデザインは上級グレードに標準で装備される自発光式のスーパービジョンメーターが品質感を感じさせるが、全体的にはオーソドックスな印象のほうが強い。カーナビの設定がないことは、日本で販売する上級セダンとしてはやや弱いかも知れない。シートはグレードによって本革シートが装備されている。
広い車幅に、乗り心地は硬め
走り出してまず感じるのは全幅の広さだ。欧米や韓国ではワイドボディ車に対する抵抗があまりないかも知れないが、1830mmの全幅はさすがに日本では大きすぎる印象。最小回転半径は何とか5.5m以下に抑えられているが、それでも狭い駐車場では切り返しを強いられることもあった。
ダイムラーや三菱と共同開発したという直列4気筒2.4LのDOHCエンジンは121kW/227N・mの実力。数値的には際立った性能というほどでもなければ不満を感じるものでもない。吹き上がりの軽快感などもまずまずで、このクラスのエンジンとして平均的な実力といえるだろう。
ATは電子制御式の4速。上級車クラスでは5速以上の多段化されたATが主流になっているので、4速というのはちょっと物足りない印象。変速フィールなどに特に不満を感じるシーンはなかったが、発進時の食いつきが良すぎて唐突感を感じるシーンもあった。
乗り心地はかなり硬めの印象。これもヨーロピアンテイストということなのだろうが、高速道路の継ぎ目や荒れた路面ではゴツゴツ感を感じられた。操縦安定性をしっかり確保した上で、もう少し乗り心地に振った快適な乗り味が欲しいところだ。
目を見張るヒュンダイ車の品質向上
ソナタに乗ると韓国車、ヒュンダイ車の品質が向上していることははっきりと確認できる。ただ、国産車のカムリやアコードなどに比べて上位にあるかと言われれば、まだ及ばない点が多いと言わざるを得ない。急速に追い上げているのは確かだが、日本車もまた頑張っているからだ。
見た目の品質感というか、見栄えの良さなどは高いレベルに達しつつあるが、走り質感などではまだまだ差が大きいように思う。
ただ、ソナタには価格競争力という大きな武器がある。2.4Lエンジンの搭載車だが、ベースグレードでは200万円を切る水準に設定されている。これは相当に安い。本革シートやESPなどを標準で装備した最上級グレードのGLS Lパッケージでも250万円台というのは、十分にリーズナブルなものといえる。
このため日本でのソナタのライバル車は、アコードやカムリではなく、むしろプレミオ/アリオンやブルーバードシルフィ、あるいはフルモデルチェンジを受けたばかりのシビックなどになるが、これらの車種が相手だと室内空間の広さや車格感などでソナタが優位に立つ。実用性の高いセダンを求めるユーザーには選択肢のひとつになるだろう。
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