8年ぶりに投入された2階建てバスは欧州製!JRバス関東「ヨーロピアンスタイル2階建てバス」お披露目

JRバス関東が、純欧州製の新型2階建てバスをお披露目

2018年7月2日(月)、東京タワー下の駐車場にてJRバス関東が7月14日から運行を開始する新型2階建てバスの報道向け内覧会が開催されました。

今回お披露目された新しい2階建てバス「ヨーロピアンスタイル2階建てバス」は、エンジン+シャーシの製造をスウェーデンの「スカニア(Scania)」が、車体をベルギーの「バンホール(Van hool)」が手がけていることが注目されます。

スカニアはその歴史を遡ると、はじまりの会社の創業が1891年、バスの製造を1911年から開始しているという歴史ある会社で、これまでにのべ17万台のバスを世界中に送り出している世界有数のトラック・バス・産業用エンジンメーカーです。一方のバンホールは年産1200台の規模を誇るバスの車体製造に特化したメーカーで、バンホールの車体を載せたバスは同じく世界各国で活躍しています。

バスはエンジン+シャーシメーカーと車体メーカーが別ということは珍しくなく、日本でもかつてはシャーシがUDトラックス(日産ディーゼル)で、車体がバスボディのみを製造する富士重工業や西日本車体工業などという多種多様な組み合わせが見られました。なおスカニア+バンホールは欧州では定番のタッグです。

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卓越した乗り心地と座り心地の良いシート

「ヨーロピアンスタイル2階建てバス」のエンジンは、12742ccの排気量から最高出力410psと最大トルク2150Nmを発生するスカニア製直列6気筒ディーゼルターボエンジン「DC13」型で、12段変速のクラッチレス機械式オートマチック(AMT)「オプティクルーズ」が組み合わされて日本と欧州の厳しい排ガス規制をクリアした環境性能と燃費の良さ、そしてハイパワー高トルクを両立しています。シャーシはスカニア「K410 EB6×2LI」で、ボディはバンホールの「アストロメガTDX24」です。

2階建てバスのメリットは地上高約3mという見晴らしの良さ、補助椅子なしで乗車定員が通常の高速路線バス車両に対し、約1.5倍(座席数58、車椅子1の計59名)になるなど、いくつもあります。また、1階の床面がフラットでバリアフリー対応に優れていることも特筆されます。アストロメガTDX24も車体中央にドアを持ち、車載のスロープを付けることで車いすの乗降がとてもしやすくなっています。

シックな色合いとしっかりとした作り、体にフィットする座り心地が欧州製バスを感じさせるシートは855mmのピッチで並び、窮屈さを感じさせません。すでに国内バス事業者が導入している同型のバスの2階席に乗ったことがあるのですが、エアサスがもたらす乗り心地は重厚で高速道路では卓越したフラットライド。JRバス関東の「ヨーロピアンスタイル2階建てバス」でも、それを体感できるのではないかと思います。1階にはトイレ、各座席の足元にはUSBポートまで備わり、距離が長い路線での運行にも対応しています。衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報装置、横滑り防止装置や、車間距離保持機能付きオートクルーズも装備され、安全運行への備えも万全です。

国産の2階建てバスはもう製造されていない!

ところで、日本では海外製のトラックやバスがまだまだ少ない中で、なぜJRバス関東は海外製2階建てバスを導入することになったのでしょうか。高速道路ではまだ2階建てバス(そのほとんどが三菱ふそうトラック・バスの「エアロキング」)が走っていますものね。でも、実は国産メーカーの2階建てバスは2009年~2010年頃からもう製造がされていないのです。しかし、一度に多くの乗客を運べる2階建てバスの需要はなくなったわけではありません。そこで、各社は経年を迎えている2階建てバスの代替をハイデッカーバスにするなど対応に追われていますが、JRバス関東ではすでに国内導入が進んでおり実績のあるアストロメガTDX24を新しい2階建てバスとして8年ぶり、海外製バスは2003年のネオプラン・メトロライナー以来の導入を実施することになったのです。

スカニア×バンホールの欧州製2階建てバスは「はとバス」からスタート

日本で最初にアストロメガTDX24を走らせたのは、2016年の「はとバス」でした。同社も同様に二階建てバスの後継車が無いことに対応する必要に迫られていました。そこで、はとバスでは海外に目を向けることを決定。しかし海外のバスは日本の法規では走れないサイズだったため、欧州のバスメーカーに専用のサイズ(全長、全幅、全高すべて!)の製造を求めました。その中で名乗りを上げたのがバンホールだったのです。そして組み合わされるエンジン+シャーシは、海外で実績があり国内でも日本法人があるスカニアが選ばれたのでした。JRバス関東のアストロメガTDX24もはとバスの協力で製造されています。

導入までには並々ならぬ苦労が

はとバスはその後6台までアストロメガTDX24を増やし、現在、観光バスの主力として活躍しています。JRバス関東の「ヨーロピアンスタイル2階建てバス」内覧会は東京タワーの大型バス駐車場で行われたため、偶然2台もはとバスの2階建てバスがやってきて、駐車場はスカニア×バンホールが3台並ぶ展開になりました。

アストロメガTDX24はその後、東京ヤサカ観光バス、ジャムジャムエクスプレス、京成バスが相次いで導入を決定。今や日本の2階建てバスの標準になりつつあります。

とはいえ各社ですべて同じ仕様ということは難しく、JRバス関東向けでもシートの変更やシートピッチ拡大、網棚の設置など独自の仕様となっている箇所があります。

スカニアジャパン 執行役員 営業本部長の中井誠氏にお聞きしたところ「海外メーカーとのやりとりは言葉の壁や改良に対する考え方の違いもあり、スムーズにいかないことや苦労することもありますが、スカニアジャパンでは海外製品でも日本で使うものという着眼点を持って対応しています」と語りました。

海外製バスをそのまま持ってくるのではなく、日本で使用するための細かな設計変更、日本の各事業者に向けたカスタマイズがしっかり行われていることがスカニア×バンホール アストロメガTDX24の躍進につながっていると感じました。大規模バス事業者であるJRバス関東がスカニア×バンホール アストロメガTDX24を採用したことで、今後さらに日本各地での展開が見られそうです。

まずはバスタ新宿〜TDR間の路線に投入。今後のさらなる導入に期待大!

今回2台導入された「ヨーロピアンスタイル2階建てバス」は、まず7月14日、「東京ディズニーリゾート線」のバスタ新宿8:10発、および東京ディズニーシー10:00発から運行を開始します。内覧会に出席したジェイアールバス関東株式会社 常務取締役 岡村淳弘氏によると今年度も引き続き数台が投入され、来年以降も新たな仕様の登場も控えているとのことです。今後も長距離夜行路線などで新しい2階建てバスを見ることができるようになるかもしれませんね。

[TEXT/PHOTO:遠藤イヅル]

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

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