ボルボ XC70 試乗レポート

ボルボ XC70 試乗レポート
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プラットフォームの変更が進化の証

試乗
フロントスタイリングリアスタイリング

近年、ドイツ列強をはじめとするプレミアムブランド各社は、以前にも増してラインアップを拡充するなどして勢力を拡大しているが、ボルボもその良い流れに上手く乗ったブランドのひとつといえる。

フォードグループの一員となって久しいボルボだが、その中でもレッキとしたプレミアムブランドとして位置付けられたボルボは、自身の持つブランド力を生かしたラインアップの拡充を図っているように見える。先代XC70(V70XC)のようなモデルや、XC90のような本格的SUVもそうだし、ここ 1年内にも、上級サルーンの新型S80、クーペカブリオレとなった新型C70、プレミアムコンパクトカーを手がけたC30のような意欲作までをも矢継ぎ早に世に送り出してきたくらいである。

とはいうものの、ワゴンに特化したイメージが強いのがボルボ。やはり本命はV70系であろう。そのV70をベースに、SUVとの融合を図ったのがXC70である。ごく普通の高級ワゴンに飽き足らない人、こういうテイストが好きな人、しかし本格的SUVでは荷が重い人……、そうしたプチ富裕層のユーザーに向けて、XC70は大いに魅力的に目に映るはずだ。

そして、7年ぶりにフルモデルチェンジを迎えた。最大のポイントというと、プラットフォームを従来のS60系から上級のS80系としたことだろう。これにより、あらゆる要素が大きく進化を遂げた。先代XC70と比べるという行為が意味をなさないほど、すべてが向上したのである。

よりクロスカントリーの魅力を放つ存在感あるデザインへ

サイドビュー
インパネフロントシート

実寸もほぼS80と同等となったから当然のことではあるのだが、実車を前にすると「70」というわりにはずいぶん大柄なクルマになったことに少々の戸惑いを覚える。全体のシルエットは、より流麗かつシャープな印象となったボディパネルや、水平基調からいくらか変化を持たせたラインの構成などにより、従来モデルに比べて確実に新しさを感じさせるクルマとなった。

ボディサイドは、特徴的なワイドショルダーの「いかり肩」形状が少々なりを潜めた。こちらのほうがより全体のフォルムに溶け込んでいるように思える。

先代がいわばV70の中の1グレード的な成り立ちだったのに対し、新型ではV70とXC70のお互いが、それぞれの持ち味を深化させたことで、結果的により明確に差別化されたように思える。

同じくS80譲りのインテリアも、視覚的にも触感においてもわかりやすい高級感があり、居心地もよい。ボルボの新しい手法であるフリーフローティングセンタースタックは、このXC70にももちろん採用された。ボルボらしくたっぷりとしたシートは、標準ではテキスタイルのファブリックと人工皮革の組み合わせとなり、パッケージオプションでレザー仕様を選ぶことができる。

全体の雰囲気は落ち着いた印象で、近年やたらと個性の表現に走りすぎた感のあるドイツ列強とは一線を画す、水平を基調とした端正な構成となっている。スペースユーティリティの向上も期待どおり。従来に比べると各部のクリアランスが20mm以上も拡大され、後席もレッグスペースが約50mmも拡大するなど、非常に広々としている。ラゲッジスペース容量も大幅に拡大された。地上高が高められているため、フロアもそのまま高くなっているが、使い勝手はそれほど悪くない。パワーテールゲートも標準装備される。

それよりも、驚くのはこの空間に込められたアイデアの数々だ。床面に設けたレールとフックによる「カーゴフィックスレール」、側面に多数設けられた「ロード・フック」、荷物の移動を防ぎ、自在にアレンジできる「ロード・ディバイダー」のほか、グロサリーバッグ・ホルダー、ネットポケット、ラゲッジカバーなど、非常に充実している。このクルマを所有し、使うことへの満足感を存分に感じさせるであろう空間が構築されているのだ。

3.2Lの直6エンジン+6速ATの意外な結果

エンジン
メータータイヤ&アルミホイール

パワーユニットは、新たに3.2Lの直6エンジンが搭載された。今や貴重な直6ユニット。これに6速ATが与えられる。この組み合わせがなかなかのものである。全域にわたり十分なトルクを発揮するエンジンは、直6らしい調律を奏でつつ、出力特性はいたってフラット。そして、とても3.2Lエンジンと1.9トンのボディの組み合わせとは感じさせない味を呈する。

ATは出足もよく、変速ショックをほとんど感じさせない。ただし、マニュアルシフト時は、少々レスポンス遅れを感じてしまう面はある。

走りのテイストは、重厚感の中に軽快感のある絶妙な味つけ。静粛性が高く、乗り心地もいたって快適という移動空間となる。全体として、乗り手に高級車らしさを感じさせるものである。

これには、オーリンズとモンローというビッグネームとの共同作業で開発された電子制御サスペンションによる恩恵が大きい。高速道路を巡航するようなシーンではフラット感があり、ハードめのコーナリングを試したり、ツイスティなワインディングを走ったりしても、そのフラットライドな印象は変わらない。

先代V70系でとかく不満の聞かれたハンドルの切れ角についても、改善されている。フロントに直6エンジンを横置きするという特異なパッケージであり、ハンドルの切れ角の確保が難しいところであるが、全幅の拡大によりいくらか改善された。

最小回転半径は5.7mと従来と同じものの、感覚としては、クルマ自体の実寸の拡大を帳消しとするほどで、実質的な取り回し性は向上している。

さらに、各種デバイスの設定にも注目したい。SUVらしく、ボルボ初のヒルディセンドコントロールを採用。また、斜め後方の死角にクルマやバイクがいることをドアミラー付け根に設置したランプで知らせるBLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)や、各種警告や車両状態などを運転状況に応じて伝達するIDIS(インテリジェント・ドライバー・インフォメーション・システム)、クルマの動きを監視して、注意力散漫と判断されたドライバーに注意を促す「ドライバー・アラート・コントロール」など、ボルボ独自の安全対策装備にも注目したい。

先代オーナーも悔やむトータルバランスに優れた新型XC70

試乗

先代オーナーが新型に触れたとしたら、相当に悔しがるであろうほどに進化を遂げたといえる。価格についても、上昇幅をほどほどに抑え、それでいて車格は大きくグレードアップしたのだから。

結果的に新型XC70は、ドイツのプレミアムブランド勢と並べても、価格×バリューの非常に高い高級ステーションワゴンに成長したと思える。堂々たるその風貌はまさに新世代の高級クロカン・ステーションワゴンに相応しい存在感を放っていた。

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岡本 幸一郎
筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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