トヨタ「86」の兄弟車、サイオン「FR-S」が消滅した理由(2/2)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:トヨタ自動車/桃田健史
トヨタ「86」の兄弟車、サイオン「FR-S」が消滅した理由
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踏み切れないホンダを尻目に、大胆な行動に出たトヨタ

「ワイルドスピード」大ヒットをきっかけに、三菱は「ランエボ」、スバルは「WRX」の北米導入を決定。ラリーの人気が低いアメリカで、これら2モデルの販売計画はなかったが、ジャパニーズ・ストリート用チューニングカーのビジネス拡大に便乗したかたちだ。

一方、ホンダはこうしたトレンドに対して、ある程度の「距離感」を持って接していた。なぜなら、ブームの本質であるホンダ車を使った各種イベントが、チャイニーズ・マフィアなどとの繋がりがあったからだ。

また、各種改造パーツが、アメリカ連邦法、またはカリフォルニア州法において、合法と非合法の中間の「グレーゾーン」であり、ホンダ本体として「さらに一歩踏み込むこと」を躊躇っていた。

そんな時期が2年ほど続き、スポーツコンパクトブームがひと息つこうか、という頃にトヨタがサイオンブランドを発表したのだ。

トヨタの狙いは、スポコンブームでクルマの新しい価値を持った若い世代に対して、彼らに手が届く新車を提供すること。トヨタブランドへの「エントリー」を設けることだ。結局、ホンダが新しい市場の種を撒き、成長したところでトヨタが刈り取ったということになる。

サイオン FR-S

「若者のクルマ離れ」によってサイオンの使命は終わった

トヨタとしては、サイオンを若者向けブランディングの実験場として位置付けただけではない。「新車を購入したことがない各世代の人たち」や、「セカンドカー、サードカーとして、コスパの高い新車が欲しい人たち」に向けた販売促進を進めた。

そして、2012年にサイオンのブランドイメージリーダーとして「FR-S」を発表。90年代後半のスポコンブームを彷彿させる、ジャパニーズ・チューニング、ジャパニーズ・カーデコレーションの世界観を訴求した。

だが、ライドシェアなど新しい交通システムが急激に普及し始めたアメリカで、「FR-S」のプロモーションには「時代遅れ感」があった。一部の熱狂的ファンによる「閉じた社会」に終始し、初期のワイルドスピードのような社会全体を巻き込むトレンドは起こらなかった。

ブランド全体としての販売数の低迷、そしてアメリカでも顕著になる「若者のクルマ離れ」によって、サイオンの使命は終わった。

100年に一度と言われる自動車産業界の大変革期に突入したいま、サイオン廃止の意味合いは極めて大きいと思う。

[Text:桃田健史]

■13年で終焉を迎えた「サイオンブランド」(画像38枚)

TOYOTA 86
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筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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