スズキ セルボ 試乗レポート

  • 筆者: 竹岡 圭
  • カメラマン:原田淳
スズキ セルボ 試乗レポート
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時代のニーズや流行にフレキシブルに対応するセルボ

往年のスタイリッシュ&スポーティモデル、「フロンテクーペ」の次世代のクルマとして誕生したのがセルボ。それが、今から約30年前の1977年。なんと、1979年に女性の足としてアルトが誕生するよりも、2年も前のことだというからちょっとビックリだ。

そのアルトが誕生した以降は、常にアルトよりも上級な軽自動車というコンセプトがセルボには与えられることになった。つまり、貫かなければならないポイントは、ベーシック軽よりもどこかがプレミアムということだけ。あとは自由なのだ。よって、時代のニーズや流行にフレキシブルに対応しながら、フレキシブルに変わっていけたというのも、セルボの大きな魅力のひとつなのである。

そんなフリースタイルのセルボだが、実は久々の登場だったりする。1982年に2代目、1988年に3代目、1990年に4代目と続いた後、1996年~1998年にセルボCが投入されて以来、8年間という長いような短いような微妙な期間、名前が途絶えていたのだ。

MRワゴンと同時に開発したことによって割り切れたデザイン

さて、5代目となるセルボだが、「久々にセルボのフルモデルチェンジ車を作ろうか~」という話があったわけではない。「今までとは違う軽自動車を作ろう!」とデザインするうちに「なんかさ、これってセルボじゃない?」という声が開発陣の誰からともなく聞こえてきたんだとか。

そんな声が上がるのも実際頷ける話で、セルボのデザインは実にカッコイイ。もちろんいちばんのセールスポイントもデザインだ。そのデザイン、軽自動車を評することばとしては今まであり得なかった「欧州車」というキーワードがピッタリハマる。カタマリ感のあるカタチはどう見てもヨーロッパ車を彷彿とさせるのだ。同時期に現行MRワゴンの開発が行われていたおかげで迷わず割り切れたという斬新なデザインの中には、初代のスポーティさと、4代目セルボモードのオシャレさのスパイスがモチーフとして織り込まれているのも面白い。

そして、インテリアもエクステリアに負けないくらい個性的だ。S字型インパネという特徴的なインパネのラインは、室内にいても風を感じるような躍動感をもたらしてくれる。彫刻刀で彫ったような新しいシボと、艶を抑えたブラックメッキをピリリと効かせることで、品のよさは保ちながら、色っぽい空間に仕上げられている。 そしてこのS字型、運転席周りはラウンド状に包み込み安心感を、助手席前には広々感を持たせられるということで機能的にも優れたラインなのである。デザインを優先しすぎるあまり、機能をスポイルしたくなかったというセルボの心意気がいたるところで感じられるのだ。

ゲート式AT採用のターボモデルは街中最速スペシャリティ

いくら欧州車調と褒め称えたところで、所詮660ccの軽だからねぇ…。と思う人が多いと思うけれど、セルボは走り味だって、軽枠という限られた中で、十分にヨーロピアンテイストを醸し出している。

ロングストロークな足回りを採用することで、しなやかによく足が動く足回りを目指したのだ。石畳のような路面でも上手く凸凹を吸収し、大きな突起でも突き上げ感はほとんどなく、オマケに回頭性がよく頭がスッと入っていってくれるので、キビキビ&チョコマカと走り回る性能が要求される街中でも、すばしこさは天下一品なのだ。

残念ながらハードなワインディングではリアの粘りがもう少し欲しいのと、ターボモデルは少々タイヤの当たりが硬いので、足回りだけで判断するならば、よりセルボらしいのはNAモデルかもしれない。 しかし、エンジンの回転数の低さからくる静粛性などから感じる上質感では、ターボモデルのほうが上だ。今回は熟成のK6Aエンジンの中でも、60psを発揮するロープレッシャーのMターボが採用されたのが、セルボの性格をよく表している。つまり、街中最速スペシャリティなのだ。ワゴンR・RRのような、ガチガチのスポーティさを目指したワケではないのである。

ところがMターボには、思わず元気よく振り回して走りたくなってしまうような、MT風シフトも楽しめるゲート式ATが装備されている。これがまたショックがほとんどなく、レスポンスもかなりよく、歴代のスズキ車ナンバー1といっても過言ではないくらいイイのだ。スイフトの考え方を注入して作られたセミバケットシートのおかげで体の収まりもよく…と、そのうちハイプレッシャーターボモデルを期待する声が間違いなく高まりそうだ。

スポーティカーとは違った大人雰囲気

最近は軽自動車と言えども、インテリアカラーを豊富にラインアップする傾向があるが、セルボの場合はズバリ、ブラック内装1本である。デザインテーマが「夜」ということで、時間帯によって表情を変える夜が演出されているのだ。

夜が表情を変える要因は「光」。外装色にもラメが入ったものが多いが、インテリアもそう。ブラック×ブルーブラックのセミバケットシートも、ラメラメと微妙に光を放っているし、オーディオやメーターの光ももアンバー発光のチューニングが行われている。ブラック内装とは言っても、いわゆるスポーティカーのブラック内装とは違う、新しい顔を持った大人の黒と言っていいだろう。

エクステリア、インテリア、カラーリングと、どこまでもデザインコンシャスなセルボだが、前述の通りデザイン優先で使いにくいクルマにはしたくなかったとのことで、適度な広さと適度な装備はまったくスポイルされていないのがよくわかる。全高は立体駐車場に入る1535mmに抑えながら、大人4人が乗っても狭くは感じない。基本的にセルボは前席シート優先で作られてはいるが、かといって後席はまったくムシはされていないから、チョイスしやすいのだ。

また、高級装備はないものの、運転席シートリフター&チルトステアリングといった安全面で必要な装備や、キーレススタートシステム、iPodや携帯電話ブルートゥースへの対応などの快適な今やドライブに欠かせない装備は用意したというのがセルボらしい。ETC車載器の取り付けを考慮したアンダートレイ、夜間の視認性を確保するダウンライトを採用したコンソールポケット、プライバシーを考えてフタ付き収納を多くしたというのも気が利いている。ラゲッジスペースも、乗員優先の軽としては狭いほうではないので、ファーストカーとしても十分使える1台だ。

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竹岡 圭
筆者竹岡 圭

OLを経て、自動車専門誌を皮切りに、モータージャーナリスト活動を開始。国内外のレース、ラリーなど自らモータースポーツ活動に関わりながら、海外のモーターショーを精力的に回るなど、なにごとにも積極的に取り組んできた結果、近年は一般誌、女性誌、Web媒体、新聞、TV、ラジオなど、その活動はとても多彩なジャンルに広がっている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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