スバル 新型アイサイト・ツーリングアシスト 公道試乗|”自動運転”の入り口をひと足お先に体験(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫・SUBARU
■先行車に追従するACC(アダプティブクルーズコントロール)の機能自体も熟成が進んだ
これまでもアイサイトに備わっていた先行車との車間距離を調節しながら定速走行するアダプティブクルーズコントロールだが、こちらも機能が熟成されていた。
交通の流れが過密な状態では、先行車も加減速を頻繁に行うが、レヴォーグは違和感なく追従走行する。試しに安全を確認した上で、アイサイト・ツーリングアシストを作動させながら車両の流れが空いている右車線へ移ってみると、先行車がいなくなった直後に設定速度までスムーズに加速した。
ただしクルーズコントロールを作動させた状態で右車線へ移るのは、好ましい運転の仕方ではない。
右車線(追い越し車線)は左側よりも流れが速い。走行車線を走っている段階で先行車との車間距離を十分に取り、適度に自らペダルを踏み増し加速しながら車線を変えるのが安全だ。高速道路の本線への進入で、加速車線で速度を高め流れに乗りつつ合流するのと同じ理由に基づく。こういった臨機応変な運転の対応は、クルーズコントロールにはまだできない(なおACC作動中にアクセルを踏み増してまたアクセルを戻しても、自動的にACCの設定は復帰する)。
つまりアイサイトツーリングアシストは運転支援技術にほかならず、スバルもそのように表現している。日産の「自動運転技術」という表現は誤解を生みやすい。運転支援技術が自動運転の礎になることは確かだが、まだその領域には達していない。
■クルーズコントロールとも相性が良いレヴォーグのパワートレイン
なおクルーズコントロールの加減速には、車両の動力性能やトランスミッションも影響を与える。車両によるスロットル制御だから、加速は滑らかに行う必要があり、車両重量に対してエンジンパワーの低い車種はクルーズコントロール作動時の加速が緩慢になりやすい。
またATのキックダウン(アクセルペダルを強く踏み込んで低いギヤに自動変速させ、加速力を増すこと)も、制御としてはなるべく避けたい。ドライバーが自分でアクセルペダルを踏み込んでキックダウンさせるなら良いが、クルーズコントロール作動中にエンジン回転が一気に高まると、ドライバーが驚くことも考えられるからだ。
この点でもレヴォーグは相性が良い。水平対向4気筒の1.6リッターターボは、高回転域の吹き上がりは機敏でないが、実用回転域の駆動力は強いためだ。トランスミッションはCVT(自動無段変速式オートマチックトランスミッション)だから、エンジン回転と速度を滑らかに高められる。当然ながらキックダウンは生じない。このようにクルーズコントロールで円滑な走りを楽しむには、車両本体の走行性能も問われる。
■アイサイトセイフティプラスの液晶スマートリアビューミラーも試す
試乗車には予防安全技術であるアイサイトセイフティプラスがオプション装着され、これに含まれるスマートリアビューミラーも試した。これは液晶とミラーを使い分けられるルームミラーで、液晶のディスプレイモードでは、リアウィンドウの内側に装着されたカメラの映像を表示する。後部に荷物をたくさん積んでいたり、ミラーに逆光が当たっている時でも良好な視界を確保する。
液晶も進化して視認性を向上させていたが、従来のミラーと違って、チェックする時は目の焦点を変えねばならない。従来のミラーであれば前方を見ながら視野の一部にルームミラーを収めて、半ば無意識的に後方の様子を把握することが可能だが、液晶にはそれができない。
特に自動車を運転している時は目の焦点が遠方に合っているから、従来のミラーとは親和性が高く、逆に目の焦点移動が大きくなることで液晶の欠点も目立ってしまう。先進装備がすべての場面で優れた効果を発揮できるとは限らず、それはアイサイト・ツーリングアシストの運転支援機能にも当てはまることだろう。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:小林岳夫・SUBARU]
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