空飛ぶクルマの実用化? 中国政府が進める水面下の世界戦略
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史
上海モーターショー2017で見せた中国の戦略
VR(バーチャル・リアリティ)で、人が空を自由自在に飛ぶ。あまりにもタイムリーな展示だ。
オート上海(通称:上海モーターショー)の日産ブースで、来場者が長蛇の列をつくった人気アトラクション。産業用ロボットのような大型機器の先に、人が両手を広げて空を飛ぶような姿勢をとって固定され、ゴーグル型のVR(バーチャル・リアリティ)対応機器を装着し、さらに床からは送風される。
モーターショーとしては、かなり珍しいタイプのアトラクションだが、単なる客寄せパンダだとは思えない。
日産は、日系企業のなかで最も中国政府とのパイプが太いと言われている。中国で外資系企業が自動車の製造・販売を行う際、中国地場メーカーと株式の最大50%による合弁事業を中国政府によって義務付けられている。そうした中、日系メーカーは少なくとも中国地場2社との合弁を行うことで、“政治的な側面での、もしもの場合”に対するリスクを分散している。
トヨタは第一汽車と広州汽車、またホンダは東風汽車と広州汽車との合弁企業が中国での事業を進めている。
一方で、日産の場合、東風汽車の1社のみとの合弁を続けているが、これについて“中国政府とのパイプの強さ”を証言する中国の自動車業界関係者は多い。
このような日産の中国での立ち位置において、今回登場した“フライングスーツ”について、単なるアトラクションだとは言い切れないと思う。
また、同じ頃、イギリスでは発明家がフライングスーツのデモを行い世界的な注目を浴びているが、こうした欧州で動きと中国の動き、裏でつながっているのではないだろうか?
空飛ぶクルマ、VTOLも同じこと?
フランイングスーツよりも、実用化に向けた動きが加速しているのが、“空飛ぶクルマ”だ。
“空飛ぶクルマ”というと、アメリカでは2012年にベンチャー企業のTerrafugiaがニューヨークモーターショーで実機を公開し、2000万円強の価格で予約販売を開始しているが、いまだに本格的な量産体制に入ったという情報はない。
Terrafugiaの場合、小型飛行機に折り畳み式の水平翼を装着した形式だが、最近になり早期の実用化に向けて、欧米や中近東のベンチャー企業が相次いで事業計画を発表しているのは、VTOLだ。
VTOLとは、「ヴァーティカル・テイク・オフ・ランディング(垂直離着陸機)」の略称。小型のモーターを数十個装着して、浮力を得て離陸し、ある程度の高さになると水平翼によって水平飛行に入るものだ。日本でも米軍基地での配備について話題になることが多い、軍用機のオスプレイもVTOLである。
このVTOLについて、ライドシェアリング大手のUber(ウーバー)は“空飛ぶタクシー”としての実用化を目指すとしている。
筆者は以前、カリフォルニア州サクラメントにある、Mollerインターナショナル社で同社の創業者であるモラー氏からVTOLに関する歴史と業界の動向を詳しく聞いたことがある。Moller社では80年代から様々なVTOLを試作して事業化を目指してきたが、本格的な量産化は実現してこなかった。
だが、2013年に行ったこの取材時、モラー氏が「中国での軍需利用が決まり、中国人の仲介者から多額の資金援助を得た」と証言した。その後、同社が中国側とどのような連携をしているかは不明だが、中国政府がVTOLの軍需利用に真剣に取り組んでいることは確かなようだ。
このように、フライングスーツやVTOLなどで、世界各国のベンチャー企業が世界標準化であるデファクトスタンダードを狙う動きを加速している裏には、明らかに中国の存在がある。
また、自動運転についても、中国のIT御三家であるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が三次元詳細地図の作成や、走行に関するアルゴリズム研究などを進めているが、ここでも中国政府との連携が必要不可欠であるようだ。
こうした各種の新しい移動体の近未来について、オート上海では様々な“ヒント”が隠されていたのではないだろうか。
[Text:桃田健史]
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