新型 ボルボ V90 クロスカントリー T5 AWDは、北欧の豊かな贅沢を濃密に味わえる1台
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:小林岳夫
4世代目となるクロスオーバーモデルが日本デビュー
2016年デビューの新型XC90を皮切りに、S90・V90と続々登場するボルボの最新”90”シリーズがいずれも人気だ。拡充する90シリーズ、その大トリを飾るのが「V90 クロスカントリー」。ワゴンボディのV90をベースに、SUV風のクロスオーバースタイルとしたモデルで、3世代続いたXC70/V70 クロスカントリーから数えるとこれで4代目となる。日本導入開始と同時にさっそく試乗したのは、モータージャーナリストの山田弘樹さん。気になる兄弟モデルとの違いとは。V90 クロスカントリー独自の乗り味について詳しくレポートする。
V90とは完全に別物! 贅沢過ぎる新型V90 クロスカントリーの足回り設計
ボルボのフラグシップモデルである90系。そのエステート版を特別仕立てにした「V90クロスカントリー」に試乗した。これは文字通りV90をベースとしたクロスカントリーモデルで、セダン/エステート系の派生としては、走りとラグジュアリー性能を両立させた「R-DESIGN」に次ぐモデル。そしてこれをもって、90シリーズはひとまず完結を見るという。
クロスカントリーにおける最大の特徴は、V90比で55mm(最低地上高210mm)高くなったその車高。これによってアプローチアングルは18.9°、デパーチャーアングルは20.7°、さらにホイールベースを2940mmと長く取りながらもランプアングルを17.7°確保することができた。要するに、悪路でもそのリップやリアバンパー、お腹が擦りにくいということになる。
そしてボルボでいつも感心するのは、クロスカントリーを出した際にその車高を単にかさ上げするのではなく、アーム角を基準のジオメトリーからずれないように設計してくることだ。
今回もここにはSUVであるXC90のコンポーネントを前後で活用し、ダブルウィッシュボーンのアームに過大な下反角が付かないようにしてきた(つまり、ジャッキアップ現象が起こらない)。ちなみにホイールスピンドルは専用に起こしたようだ。
またサスペンションは、リアにセルフレベライザーの役目を持つエアサスモデルと、ボルボ・コンベンショナルなリーフスプリングの2種類が用意したが、今回はよりベーシックな乗車感を味わうために後者を選んだ。
走りの質感はフルモデルチェンジで確実に高まった
V90クロスカントリーに搭載されるエンジンはDRIVE-E「T5」と「T6」の2種類。今回試乗車に用意されたのは1968ccのガソリンユニットをインタークーラー付き直噴ターボで武装したT5ユニットで、そのパワー&トルクは254ps/350Nm。T6はこのターボに加え、低回転領域をスーパーチャージャーが補填することで320ps/400Nmの出力を発揮する。
基準車より少し高めの視界と、それによって得られるちょっとだけ腰高な走行感は、旧XC70時代から続くクロスカントリーならではの独特なライド感だ。
しかしV90となって変わったのは、そこにシッカリとしたハンドルの手応えが加わったことだろう。フロントがマクファーソンストラットからダブルウィッシュボーンに変わったせいなのか、低速域からステアリングの反応が素早く、かつ横力をクルマがしっかりと受け止めるから、スッとタイヤを転がすようにして上手にカーブを曲がって行く。またロールは明らかにこれまでのクロスカントリーより少なくなっている。
突き上げや路面のうねりに対しても張りのあるストロークフルなサスペンションと、19インチにして50扁平というボリューミーなタイヤがショックを一発で吸収。これなら荒れ地でもダンパーは底付きしなさそうだ! と思えるくらい足周りは剛性が高く、しかもボディがガッシリしている。そしてそのたくましい乗り味が、常用域ではスッキリした乗り心地を与える相乗効果をもたらしていた。
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腰高ながらコーナリング時のロールは従来より明らかに少なめ
ただ中高速域でカーブにさしかかると、V90 クロスカントリーの車高の高さがハンドリングに影響してくる。正確にいうと車高が高いことに問題があるのではない。車高を上げたことによってサスペンションのロール剛性が高まり、なおかつこれをダンパーが固持してしまうことで、ノーズが向きを変えにくいのである。簡単にいうと、ダンパーが突っ張ってタイヤに荷重をじっくりとかけられないから、アンダーステアになってしまうのだ。そして切り込んだ操舵に対して曲がらないから車速を落として行くと、クイッと内側にノーズが入る。
まだ試乗車は1300kmしか走っていなかったため、各部が渋いということも考えられるが、乗り心地そのものは悪くないし、ダンパーはスティックすることなくきちんと動いている。単純にバンプ側の減衰力が高過ぎ、これを弱めてクルマを積極的にロールさせた方がよいとボクは思うのだが、ボルボはこれまでのクロスカントリーがロールし過ぎていたことを強く意識し過ぎてしまったのかもしれない。
ちなみにV90/S90のプレミアム仕様である「R-DESIGN」は、逆にフロントのダンピングが弱すぎ、路面がうねるような高速コーナーではハンドリングが定まらない傾向が見られた。
それを総合して考えると、前後重量配分が限りなく50:50に近いV90/S90で、ばっちりセットが決まっているのは基準車。これをベースとしてクロカン方向やラグジュアリー方向に味付けを変えて行く所まではまだ、ボルボも4気筒を搭載するフラグシップモデルのボディバランスを掌握しきっていないのではないかと感じた。
また今回は試せなかったが、電子制御ショックアブソーバー「FourーCアクティブパフォーマンスシャシー」を搭載したエアサス仕様の方が、柔軟に曲がってくれるのかもしれない。
気になる”DRIVE-E”直4 2リッターターボの走りは
エンジンは754万円という価格を考えると直列4気筒のゴロゴロ感が気になるが、クロスカントリーらしい道具感としてこれを捉えると、かなり贅沢であるけれどその感じがばっちりマッチする。
8速ATの変速はこまめで、街中を快適に走るパーシャルスロットル領域でもトルクの落ち込みがなく従順だし、クロスカントリーが多用するであろう微低速域での躾けもいい。そしてグッと踏み込めば、T6ほどのクリア感はないがグーンとサウンドを盛り上げて、力強くその大柄なボディを加速させる。
またパイロットアシストII(車線維持支援機能)を加えた全車速追従機能付きACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)はステアリングスポークのスイッチを押すだけで直感的にアクセスすることができ、とても使いやすい。まだまだ車線を読み切れない場面も多いから油断は禁物だが、キャンプやスキーなどのアクティビティでほどよく疲れたドライバーを、渋滞の魔の手から救ってくれる心強いアシスト役として大いに活躍してくれるはずである。
北欧の気質を色濃く感じる、上質で美しいクルマ
本物のウォールナットを使ったインパネはブラック基調のインテリアに静かな抑揚を与え、シートの座り心地も快適。縦型で見やすいナビ画面や各種操作をインフォテインメント化した先進性も心地よく、移動が楽しい。
外観を見れば専用にあつらえられたグリルやフェンダーモールが際立ち、トランク容量を削ってまで傾斜させたテールゲートのアピアランスがシューティングブレークのように美しい(それでもトランク容量は通常で560リッター、シートを可倒させれば1600リッターもある)。
実用性にこだわるならXC90や、後発する次期XC60を選べば良い。しかし寡黙で、ちょっと荒っぽくて、そして淡麗なスカンジナビアンの気質をより色濃く味わいたいなら、V90クロスカントリーを選ぶのが恐ろしくお洒落だとボクは思う。
[レポート:山田弘樹/Photo:小林岳夫]
VOLVO V90 Cross Country T5 AWD Summum(4WD) 主要諸元
全長x全幅x全高:4940x1905x1545mm/ホイールベース:2940mm/車両重量:1850kg/乗車定員:5名/駆動方式:電子制御4WDシステム/ステアリング位置:右/エンジン種類:「DRIVE-E」直列4気筒 DOHC 16V インタークーラー付 ターボチャージャー ガソリン直噴エンジン/総排気量:1968cc/最高出力:254ps(187kW)/5500rpm/最大トルク:35.7kg-m(350Nm)/1500-4800rpm/トランスミッション:ギアトロニック 8速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:12.9km/L(JC08モード燃費)/サスペンション形式:(前)ダブルウィッシュボーン式(後)マルチリンク式/タイヤサイズ:235/50R19/メーカー希望小売価格:7,540,000円(消費税込)
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