「休日特別割引」が終わったのに、むしろ交通量が増えたって本当?(1/2)
- 筆者: 清水 草一
「休日特別割引」が終わったのに、むしろ交通量が増えたって本当?
高速道路の「休日特別割引」が終わったら、高速道路の交通量は減りそうだけど・・・。
むしろ増えたそうですが、本当ですか?な、なぜでしょうか・・・?
教えてくださいMJブロンディさん。(下道で1,200キロさん)
其の疑問、MJブロンディがお答えいたします!
昨年6月19日をもって、いわゆる「1,000円高速」が終了したことは、みなさん、もちろんご存じだろう。
「1,000円高速」が導入されたのは、リーマンショック後の2009年3月。当時の麻生内閣(自民党)が、緊急経済対策として5000億円の予算を投入して始めたものだ。
割引対象は、「土日休日」の「乗用車」ということで、マイカーを使ってのレジャーが急増。
もともと高速道路の渋滞は、大部分が土日休日に発生していたところに、混む日の料金を大幅割引したものだから、渋滞が激増。2009年のお盆時期には、私も渋滞評論家としてテレビやラジオにずいぶん引っ張り出された。
私はこの制度を、「混む日を安くする最悪の政策」と批判してきたが、一方では、リーマンショックによる大不況に対して、かなりの経済効果を上げたことも確かだった。
東日本大震災の復興財源に使うため、昨年6月をもって、1,000円高速は終了。同時に、土日休日の渋滞も収束を見せた。昨年のお盆時期は、東北地方で被災者に対する無料措置が取られ、それが原因で料金所渋滞が大発生したが、東北を除く各地方では、明らかに渋滞が減った。
そして先般の年末年始。東北地方の高速道路では、被災者に対する無料措置(有人料金所で証明書の提示が必要)に代わって、ETC限定で誰でも無料にする措置が取られた。これでほとんどのクルマがETCゲートに戻り、料金所渋滞は解消。全国の渋滞も大幅に減った。
比較のため、各年度ごとの年末年始の混雑状況を列挙してみよう。
30km以上の渋滞の発生回数(年末年始)
平成20年(割引実施前)/12回
平成21年(1,000円高速実施)/17回
平成22年(1,000円高速実施)/23回
平成23年(割引終了)/11回
30km以上の大渋滞は、前年の半分未満に減っており、渋滞の総量も激減した。
私も昨年の年末、家族で関西まで往復したが、渋滞らしい渋滞には1回しか遭遇しなかった。「1,000円高速の終了で、高速道路は戦時から平時に戻った」というのが実感だ。
なにしろ、上限1,000円でどこまでも走れる(東京・大阪圏を除く)という、劇的な割引制度が終了したのだ。高速料金は、長距離を走るほど劇的に高くなる。高速を使って帰省やレジャーに出かける人は、かなり減ったに違いない。そう思うのが自然である。
ところがデータを見ると、高速道路利用台数は減るどころか逆に増えていたのだ!
衝撃の事実!1000円高速終了後、利用者はさらに増えていた!
全国の高速道路の主要23地点の単純平均交通量(年末年始)
平成20年/35,600台
平成21年/38,100台
平成22年/39,400台
平成23年/40,700台
1,000円高速の実施によって、平成21年に交通量が増えたのは当然だが、それが終了した平成23年も、交通量が3%増えている。いったいナゼ?
主な要因はふたつ考えられる。
ひとつは、東北地方の無料措置だ。今年は、東北道の白河以北等で料金が無料になったことで、交通量が激増。昨年に比べて2倍になった地点もある。ただし、東北以外の全国でも、交通量はほぼ横ばい。これは、料金が大幅値上げされたことを考えると、驚異的な事実だ。
ここからは推測だが、1,000円高速をきっかけに、多くの国民がクルマでの長距離ドライブが「思いのほか楽しくて、しかも安上がり」であることに気づき、1,000円高速が終了しても、相変わらずクルマで出かけたからではないだろうか。
割引がなくても、クルマでの移動は鉄道や航空機に比べ、2名以上乗車なら確実に安上がりだ。クルマなら荷物を持つ必要もない。時間はかかるが、大家族になるほど安くて楽チンだったりするのである。
また、現在の大渋滞は、自然渋滞ならば意外と流れが速い。平均時速は25km/h程度なので、それほど辛いものではない。地獄を覚悟の上で出かけてみたら、意外とそうでもなかった……ということを、多くのドライバーが肌で感じたのだろう(事故渋滞はこの限りではありません)。
昔の渋滞は、こんなものではなかった。
渋滞の途中で車線数が減る箇所が多く、それが流れを非常に遅いものにしていた。しかし徐々に渋滞対策が進み、そういったスーパー渋滞ポイント(たとえば東北道の大谷PA付近)が徐々に減少。止まらずにダラダラ流れる渋滞が増えたのである。
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