ボルボ C70 試乗レポート/森口将之(2/2)
- 筆者: 森口 将之
ボルボらしい安全性や実用性を重視したクルマ作り
フル4シーターのキャビンは、S40やV50、C30と共通だったインパネが、専用デザインになっている。表面には2本のラインが入り、上の線はメーターカバーをウェーブしながら乗り越える。
しかもメーターにはアルミのリングが追加された。おかげで格下の車種と共通という雰囲気は一掃された。屋根が開くクルマを欲しいからオープンカーに乗るわけではない。セダンやハッチバックよりゼイタクという特別感に惹かれる人も多い。
フロントマスクやインパネに手を入れることで、S40やV50、C30との差別化を強調した新型V70は、そんなユーザーの気持ちをよく理解していると思った。
凝った作りの3分割ルーフを開けて走り始めると、乗り心地は記憶のなかにある旧型より締まっていた。
ボディの剛性感はアップしており、ステアリングも少しクイックになっている。
でもレザーシートの座り心地がやさしいので、ボルボらしいおだやかさを感じ取ることもできた。
230psと32.6kgmの2.5リッターターボエンジン、5速ATがもたらす走りは旧型とほぼ同じだ。ターボは約1,500rpmから立ち上がるので、いかなるシーンでも1,730kgのボディを間断なく加速させる。
しかも100km/hでは1,900rpmに抑えられるので、ルーフを上げればかなり静かな巡航が味わえる。直進安定性はボルボの美点はそのまま。ウィンドウディフレクターを立てておけば、100km/hでオープンにしても頭上を風が流れるだけだ。しかもこのディフレクター、ファスナーで開閉可能になっている。
格納したルーフをリフトアップできるトランクを含めて、荷物の出し入れにも配慮している。
オープンカー初のカーテンエアバッグをドア内蔵として実現し、ポップアップ式ロールバーはクーペ時にもリアウィンドウを突き破って衝撃を受け止めるなど、ボルボらしく安全性追求の姿勢もライバルの上を行く。
走行中にルーフの開閉ができないのも、こうした考えによるものだろう。新型C70は、オープンカーにふさわしい特別感をデザイン面で表現しつつ、安全性や実用性を重視したクルマ作りに一切ブレはなかった。
1台でファミリーユースにも対応できる4シーターのリトラクタブルハードトップだからこそ、こうした設計思想に共感を抱くユーザーは多いはずだ。
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