空飛ぶタクシーの実用化はガチであるかも!?【未来モビリティ総研】
- 筆者: 会田 肇
- カメラマン:会田 肇
2020年1月初旬に米国で開催された世界最大のIT家電ショー「CES2020」では、“空飛ぶタクシー”の実現に向けた動きが相次いだ。そこで今週の月曜日はCASEのS(シェアモビリティ)に充たる、“空飛ぶタクシー”をテーマに未来を考えてみよう♪ 一体どれくらい飛べるの? 無人or有人飛行? など気になる真相を暴く!
航空機大手と自動車メーカーがガチ参入
注目されたのが、ベルヘリコプターが出展した電動垂直離着陸(eVTOL)のコンセプト「Bell Nexus 4EX」と、韓国の大手自動車メーカーの現代自動車が出展したeVTOLのコンセプト「S-A1」だ。とその前に……「CASEって何?」という方はぜひ以下の記事を読んで頂きたい。小難しいコト抜きでわかりやすく解説しています!
オスプレイの会社は完全電動モデルで空へ
まず、ベルヘリコプターが出展した「Bell Nexus 4EX」は、昨年のCESで出展したガスタービンで発電してローターを電動モーターで回すハイブリッド型から完全電動に切り替えたコンセプトモデルだ。同社は日本でも何かと話題になるオスプレイなどのヘリコプターを手掛ける大手航空機メーカーだ。
スマートシティでのサービスを提供するための運行管理やメンテナンスを組み込むなど、同社のノウハウを活用することでこのサービスは成り立つという。
気軽に利用できるのがポイント!
ベルヘリコプターはより多くの人が気軽に“空飛ぶタクシー”を利用できるようになることを目指しており、eVTOLが未来のMaaSの一翼を担うと想定。Uberとの提携もその部分でのみ連携することで、この分野での補完関係となることを目指している。
ヒュンダイ×Uberは低騒音マシンで都市部に
一方の現代自動車が提案したのは、Uber Elevate(Uberが計画している空飛ぶタクシー)との共同開発で実現したeVTOLのコンセプトモデル「SA-1」だ。
Uber Elevateが運行管理を担当し、実機の開発・量産は現代自動車が担当する。機体はローターを傾斜させてエネルギー効率を高め、これが都市部を走行するのに欠かせない低騒音を実現するという。都市部を中心に事業を展開するUber Elevateにとってここは譲れない一線だったはずだ。
自動車メーカー参入で実用化が近づく?
見逃せないのは、少量生産を主としてきた航空機メーカーとは違って、大量生産を得意とする自動車メーカーが量産に参画していることだ。
今までならツバを付けておく意味で資本参加するのがせいぜいだったが、現代自動車が自ら生産に乗り出すことを宣言したことの意味合いは大きい。現代自動車の参入によって低コストで生産された“空飛ぶタクシー”が登場する可能性が一段と高くなったとも言えるだろう。
実際、日本を代表する自動車メーカーのトヨタも”空飛ぶタクシー”に巨額の投資をしている。詳しくは以下のニュースをCHECK。
飛べるのは100km程度!
そのスペックはどちらもeVTOLというスタイルを採り、その用途は都市内での近距離でのモビリティを想定する。そのため、両機とも最高速度を時速180マイル(同約290km)とし、一度の充電で飛行できる距離は60マイル(約97km)とかなり控えめ。その上で飛行コストを下げ、ライドシェアのUberと提携することで早期実現を目指すというわけだ。
空の交通ルールはどうなる?!
量産やサービスといった面で現実味を帯びてくると、実現に向けての課題が気になってくる。
一般的な共通認識としてある課題といえば、法律の整備や社会の認識がどこまで追いつけるかだろう。法制度では安全上の観点に立って国がルール作りを進めていく必要があるし、社会的には乗り物が自在に空を飛ぶという不安をどう取り除くかにかかってくる。
自動運転カーよりハードル高い! 普及のカギは値段
特に“空飛ぶタクシー”は、将来、自律飛行が想定されており、となれば無人で乗り物が空を飛ぶことも想定しなければならない。自動車の自動運転さえ社会に受け入れられるか不明の状況で、このハードルはかなり高いとも言える。
加えてその料金体系がどのぐらいを想定しているのかも重要なポイントだ。現在のヘリコプターのような料金体系ではとても庶民が自由に乗れるようにはならない。ベルヘリコプターが気軽に乗れる乗り物を想定しているように、Uberにしてもそのあたりは十分に念頭に置いているはずだ。
トヨタにJALまで、超大手が続々参入
そんな中で時代は着実に実現へ向け、進んでいるようだ。CESが終わった直後、トヨタ自動車が米国のスタートアップであるジョビー・アビエーションに3億9400万ドル(約430億円)を出資して“空飛ぶタクシー”の分野で業務提携。さらにベルヘリコプターは日本航空と住友商事との間でエアモビリティ分野における広範な業務提携を結び、日本を中心としたアジア域内でベルヘリコプターが開発したeVTOL機材によるサービス提供の検討を開始すると発表した。
日本は離島や僻地向き?
米国では都市部での利用を想定されているこのサービスだが、日本では海外に比べて“空を飛ぶ”ことに馴染みが薄い。とはいえ、日本に当てはめれば小回りが効くスペックを活かして離島や僻地での交通手段として活用されれば有効性は高いのも確かだ。
解決すべき課題は多いが、当面は有人による操縦で新たな交通手段とすることで運用されれば有効性が認められる可能性は十分にある。“空飛ぶタクシー”が日本の空を舞う日が訪れることを期待したい。
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