ESCの義務化に思う/河村康彦(2/2)

ESCの義務化に思う/河村康彦
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“自動車先進国”を謳う日本が「放ったらかし」だった事実

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というわけで、「そんなもの、スピードを出さなければ必要ない」と誤って理解をするドライバーが、同様の思いから任意保険への加入も躊躇うような事態が起きない事は切に願うしかないものの、実はESCの“強制装着”は日本を除いた先進諸国ではもはや既定の約束事。

ESCを、背の高いSUVの有力な転倒防止策とも考えるアメリカでは、すでに2007年の時点で

「2011年9月1日以降に米国内で販売される全ての乗用車と小型トラック(総重量4.5トン以下)にESCを義務付け」

と決定しているし、ヨーロッパでも

「2011年11月からEU域内で登録される全ての乗用車/商用車のニューモデル、及び2014年11月からはすべての新車にESCを装着」

と、2009年に欧州議会で合意に達している。

また、オーストラリアでもやはり

「2011年11月以降の全てのニューモデル、及び2013年11月以降の全ての新車登録車に義務付け」

が決定されているのだ。

そんな中、世界でも類を見ない多数の自動車メーカーを擁し、自ら“自動車先進国”を謳う日本が「放ったらかし」の状態にあった事は、かなり恥ずかしい事柄であったと評されても仕方がないだろう。そんな状況の日本でも役所が腰を上げた事は、いささか遅ればせながらとはいえ評価に値する出来事。

確かに、これによって車両価格としては幾ばくかのコストアップは避けられまいが、それは「今の時代にクルマに乗るにあたっての必要不可欠な対価」と納得すべきものだし、これによって確実に事故が減少する事による社会的コスト――すなわち負傷者の救護や治療費等も含めての“事故処理”に掛かるコストや、事故やその復旧工事のための渋滞による経済的損失の削減が可能である事を考えれば、世の中は「より包括的なコストやエネルギーの削減」の方向に進むべきだろう。

それにしても情けないのは、結局はこうしてレギュレーションの縛りを課せられないと、もはやその効果が世界で証明済みの画期的な安全装置の普及に動かなかった日本のメーカーと、その装着によってライバル車よりも多少価格が上回ろうとも、「こちらの方が遥かにお値打ちなんですヨ」と、そんな事実をユーザーに浸透させられなかったボクら自動車メディアに携わる仕事をしている者たち。

ところで、ここまで書き進んだところで改めて心配になってきたのは、やはり冒頭のニュースを追従して報じるメディアが現れていない事。まさか、この業界新聞の“勇み足”による大誤報!なんて事はないでしょうね・・・。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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