国内需要の低迷と新興国への期待/日下部保雄のコラム
- 筆者: 日下部 保雄
国内需要の低迷と新興国への期待/日下部保雄のコラム
年明け早々、自工会の賀詞交換会が行われた。今回のコラムは、そこで感じた話。
景気のよい話はどこからも聞こえてこなかったが、自動車は日本の基幹産業、そして自動車技術に関しても日本は世界のトップレベルだ。そこに活路を見出して、官民一体になって頑張ろうというトーンだった。
昨年の干支であるウシさんは草を食べ歩いていたらしく、景気の伸びもゆっくり、ゆっくりだったからね。なにしろ、昨年の自動車販売は500万台を割り込んで461万台。最盛期の1990年は777万台も販売していたから、その落差は300万台もある。
登録車、つまり軽自動車を除いた台数となると292万台に過ぎず、こちらも300万台を切って1971年以来の300万台割れだ。
「クルマ離れ」といわれているけれど、クルマの保有年数が年々長くなっており(日本のクルマは長持ちだし、モデルチェンジして良いクルマになっていても面白いクルマというのは少ないから仕方無い)、しかも少子化やクルマは白物家電と言ってはばからない人も増える中、国内の新車販売は大苦戦。
2010年は、現状からやや回復、と言う程度の見込みだ。すでに昨年の4月から3年間継続が決まっているエコカー減税(エコカー減税に不公平感があるのはご存知の通り)に加え、エコカー補助金も半年間延長されることになり、需要の掘り起こしに躍起となっているが、今後の経済成長とクルマ需要の減少を割り引いてこのレベルに落ち着いた、といったところだ。
2輪の需要見通しはもっと悪くて、たったの40万台。どこまで落ちるのか底の知れない怖さがあり、各メーカーにとって生産施設の余剰分をどのように消化するかも大きな悩みの種だろう。
各メーカーの首脳の口から出るのは、膨張する新興国市場への期待であり、国内の減少分をそこで補おうとする成長戦略はどのメーカーも描くシナリオだろう。
しかし、これらの市場は世界の自動車メーカーが参入する激戦区で、膨張しているうちは良いが、やがて飽和を迎える時には激しいパイの争奪戦になることも容易に想像できる。そのために今のうちから体力を付けておこう、という腹づもりであることも良くわかる。
いろいろなニュースで見たインドのモーターショー「デリーオートショー」に、その一端を見ることができた。
残念ながら正月をたるんだ気分で過ごしていた私は行かなかったが、このところ精力的にモーターショーの取材をしている竹岡圭ちゃんが帰国したら、彼女に逆取材しようと思っている。
さて、とりとめもなく文章を進めてきたが今年はトラ年。トラは千里を駆けるという。日本の自動車産業も、トラにあやかって一気に駆け抜けることを期待しよう。
この記事にコメントする