ワールド・カー・レポート/北米編(1/2)
- 筆者: 木野 龍逸
今、アメリカが力を入れる“カープールレーン”とは?
2009年春に、何年かぶりでロサンゼルスの南に位置する「トーランス」という街の周辺をクルマで走った。トーランスはトヨタやホンダが拠点を置いているなど、日系企業や日本人が数多く活動しているエリアだ。
トーランス付近からロサンゼルスのダウンタウン方面に行くには、インターステート110号(I-110)でまっすぐに北上すればいい。I-110は、途中でI-405や、ロサンゼルス国際空港から東に向かっていくI-105と交差しダウンタウンに入る、片側6車線ほどある主要幹線道路のひとつだ。
このI-110に設定されているカープールレーンが、いつのまにか片側2車線になっていた。おまけにインターチェンジでは、カープールレーンに入ったまま他のフリーウェイに路線を変えることが可能な、専用の接続路ができているのに気づいて、二度驚いた。
カープールレーンは、「ハイ・オキュパンシー・ビークル・レーン(HOVLANE)」。直訳すると多乗員車用レーンの別名で、1台のクルマに2人以上乗車している場合に走ることができる優先車線だ。路線によっては3人以上の乗車としているところもある。フリーウェイの追い越し車線のさらに内側に1~2車線の専用車線を設け、ダイヤモンド型の標識で表示している。
走行可能なのはバス、乗用車、オートバイなどで、トラックは走行できない。現在は全米で20以上の州が、フリーウェイにカープールレーンを設定している。日本の感覚では、2人乗車で優先道路を走れるというのは甘いように見えるが、アメリカではこれで十分。ラッシュ時でもカープールだけは、けっこうスイスイ流れている。要するに、ほとんどが1人乗車なのだ。
1990年代から、カリフォルニア州ではカープールレーンの設置に力を入れ、その数を増やしてきた。総延長は、2000年に925マイル(約1,480km)だったのが、2008年には1,410マイル(約2,256km)と、1.4倍にもなっている。
カープールレーンはほとんどの場合、完全に他の車線から隔離されていて、出入りできる場所は限られている。そのため、インターチェンジの場所を認識していないと降り損なることもあり、不便だった。
それを改善するため、今ではいくつかのインターチェンジに、前述したような専用の接続路が建設されている。便利になったせいなのか、2009年12月に開催されたロサンゼルスオートショーを見に行った時には、2車線のカープールレーンをひっきりなしにクルマが走っていた。
もっとも僕は1人だったので、渋滞をノロノロと動きながら横目で眺めていただけだったのだが。