日産 新型シルフィ 新型車解説(1/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
改めて“セダンのメリット”とは
「最近の子供が描く自動車の絵には、トランクスペースが付いていない」という話を聞くようになって、早くも10年以上が経過する。
売れ筋のジャンルは軽自動車/コンパクトカー/ミニバンで、もはやトランクスペースを備えたセダンは少数派だ。しかし、セダンの魅力が薄れたわけではない。
2012年12月5日に日産から新型車の「シルフィ」が登場したが、新型シルフィの解説へ入る前にまずは「セダンのメリット」について改めて触れておこう。今ではセダンは個性的なジャンルになっているからだ。
セダンの一番の特徴は、軽/コンパクトカー/ミニバンに比べて背が低いこと。軽自動車やコンパクトカーにも背の低い車種はあるが、数は少ない。その点、セダンは国産車で全高が最も高いSX4セダンでも1545mm。大半は1500mm以下に収まり、重心を低く抑えることが可能だ。
加えて、リアシートとトランクスペースの間にボディの骨格が通り、大開口のリアゲートもないからボディ剛性を高めやすい。低重心の高剛性ボディであれば、走行安定性、乗り心地、ノイズなど走りと快適性をバランス良く高められる。
また、軽自動車やコンパクトカーほど価格競争が激しくないから、サスペンション、シート、内装などにコストを費やしやすい。上質なクルマに仕上がるわけだ。
以上のような特徴を持つセダンは、高速道路や峠道を通る長距離ドライブにピッタリ。ボディが左右に振られにくいため、クルマ酔いを防ぐ効果も期待できる。
3ナンバー化されたものの、全長や取り回し性はこれまでとほぼ変わらず扱いやすい
さて新型シルフィについてだが、「ブルーバードシルフィ」の後継モデルに当たる。ちなみに「ブルーバード」初代モデルの登場は1959年。第二次世界大戦前から続く「ダットサン」の後継だった。
「ブルーバード」は日産の、というより量産国産乗用車の歴史を受け継ぐ伝統ある車名だが、「シルフィ」への刷新で終止符を打たれた。クルマ好きとしては、感傷的な気分にならざるを得ない。
ボディサイズも変わった。新型シルフィの全長はブルーバードシルフィに対してわずか5mm長い4,615mmだが、全幅は65mmワイド化されて1,760mmになる。
つまりは3ナンバー車で、このあたりも5ナンバーセダンとして発展してきた「ブルーバード」から脱した理由だろう。全高は1,595mm。セダンでは背が高い部類だが、先代型に比べると15mm低くなった。
外観はオーソドックスなセダンスタイルで、ブルーバードシルフィと同じ路線。中国ではファミリーセダン、北米ではパーソナルセダンとして売られ、実用指向を意識させるデザインだ。
外観上の特徴は、ボンネットを短く抑えて有効室内長を長く確保したこと。フロント側のサイドウィンドウの下端が低いことも特徴だ。側方の視界を向上させ、取りまわし性に配慮している。
新型シルフィの最小回転半径は5.2m。ブルーバードシルフィの5.3mを下まわり、小回り性能は良い。3ナンバーサイズに発展したものの、従来型のユーザーが代替えしても違和感は少ないだろう。
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