電動キックボードの公道使用は是か非か? 政府認可のもと東京都心で実証実験開始

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タクシーやカーシェアよりも気軽で、自転車よりも楽に移動できる電動キックボードが注目を集めている。だが、車との速度差が大きい割に車道しか走れないなど、安全性を疑問視する声も多い。そんな中、国の特例制度のもとで自転車専用通行帯を走行する実証実験が、東京丸の内を中心に開始された。海外に比べ電動キックボードの導入が遅れているとも言われる日本で、これほど大規模な実証実験はいったいどんな意味があるのか? 海外での導入事例を確認しつつ、日本での有用性について見てみよう。

目次[開く][閉じる]
  1. 東京で電動キックボード公道実証実験開始
  2. 海外で普及が進むも安全性に懸念
  3. 国や地方自治体を巻き込んだ実証実験が続々と開始

東京で電動キックボード公道実証実験開始

Luupと大手町・丸の内・有楽町地区(以下、大丸有)まちづくり協議会のスマートシティ推進委員会は、電動キックボード公道走行による実証実験を開始。2020年10月27日から2021年3月中旬まで、大丸有エリアと神田・御茶ノ水・神保町エリアで実施される。

本実験は経済産業省が個々の事業内容に即して規制改革を進めていくために創設した新事業特例制度に基づいて実施され、電動キックボードが車道だけでなく「自転車専用通行帯」を走行する日本初の試みとなる。

米国や欧州では電動キックボードの導入と普及が進んでいる一方、日本の現行法制では電動キックボードは原動機付自転車に該当するため、安全かつ気軽に公道で利用するには難しい状況だ。そこで、新事業特例制度を用いて行われる今回の実証実験では、車道に加えて自転車専用通行帯を走行する。

利用者はヘルメットを着用して参加

本実験では、まず大丸有エリア内に専用モビリティポートを複数設置し、実証参加者による電動キックボードの使用を通して電動キックボードの公道走行についての安全性や社会受容性などの検証を行う。また、移動利便性とエリア内外の回遊性向上の検証も行う予定だ。

なお実験参加者は、ヘルメットの着用と運転免許証の携帯が義務付けられ、使用される電動キックボードは、ブレーキランプやナンバープレートなど、現行法上の原動機付自転車と同等の装備を持ったレンタル車両が使用される。

海外で普及が進むも安全性に懸念

電動キックボードが注目されている理由は、タクシーやカーシェアよりも気軽で自転車よりも長距離を楽に移動できることに加え、座る必要がないためどんな服装でも利用しやすいなど、これまでの車やバイク、自転車には無い特徴があることだ。

2019年10月に日本貿易振興機構(JETRO)が発行した資料によると、米国(カリフォルニア州)をはじめ、ドイツ、フランスなどでは、条件付きで電動キックボードの公道使用が認められ、自転車に代わる移動手段として利用されているほか、乗り捨て型のシェアリングサービスなども実施されている。

電動キックボード海外導入事例(経済産業省「第三回 多様なモビリティ普及推進会議」用資料より)

■米国 カリフォルニア州サンフランシスコ市

・走行可能道路:自転車道を含む車道(自転車道がある場合は原則自転車道を要走行)

・速度制限:時速15マイル(約24km/h)

・年齢制限:16歳以上(運転免許証もしくは仮免許が必要)

・ヘルメット:18歳未満は着用義務あり(18歳以上でも着用を推奨)

■ドイツ

・走行可能道路:自転車専用道(自転車専用道がない場合は車道の走行可)

・速度制限:20km/h

・年齢制限:14歳以上(運転免許不要)

・ヘルメット:着用義務なし(着用を推奨)

■シンガポール

・走行可能道路:歩道およびシェアードパス(歩行者専用道および車道の走行は禁止)

・速度制限:歩道は10km/h、シェアードパスは時速25km/h

・年齢制限:16歳以上(登録要、運転免許不要)

・ヘルメット:着用義務なし

※シェアードパスとは、公園や緑地を結ぶウォーキング、ランニング、サイクリング道

注目されつつも安全性に懸念

日本でもこれまでさまざまな実証実験や体験イベントが行われ、新しい移動手段として注目を集めてきた。また、実際に日本でも原動機付自転車として使用できる電動キックボードは既に販売されている。

ただし、歩道や自転車専用道路を走行することはできないのはもちろん、車との速度差が大きいためその安全性が懸念されているのも事実。実際に海外では電動キックボードと車による事故で死亡者が出ており、さらに、走行が禁止されているはずの歩道で起きた歩行者との事故や無秩序な駐車が問題視されるなど、後追いする形で規制が強化されているのだ。

国や地方自治体を巻き込んだ実証実験が続々と開始

タクシーよりも気軽で自転車よりも楽に移動できる

日本においても、コロナウイルス感染症の流行により、密を避けた公共交通機関を利用しない移動方法が見直されつつある。また、地方の観光地などでは、レンタカーやレンタサイクルに代わる新しい移動手段、観光資源としても注目されている。

東京都で行われる今回の実証実験のほか、同様の実証実験が福岡県福岡市でも開始され、福岡市の高島宗一郎市長自らが電動キックボードに乗り安全性や利便性を確認するなど、今後神戸市や愛媛県今治市などでも実施される予定だ。

こういった動きからも、これから益々電動キックボードが新たなパーソナルモビリティとして注目され、普及するのは間違いないだろう。

後追い規制にならないために必要な実証実験

とは言え、道路環境の整備が整っていない現状では、「電動キックボードなんて危険!」という意見があるのも当然で、このままなし崩し的に日本の道を電動キックボードが走り回るのは確かに危険。だからこそ、海外のように「先に製品が出て問題があってから規制する」ということにならないために、今回のような実証実験は非常に意義深いのではないだろうか。

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樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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