BMW 5シリーズツーリング 525iツーリング 試乗レポート
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:原田淳
「525iセダン・ベースのステーションワゴン」
BMWで『ツーリング』と言えば、それはステーションワゴンを示す代名詞。すなわち、このほど日本で発売の525iツーリングは、「既存の525iセダン・ベースのステーションワゴン」という事になる。
このところ車名が必ずしもエンジン排気量とシンクロせず、戸惑う事の多いBMW車だか、このモデルの場合にはエンジン排気量は2.5リッターと幸い(?)にも一致。4855mmと長い全長は、しかしセダンのそれと完全なる同寸。もちろんホイールベースも同様ですなわちワゴン化に当たってはボディ・サイズには手を加えられていない事になるが、1730kgの重量はセダンの150kg増し。「サイズアップにも拘わらず先代モデルに比べれば“わずかに”70kg しか重くなっていない」というのがBMW側の言い分だが、しかし1.7トンを超える重量はやはり決して軽いとは言い難いレベルにある。
セダンを目にした誰もが、自然に思い浮かべる事の出来るスタイリング
5シリーズ・ツーリングは「最初にセダンを目にした誰もが、自然に思い浮かべる事の出来るスタイリングの持ち主」と言って良いように思う。7シリーズにZ4、その後に6シリーズ…と前衛的なルックスに挑戦を続ける昨今のBMWだが、そんな流れもさすがにワゴンのリアセクションにまでは及んでいない、と表現したらそれは言い過ぎだろうか?
インテリアはシートに座って前方を見ている限り、セダンとの違いを見出す事は出来ないと言って良い。当然ながら居住スペースもセダンと同等。それゆえに「こちらの外観が気に入ったのでセダンではなくワゴンを選ぶ」という選択肢を持つ人も居るはずだ。
空気圧ゼロ状態でも規定条件下での走行が可能な“ランフラット・タイヤ”を標準採用としながら何故かテンパー・スペアタイヤも搭載するため、せっかくのサブトランク・スペースが犠牲になっているのは何とも不可解。ラゲッジスペースは後席使用時の500リッターから、後席をアレンジする事で最大で1615 リッターと十分な容量を確保する。
珠玉のような直列6気筒エンジン。ある意味「こなれた乗り心地」。
珠玉のような直列6気筒エンジンが生み出すスムーズなパワーフィールに、路面凹凸の吸収性に悪影響を及ぼしがちなサイドウォール補強型のランフラットを装着する割にはこなれた乗り心地…と、基本的には上質な乗り味を提供してくれる525iツーリングの走り。が、それでもセダンに比べると若干ながらボディ剛性の低下を感じ、やはりセダンでは気にならないドラミング(低周波)ノイズがわずかに目立つなど、正直なところ走りの質感はセダン比でやや落ちた印象を受けると報告したい。
本来ならばBMW車らしく滑らかで剛性感に富んでいるはずのステアリング・フィールが、車速感応式の可変ギア比ステアリング“アクティブ・ステアリング” のためにスポイルされてしまっているのも惜しい。そもそもパーキング・スピード時を中心としたステア操作量低減のために開発され、日本以外ではオプション設定となるこのアイテムは、日本でも是非とも本来の「選択可能装備」に戻して欲しい一品だ。
よりパンチある心臓が搭載されたモデルの発表が待ち遠しい。
現在のところ日本で選べる5シリーズのワゴンは、この525iツーリングに限定される。確かに実用上では何らの不満も覚える事はないが、特に強力な加速に魅力を抱くというのであれば、よりパンチある心臓が搭載されたモデルが発売されるのは待つという案も考えるべきかも知れない。
ステーションワゴンならではの大型テールゲートを頻繁に開閉する可能性のある人は、73500円で用意をされるオプション設定の電動開閉メカ“オートマチック・テールゲート・オペレーション”も検討したいアイテム。ちなみに、大型のテールゲートと共に開閉式ガラスハッチを装備するのは新型5シリーズ・ツーリングの特徴のひとつだ。そして、ゲートとハッチのいずれを開いた場合でもロールアップ式のトノーカバーが自動的に上方へ開き、荷物の出し入れ性を向上させるというシステムもこのクルマの売り物のひとつ。ラゲージスペースは「大型と中型のスーツケースを2つずつ、もしくは46インチのゴルフバッグを4個搭載出来る容量を備える」とBMWでは説明する。
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