メルセデス・ベンツ E63AMG 海外試乗レポート/大谷達也(2/3)
- 筆者: 大谷 達也
- カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
AMGパフォーマンス・パッケージでスピードリミッターは300km/hへ!
前置きが長くなってしまった。ここからは新しいE63AMGについて紹介していこう。
前述のとおり、排気量は小さくなったけれど、パワーは旧型と同じ525hp(日本式の表記では524psになると見られる)、最大トルクは10%以上増えて700Nm(68.6kgm)になった。
500hp以上のパワーといえば、一昔前のスーパーカー並みである。ただし、こちらは圧倒的に静かで、スムーズに回り、おそらくは故障も少ない。それでいて燃費もよくなっているのだから驚くしかない。
もっと驚くべきことは、この525hpの最高出力を557hpへ、最大トルクを800Nm(78.5kgm)まで引き上げるオプションが用意されていることだ。その名もAMGパフォーマンス・パッケージ。これを注文すると、上記のパワーアップが図られるほか、通常は250km/hで作動するスピードリミッターが300km/hに設定し直される。
本当にここまで使う人がどのくらいいるかはわからないが、最高速度が250km/hと300km/hでは印象が大きく異なる。一部のオーナーにはたまらない魅力となるだろう。
試乗会場は南仏のコートダジュール周辺。ここに昔F1フランスGPを開催していたポールリカールというサーキットがある。いまはF1テスト用などに幅広く利用されているが、今回はこのポールリカール周辺の一般公道とサーキット走行の2ステージが試乗メニューとして用意されていた。
まずは公道を走る。この近辺は片側1車線の曲がりくねった道が延々と続いている。日本だったら、制限速度は間違いなく40km/hだ。そんなところだから、普通だったら500hp以上のパワーもあるモンスターを走らせるのは苦痛にもなりかねない。けれども、E63AMGはこの狭い道を信じられないようなスピードで突き進んでいく。しかも、そうやって走ってもまったく怖くない。それだけ取り扱いやすく、安定性が高いということだ。
それにしても新たにツインターボを得た5.5Lエンジンは、アクセルを踏み込んだ瞬間にわっと力がみなぎる。普通、自然吸気エンジンだと、エンジン回転数が上昇していくにつれてトルク(力)も増えていく。でも、ターボだと、回転数はそのままに、急にトルクを増やすことができる。
簡単に説明すると、ターボは排気量を変化させるのと同じような働きがある。だから、エンジン回転数が同じままでも瞬間的にトルクを増やすことが可能なのだ。もっとも、これはAMGのようにできのいいターボエンジンに限った話。なかにはさほどでもないエンジンもあるので、ご注意を。
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