2000万円超えも! シェア拡大中の高級キャンピングカーは“走る別荘”だった![JCCS2017]
- 筆者: 遠藤 イヅル
- カメラマン:オートックワン編集部
実は結構売れている! 高級・高価なキャンピングカー
日本RV協会が発行した「キャンピングカー白書2016」によると、軽キャンピングカーのような手軽なキャンピングカーが普及している一方、800万円、900万円する高級キャンピングカーも確実な市場を持っている。データで見ると2015年のデータでは800万円台のモデルが7.3%、1000万円台のモデルではシェア率2.3%、1000万円以上では4.8%に達し、しかも2013年比では800万円台は1.5%、1000万円以上でも0.3%の増加を見せているほどだ。実際、2月2日(木)~2月5日(日)まで幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2017」でも、海外からの輸入モデルを中心に、決して少なくない台数の高価なキャンピングカーが展示されていることに気がつく。
ほとんど家!? まるで高級マンションのようなインテリア!
輸入キャンピングカーでいちばん多く目にするのは、イタリアのフィアット デュカトをベースにしてバンボディをそのままキャンピングカー仕様にしたもの(バンコンバージョン=バンコン)、キャビンから後部を居住空間に作り替えたもの(キャブコンバージョン=キャブコン)だが、価格帯は約600~700万円台からで、これに各種オプションがついてさらに価格が上昇していく。この価格帯のモデルでも、輸入モデルのインテリアはシティホテルやシックなマンションのような高級感がある。
日本でも知られるドイツのバーストナーやハイマーのほか、同じくドイツのデスレフ、サンライト、スペインのエースキャラバンズ、イギリスのローラーチーム、イタリアのウインガム、スロベニアのアドリアなど、欧州各地にはキャンピングカーのビルダーがたくさんあり、陸続きで長距離旅行を楽しめる欧州のキャンピングカー文化の一端を垣間みることが出来る。
FCAジャパンが展示したフィアット デュカトを紹介するページでも触れているが、ビルダーやモデルによってベースのデュカトに右ハンドルと左ハンドルが混在し、後部のドアも左ハンドル用のまま(つまり、日本では歩道側ではなく、車道側が開く)のモデルも存在する。だが、単に欧州仕様そのままで持ち込んでいるワケでは決してなく、日本の環境に合わせ輸入代理店などと共同で日本オリジナル仕様を製作している会社が多いようだ。
バスのようなオリジナルボディのキャンピングカーにビックリ
では1000万円を越えるキャンピングカーとはどのようなものになるのか、とても気になってくるところ。前述のフィアット デュカトの後部を換えたキャブコンバージョンにも1000万円オーバーのモデルが存在するが、この価格帯では車体の長さもぐっと伸び、室内の調度品の高級感も増してくる。
例えば今回のショーに展示されていた「Dethleffs 4-Travel T7116-4」(デスレフ 4 トラベル T7116-4)はデュカトをベースにしており、全長7.49m×全幅2.33m×全高2.98mというマイクロバスを越えて中型バスに迫るほどの大きさを持ち、会場出展車の価格は1300万円(税抜き/キャンピングカーの世界は税抜き表示が慣習となっている点に注意。以下特記ない場合は税抜きで表記)。
また、会場で唯一メルセデス・ベンツの大型バン、スプリンターをキャブコンバージョンしたキャンピングカー「HYMER ML-T580 4WD」(ハイマー ML-T580 4WD)の展示車はキャンピングカーには珍しい4輪駆動で、さすがに1548万円という高価格になる。
本場アメリカのキャンピングカーは規模が違う!
洗練された印象の欧州製キャンピングカーに負けず劣らず、会場で存在感を放っていたのがアメリカン・キャンピングカーだ。メッキグリルがギラギラのゴツくて巨大なボンネットトラックの後部に真四角な家のような箱を取り付け、各所に光るマーカーライトがアメリカ車らしさを強調する。背負った箱がただでさえ大きなトラックのキャビンよりもさらに大きいので、それをカバーするために伸ばされたドアミラーのステーも特徴である。
ニートRVが新たに輸入を開始した「WINNEBAGO FUSE WF423A」(ウィネベーゴ フューズ WF423A)は、フォード トランジットをベースにしたキャブコンバージョンのキャンピングカー。ウィネベーゴといえば、トミカの外国車シリーズ( “ウィネバゴ”表記!)でその名を知った方もいらっしゃるはず。
フューズはリビングの一部が外側にスライドアウトする機能を持つ。これにより、車内は一層広くなるのだ。全長は7.1m、全幅は2.3mの巨躯だが、これでも北米のキャンピングカーとしてはコンパクトというのだからびっくりだ。会場展示車の価格は1406万円。
雄大な雰囲気に君は地平線を見る!?
でも、たしかにその次に東和モータースが輸入している「DollyVarden DV2550FB」(ドリーバーデン DV2551FB)の大きさを見たら、たしかにダウンサイジングされているのだと気がつかされた。
フォード エコノラインE450スーパーデューティーのシャーシに上に構築された居住スペースは巨大で、決して小さくないE 450の顔をコンパクトなトラックに見せるほど。
室内はアメリカ映画に出てくるような伝統的な品格漂うデザインを備え、リビングの一部がスライドアウトすることでさらに広々とした室内空間が出現する。車両後部にはなんとダブルベッドまで備わっているのだ。自分の部屋よりも広い!という人もいるかもしれない(涙)。
車内でついうっかりくつろいでしまったが、窓から見えるのは幕張メッセの景色のはずなのに、アメリカの広大な大地の彼方の地平線が見えた・・・ような気がした(笑)。
こうなってくると、取材しながら「今回のショーで一番高いキャンピングカーはどれだろう」と思うようになっていたのでドリーバーデンの価格に注目したところ、オプションなし(もはやあとから付ける装備がないほどに豪華)で1790万円! 現在のところ、トップである。
なお、面白いのは、ここまでアメリカンな内容をもつドリーバーデンだが、日本での使用に向けた専用設計であること、そして、アメリカらしいのがこんなに大きなクルマをディーゼルではなく、6800cc・305psのガソリンエンジンで走らせるということだ。
どれを観てもため息しか出ない素晴らしさ
このほかにも同じくアメリカのフォード トランジットベースのキャブコンバージョン車「Thor Motorcoach COMPASS 23TK」(トール モーターコーチ コンパス 23TK)が1386万円、VWのトランスポーターT6のキャンパー「Volkswagen T6 California Ocean 4-MOTION」(フォルクスワーゲン T6 カリフォルニア オーシャン 4モーション/なんとメーカー純正モデルだ!)が、驚きの高価格1260万円、古き良きアメリカのキャンピングトレーラーのイメージを色濃く残すエアストリームジャパンの「AIRSTREAM International European 684」(エアストリーム インターナショナル ヨーロピアン684)が1540万円など・・・
と見ているうちに、すっかり金銭感覚が麻痺してきたが、依然ドリーバーデンの1790万円を越えない。
そしていちばん高額だったキャンピングカーは、コレ!
ところが! バーストナージャパンが展示したバーストナーのフルコンバージョンモデルBURSNER GRAND PANORAMA I915G(バーストナー グランド パノラマI915G/フィアット デュカトベース)の価格はなんと1980万円。これも税抜き価格のため、消費税8%を計算したら・・・2138万円(と4000円)!
郊外の一軒家やマンションが買えてしまうほどの価格である!
だがもちろんそれに見合うだけの内容を備えており、まず全長9mという大柄な車体に圧倒される。しかも後輪は2軸である。9mといえば大型観光バスの短尺車と同じ。それが生み出す室内の広さは言うまでもない。
室内調度品もシック&モダンで、まるで高級ホテルそのものの質感だ。これをわずか4~5名で使うのだから、とても贅沢である。
気がつけば「最高価格車はどれだ!?」という記事になってしまったが、1000万円オーバーの高級キャンピングカーには、ヨットやクルーザーを見た時のような憧れの気持ちが芽生え、欲しいけれど手に入れてみたいという衝動を感じた。家のようだがクルマ・・・という不思議な乗り物である高級キャンピングカーは、現在のクルマに忘れられがちな「夢」を純粋に見せてくれるような気がした。
[レポート:遠藤イヅル/photo:オートックワン編集部]
この記事にコメントする