ここ数年、東京オートサロンで最も強い存在感を放っているTOYOTA GAZOO Racingは3台の魅力溢れる市販車、参考出品車を出展した。
トヨタにおいて強いこだわりを持ったスポーツモデルであるGRシリーズは、架装がライトな方からGRスポーツ、GR、GRMNというピラミッドを形成する。その頂点に立つGRMNはエンジン&トランスミッションの変更、エンジン内部のチューニングまで施される限定車となる。
GRMNは今まで86、ヴィッツなどにラインナップされており、マークXも、2015年3月に3.5リッターV6エンジンにカタログモデルにはない6速MTを組み合わせたGRMNが100台限定で市販化され、あっという間に完売となった。それから約4年が経った今回の東京オートサロン2019で、マークXとしては第2弾となるGRMNが発表されたのだ。
お正月の箱根駅伝でランナーと並走した新型マークX GRMNは、3.5リッターV6エンジン+6速MTというパワートレーンはそのままであるが、エンジン特性に合わせたファイナルギアのハイギヤード化、252ヶ所にもおよぶスポット溶接打点の追加によるボディ剛性の強化、ボディ剛性強化に伴うサスペンションの見直しなどが施されている。
気になる限定台数は前回の3倍以上となる先着順の350台。513万円のプライスタグが付き、27万円のオプションでボディ上部が10kgも軽量化されるカーボンルーフも設定される。販売店はトヨペット店ではなく、GRガレージとなるため注意が必要だ。
マークX GRMNは大パワーFR車+MTという大変貴重かつ魅力ある存在であるため、欲しいなら即注文を勧めたい(なお350台目の納車は2019年12月あたりの見込み)。さらにベースとなるマークX自体がそう遠くないうちに生産終了となる可能性もあるため、第3弾の可能性は低く、迷っているならばなおのこと一刻も早く動くべきだろう。
サプライズ的に出展されたコペンGRスポーツコンセプト。まず驚くのは、トヨタの子会社とはいえ別会社となるダイハツ車がベースであるということだ。
コペンGRスポーツコンセプトの企画は、豊田章男社長をはじめするトヨタ側の「以前ミッドシップ+オープンのMR-Sがあったこともあり、オープンのスポーツモデルが欲しい」という思いと、ダイハツ側の「コペンでスポーツ走行をするユーザーも増え、『もっとスポーツ走行に対応してくれるコペンが欲しい』という声が増えている」という思惑が一致し始まったという。
GRスポーツという名前の通り、チューニング内容は前述の通りサスペンションチューニング(車高も変更なし)、ボディ補強といったライトなものとなるが、コペンの走りがどう変わるのか非常に興味深い。また開発はダイハツ中心ではあるが、テストにはトヨタ側のスタッフも参加して、意見交換が行われたという。
話を聞くと「コペンGRスポーツコンセプトはダイハツ、トヨタ双方で販売されます」という言葉もあり、市販化はほぼ確実のようだ。価格もGRスポーツの位置付けに沿い、ベース車の20万円から30万円高に抑えられるようで、特にコペンファンには待ち遠しい存在だ。
20年に一度のフルモデルチェンジということもあり、現行センチュリーは2018年話題のクルマの1台であった。その話題性にさらに拍車を掛けたのが、2017年の東京モーターショーで豊田章男社長の「センチュリーのGRMN仕様を作ります!」という宣言通り、2018年秋に突如として公となったGRMN仕様の存在であった。
センチュリーGRMNは市販化されていないが、豊田章男社長の専用車として品川ナンバーが付くパールホワイトと、愛知にブラックの合計2台があり、東京オートサロンには今まで露出が少なかった豊田ナンバーが付くブラックが出展された。ちなみに希望ナンバーの1867はトヨタの創業者の豊田佐吉氏の誕生した年で、センチュリー自体、豊田佐吉氏の生誕100年となる1967年に登場したクルマである。
今年の箱根駅伝でパールホワイトのモデルが先導車を務めたことでも話題になったセンチュリーGRMN。その詳細は公開されていないが、開発担当者に話を聞くとパワートレーンは5リッターハイブリッドのまま十二分な出力があるだけに、排気系を含めパワーアップは行われていない模様。シャーシ関係はボディ補強、車高ダウンを含めたサスペンションの変更、フロントブレーキディスクのサイズアップ、4ポットから6ポットへのキャリパーの強化、18から19インチへのタイヤサイズの拡大(ホイールはセンチュリーのシンボルである鳳凰のセンターキャップが付くBBSか? 出展車は冬場ということでスタッドレスタイヤを履いていたが、サマータイヤは横浜ゴムのアドバンスポーツのようだ)などが行われている。
インテリアはカタログモデルに設定されるベージュの内装色のファブリックシート仕様で、変更点はGRのロゴが付くスタートボタン程度のようだ。またセンチュリーGRMNの開発スタートは前述の豊田章男社長の宣言後だそうで、そこから逆算すると開発期間は1年足らずという短い時間だったそうだ。
センチュリーGRMNは大変面白い存在である反面、必要性も極めて低いクルマだけに市販化の可能性も限りなくゼロに近いようだ。それでも日本のシンボルカーの1台といえるセンチュリーをさらに際立てる夢のある存在として、価格はいくらでもいいから市販化を熱望したい!
[筆者:永田 恵一 撮影:和田 清志・トヨタ]
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2018/12/19