トヨタ ノア/ヴォクシー/エスクァイア、日産 セレナ、ホンダ ステップワゴンがしのぎを削る、現在日本のファミリーカーの定番となっているミニバンで、いわゆる“フル”ハイブリッドを設定しているのは、ちょっと前までノア/ヴォクシー/エスクァイアの三兄弟だけだった。
>>日産、セレナe-POWERを初公開、発売は2018年春…ノートに続くe-POWER第二弾!
しかし、9月にステップワゴンにもハイブリッドが追加され、フルハイブリッドを設定していないのはセレナだけとなってしまった。
一方で日産は、コンパクトカーのノートに昨年「e-POWER」を投入した。e-POWERとは発電専用に使用し、そこで発生した電気を使ってモーターでタイヤを駆動するシリーズハイブリッドのことだ。やや誇張表現なところもあるが、「電気自動車の新しい形」というCMも追い風となり、何度か月間販売台数ランキングでトップになるほど好調な販売をキープしている(ただし日産の完成検査不正で現在急ブレーキが掛かっているところだが...)。
セレナは日産の国内販売ではノートに次ぐ売れ筋車種であるため、ハイブリッドが欲しかったところに、e-POWERという強力な武器ができたこともあり、セレナにもe-POWER第2弾となるハイブリッドを追加、来年春に発売されることが発表され、東京モーターショー2017で実車が公開された。
今回公開されたセレナe-POWERは、エアロパーツなどが付くスポーツグレードのハイウェイスターで、e-POWER専用のエクステリアとして、ノートe-POWERや電気自動車リーフと同じようにグリルにブルーのアクセントを施したほか、専用LEDテールランプや空力特性に優れたデザインの専用アルミホイールを履き、標準エンジンのセレナとの差別化を図っている。また、出展されたのはハイウェイスターだったが、標準ボディのセレナにe-POWERが設定されるのかも気になるところだ。
インテリアでは、現行セレナの2列目シートはキャプテンシート的にも使える3人掛けのベンチシートのみの設定だったが、e-POWERの2列目シートは現行セレナでは初となるキャプテンシートとなる(そのため2列目は2人乗りなので、乗車定員は標準エンジン車の8人に対し、e-POWERは7人)。セレナの大きな特徴だった2列目ベンチシートをキャプテンシートに変えたのは、高価になるハイブリッドには「贅沢感のあるキャプテンシートを」という意図なのか、あるいはカタログ燃費を計測する際に分けられる車重の区分がベンチシートでは微妙なところで、キャプテンシートの方が軽くカタログ燃費が有利になるなどの事情もあるのかもしれない。
気になるe-POWERに関しては、残念ながらメーカーから発表された以上の内容を取材することができず、以下筆者の予想を記する。
まず一番容易なのは、1.2リッターエンジン+発電用モーターで先代リーフのモーターを駆動するノートe-POWERのシステムを流用するという方法だ。しかし先代リーフのモーターは、109馬力とハイブリッド化で1700kg台の車重が予想されるセレナにはいかにアクセルを踏んだ瞬間からフルパワーが出るモーターでもパワー不足が懸念され、発電のためのエンジンの負担が大きくなると結果的に燃費で不利になることも考えられる。
ということを考えると、セレナに搭載される2リッターエンジンを発電に使い、現行リーフのモーター(150馬力)で走らせるという手もあるのかもしれない(新しいシステムを開発するコストがペイするのか、それに伴い価格がどうなのかという面もあるが)。
スペースが命のミニバンにとってハイブリッドカーの大きな構成部品となる駆動用バッテリーの配置は非常に重要な問題だが、駆動用バッテリーは床下に置くか、床下でなければセレナはラゲッジスペース下に大きな収納スペースがあるのでそこに置くことになるだろう。
気になる燃費に関しては、セレナは後出しだけにライバルのノア/ヴォクシー/エスクァイアの三兄弟のハイブリッドの23.8km/L、ステップワゴンハイブリッドの25.0km/LというJC08モード燃費を超えたいところだろう。しかし、e-POWERが該当するシリーズハイブリッドは、構造的に高速道路の速度域になると燃費で不利という弱点があり、クラストップの燃費をカタログに載せるのは難しいかもしれない(日産と同じシリーズハイブリッドとなるステップワゴンハイブリッドのようにクラッチを設け、ペースが速い時にはモーター駆動より効率のいいエンジン直接駆動でタイヤを回すという隠し玉が投入される可能性もあるかもしれない。しかしクラッチが付くとその分のコストアップや5ナンバー幅となるセレナに全幅に「収まるのか?」という心配もあるが)。
最後に価格はミドルハイトミニバンの場合、標準エンジン車とハイブリッドの価格差は50万円程度が相場となっており、その範囲には収めてくるだろう。しかしセレナは売れ筋のハイウェイスター Vセレクションで293万4360円と、ノア三兄弟やステップワゴンに比べ現状20万円くらい高い傾向になっており、そこにハイブリッドで50万円、e‐POWERにももちろん設定されるセレナの大きなセールスポイントとなっているプロパイロットを付けるとさらに約20万円高で約360万円、カーナビなども付けたらあっという間に総額400万円超えというのはミドルハイトミニバンとしてはちょっと考え物だろう。
そのあたりを踏まえると、セレナは失敗のできない日産の国内販売のエース級存在だけに、ハイブリッドの価格を40万円高程度に抑え、絶対的には安くないにせよ、相対的に買い得感のある値付けとしてくる可能性も十分ある。
いずれにしろハイブリッドのミニバンの購入を考えているユーザーにとって、セレナe-POWERは気になる車であり、可能であればセレナe-POWERも見てから車を選びたいところだ。
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