フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、東京モーターショー2017でEVコンセプトカー「I.D BUZZ」を日本初披露した。
“We make the future real”をテーマにし、クルマの未来を具現化した電気自動車「I.Dシリーズ」のひとつである「I.D BUZZ」は、2017年1月のデトロイトショーで登場。ジュネーブショーでも展示されたのち、いよいよ日本の地を踏むことになった。往年の名車、「タイプ2」を彷彿とさせる丸みを帯びたデザインとしながら、LEDヘッドライトや特徴的な薄型のテールランプを装備し、どこか懐かしさを感じるフォルムに先進性を表現している。
俗に「ワーゲンバス」とも呼ばれる「フォルクスワーゲン タイプ2(独語風に書くと”TYP 2”)」は、あの有名な名車「ビートル」をベースに箱形車体を載せた商用モデルで、1950年に「T1」が登場。1967年に大幅に車体設計を変更した「T2」となり、1979年まで製造された。いわゆる「ワーゲンバス」は、その中でも前面窓を2分割、外観は金太郎(V字)塗りの2トーンカラーで塗られたことが多い「T1」の中でも、側窓が分割されて屋根肩部にも明かり取りの窓が並ぶ乗用仕様(23ウインドウなどと呼ばれるモデルが有名)がイメージされる。ちなみにあまり知られていないが、ビートルは「タイプ1」が正式な名前だ。
ID.BUZZはフロントに切れ込む2トーンのボディカラーや、ピラーをブラックアウトしないで独立させた窓、RRレイアウトをイメージさせる車体後部のインテークなどにタイプ2の面影を強く残しており、姿形はタイプ2とまったく異なっているものの、誰が見ても「フォルクスワーゲンのバンだ」と感じさせてくれる。
インテリアも外観に負けず先進的だ。天井には大型のムーンルーフを装備しており、明るい内装色、窓の大きさとも車内はとても開放的な雰囲気。長いホイールベース、短い前後オーバーハングによって最大8名が乗車出来る広い室内を実現。シートとインフォメーションディスプレイは前後にロングスライドさせることが可能だ。これにより、停車時にはゆったりとくつろげる室内空間が出現するギミックとなっている。タッチスクリーンを備えた楕円形のステアリングホイールもダッシュボード内に格納することが出来る。
ダッシュボードの中央に“鎮座”する空中浮遊するヨガのポーズ?を取る謎の小人は、デトロイト、ジュネーブの各ショーでID.BUZZが展示された際も見られた。彼の正体はドイツの民家に庭によく見られる「庭小人(ガーデン・ノーム、独語ではGartenzwerg=ガルテンツヴェルグ)」だ。
どこかしら懐かしさを感じる外観に対して、メカニズムは最先端だ。完全なEVであるID.BUZZはフロントとリアにモーターを搭載。合計出力374ps(275kw)に達する前後モーターを同時に駆動すれば4WDとしても走行出来る。バッテリーは平たく床下に置かれ、これによってフラットな床を実現した。1回の充電で最大後続距離600kmの走行を可能としている。
フォルクスワーゲンはT4、T5、T6といった商用バンとそれをベースにした乗用モデル、トゥーランなどのミニバンをラインナップに用意して来たが、それとは別にタイプ2の復活は多くのユーザーに期待されてきた。そのためか、タイプ2を現代的に復刻したコンセプトカーは過去幾度か登場し、そして残念ながらコンセプトカーのまま終わることが多かった。
ところがこのID.BUZZは、今年8月にアメリカで開催されたベプルビーチ・コンクール・デレガンスで2022年にID.BUZZコンセプトカーをベースにして「ついに」市販化することがフォルクスワーゲンによって発表されている。そのときはショーモデルよりもう少し現実的な姿となると想像されるものの、待ちこがれた「復刻タイプ2」として大いに人気を集めるに違いない。
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