創業家出身で無類のカーガイ(自動車野郎)である豊田章男氏が社長に就任して以来、東京オートサロンにも非常に大きな力を注いでいるトヨタは、2018年も“TOYOTA GAZOO Racing”の名前で大きなブースを構える。
目玉となるのが「GRスーパースポーツコンセプト」だ。
GRスーパースポーツコンセプトは、トヨタがWRC(世界ラリー選手権)とともに世界規模となるモータースポーツとして参戦するWEC(世界耐久選手権) への参戦活動が生かされたコンセプトカーである。
GRスーパースポーツコンセプトは、ズバリ「WECを走るTS050ハイブリッドのロードゴーイングカー仕様」という成り立ちで、外見はTS050ハイブリッドにフロントグリルを付け、リアウイングを外しただけという印象。
機能面は1000馬力というシステム出力を誇る2.4リッター直噴V6ターボに前後モーターを組み合わせたハイブリッドシステムをはじめ、カーボンモノコックやサスペンション形状までTS050ハイブリッドそのものだ。TS050ハイブリッドとの大きな違い1つを挙げるなら実車と一緒に展示されたカウルのないテストカーにはナビシート(助手席)が付いていた点くらいだろうか。
市販車をベースにレーシングカーを作るというのは当たり前ながら、その反対の「レーシングカー(しかも世界最高峰の格式を走る車だ)をベースに市販車を作る」というのはトヨタはもちろん、日本車にとってはじめての試み。それだけにGRスーパースポーツコンセプトの市販バージョンがどんな車になるかは非常に楽しみでもあり、興味深いところだ。
市販化される暁には、2009年に500台限定で販売されたレクサス LFAの3750万円を大きく上回る5000万円級、もしかするとそれ以上の価格が予想される。
速さや燃費だけでなく、WECのようなトップカテゴリーを走るレーシングカーの雰囲気や楽しさも存分に味わえるスーパーカーとなることを期待したい。
[Text:永田 恵一]
TS050ハイブリッドは2017年のWECを戦ったレーシングカーである。WECの参戦カテゴリーはスポーツプロトタイプカー(LMPクラス、サーキット専用のレーシングカー)とグランドツーリングカー(市販車ベースのGTカー)に分けられ、トヨタはスポーツプロトタイプカーのトップカテゴリーとなるLMP1クラスに参戦している。自動車メーカー系チームが参戦するこのLMP1クラスは自動車技術の進歩も見据えハイブリッドカーでの参戦が義務付けられており、トヨタが得意とするハイブリッド技術を鍛えるには打ってつけの舞台だ。
TS050ハイブリッドは2.4リッター直噴V6ターボ(500馬力)に前後モーター(合計500馬力)を組み合わせたハイブリッドカーで、エンジンと前後モーターを合計したフルパワーは1000馬力を誇る。
2018年は最大にして唯一のライバルだったポルシェワークスチームの撤退により孤独な戦いとなる中、タイトル獲得に加え、トヨタが1985年の初参戦以来通算20回目の挑戦しているル・マン24時間レース優勝が大きな目標となる。優勝すれば、日本車としては1991年のマツダ以来となり、期待が高まる。
TOYOTA GAZOO Racingブースには2017年に18年振りの復帰を果たしたWRC参戦車両のヤリスWRC(日本名:ヴィッツ)も展示される。ヤリスWRCは、第2戦のラリー・スウェーデンと第9戦のラリー・フィンランドで優勝を飾り、大きな話題となった。
トヨタが参戦するWRCのトップカテゴリーはここ20年ほどベースとなる市販に大幅な改造を施せるワールドラリーカー規定という車両規定になっており、パワートレーンは市販車のヤリスにはない1.6リッター直噴ターボ+4WDというものを使い、各部も市販車とは別物だ。
しかしながら競技に公道を使うラリー参戦は路面状況などの不確定な要素の多さや荒れた路面を全開で走るといった厳しさにより、実戦からの市販車への絶大なフィードバックをもたらしただけでなく、ヨーロッパでのトヨタ車のイメージ向上にも大きな貢献を果たした。
参戦二年目となる2018年は、ドライバーでは2003年にスバル インプレッサで獲得したペター・ソルベルグ選手以来、マニュファクチャラーズでは1999年のトヨタ以来となる日本車によるタイトル獲得を期待したいところだ。
[Text:永田 恵一]
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