MOTAトップ ニュース/記事 特集 東京モーターショー2017 初試乗! トヨタのJPNタクシーが、見た目以上に「未来」を感じる乗り心地だった! 試乗体験プログラムで次世代タクシーに乗ってみた【東京モーターショー2017】
タクシーはその街の顔、と言ったら言い過ぎでしょうか? その街がどこの国のどんな街で、どんなクルマが使われていて、どんな性能が求められているか。街ごとに「TAXI」は実に多彩なバリエーションを見ることができます。そしてその忙しなく走るタクシーの姿こそ、その街の風景になる。ロンドンタクシーなどそのいい例だと言えるでしょう。
そういう点では今、日本の風景が少し変革を遂げようとしています。今までは高級セダンの廉価版でタクシー専用グレードのクルマがタクシー車両に使われてきました。しかしここにきて日本のタクシー専用車両がセダンタイプのクルマからの脱却が図られようとしています。日産はタクシー専用車がセドリックではなくNV200バネットに代わり、そしてトヨタも次世代タクシー(JPN TAXI:ジャパンタクシー)を発表、早速話題になっています。
第45回東京モーターショーではこんな次世代モビリティの試乗体験プログラムも用意されています。
しかも、テストコースをぐるっと乗っておしまいではなく、モーターショー会場を中心に臨海副都心エリアに乗り場が用意されており、東京テレポート駅前、ヴィーナスフォートの専用乗り場まで「実際の移動」を体験できるのです。
モーターショーの来場者の為のプログラムなので運賃は無料。厳密には試乗というか「搭乗体験」という方が正しいかもしれません。そんな長い距離ではないのですが、トヨタのJPN タクシーに乗ってみました。
タクシーなんかなんでも一緒、と思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしそれは大きな間違いです。素人こそ、乗った時にボディのしっかり感、サスペンションのしなやかさ、シートの作りの良さなどはきっとわかることでしょう。
その点このトヨタJPN TAXIは、かなり細部に至るまで親切で、手を抜かないクルマづくり、「トヨタ自動車の良心」のようなものを存分に感じることができるクルマでした。
スライドドアから後席にアクセス。腰を下ろすとまず「肉厚なシート」を実感することになるでしょう。そしてシートベルトのバックルは照明付き。
「後席の乗員もシートベルトを!!」
イマドキのタクシーは自動音声で呼びかけますが、そもそもタクシーに乗っても、ベルト、バックルの位置さえも分かりずらいクルマは少なくありませんでした。それでは装着のしようがありません。
いざシートベルトをしたら出発進行。前席の背後の大き目の手すりは長くクラウンにも採用されてきましたね。そういういいものはしっかり残す。こんなクラウンの片鱗をちりばめられていることにもトヨタの誇りを感じたものでした。
走り始めると、ボディ剛性の高さも感じ取ることができます。大通りに出る小さな段差を超える際など顕れがちな、ほころびもなくなかなかしっかりとした印象。新車だから当然でしょうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それがなかなかそうでもないのです。特に今回スライドドアを採用、室内空間も大きく頭上高にゆとりを持たせたキャビンにしてあります。あのボディで時に「上手くしなっているなあ」と感じさせる、剛性感の高さに加え、剛性感の上質さすら感じ取ることもできたのは、期待を大きく上回っていた点でした。
あるいは「開口部が大きなボディにもかかわらず剛性感が高い」のではなく、「(開口部も大きく、重量も増える)スライドドアを採用することを念頭に入れて、努めて剛性を高くした。」ということなのかもしれません。
いずれにしてもボディのしっかりとした出来栄えにはつい嬉しくなってしまいました。
窓が大きいことにも自動車としてのまっとうなデザインを感じました。
”カッコいい”スタイリングや、高速燃費に効く空力性能のほうを優先させて、まるで”穴倉”のような小窓のクルマが少なくない昨今。そんな穴倉タクシーへうっかり乗せられてしまった時の後悔たるや。。。燃料コストが”エコ”(ノミー)だと言うのは事業者側の都合であって、後席の乗客のことよりも優先するべきこととは思えません。
タクシーという存在の公共性を考えると、JPNタクシーの大きな窓は評価に値します。またこのような窓の大きなタクシーが全国に広がることで「車窓の風景」の提供価値も上がることでしょう。街の中にこのクルマが増えていくことで変わる風景とともに、車窓から見た景色の見え方も変わり、より強く印象付けるようになれば、街の印象もより濃いものになることうけ合いです。
そしてなんといっても、ハイブリッドカーであることの説得力の高さ。
かつて6気筒エンジンを高級車に採用したように、静かで滑らかな走りを得るためにハイブリッドを採用した。環境性能だけではなく、移動空間としてのタクシーを利用する人への提供価値をあげることにも、ハイブリッドをしっかりと活用しているのです。
まさに2017年現在、”今のトヨタ”らしさがぎっしり詰まった一台。そんな風に感じました。
この試乗体験プログラム、すでに実際のタクシー会社に納車された車両とそのドライバーが対応してくださいます。そんな長い時間ではないですが、いち早くステアリングを握ったベテランのプロのドライバーの意見感想を直接伺うことができるのもこのプログラムの興味深い点でしょう。
「JPNタクシーはFFですが、これまでのクラウンセダン並みに小回りが利くのはうれしいですね。東京は狭いところも多いので助かります。FF車特有のくせもありません。また燃費は、実用燃費でざっと今までのクルマの倍走ります。JPNタクシーは導入時高い買い物になりますが、このくらい燃費がいいと、おそらく回収できるでしょうね。そして僕たちからすると、実はシートがいいのがうれしい。5時間乗っててもお尻が痛くならないので助かっています。」
ドライバーにとっての労働環境も大きく改善しているようです。
ごくごく短距離での試乗でしたが、お金も手間もかかっているのだろうなと感じさせる作りのクルマだと感じました。例えば初代エスティマとか、その他単発で終わってしまうクルマなどのなかに妙にコスト意識の希薄なモデルがトヨタには存在します。もちろんかなり酷使される環境を想定した車種である点は考慮されているとしても、そんな造り手のこだわり強く感じるクルマでした。クルマは展示されているのを見るだけではなく、乗ると発見が多いものですね。
[レポート:中込 健太郎]
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