超小型モビリティの時代がついに!? ブースを飾る超小型EVたち【東京モーターショー2019】

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一般のクルマよりもさらに小さく、エネルギーの消費も少ない超小型モビリティ。2010年には国土交通省が超小型モビリティの実証実験を開始しているが、普及しているとは決して言えない状況が続いている。2019年10月25日より一般公開されている東京モーターショー2019では、そんな超小型EVが多数出展されていた。

目次[開く][閉じる]
  1. なかなか普及が進まない超小型モビリティの普及
  2. 超小型モビリティが市民権を得る日はもうすぐ?
  3. クルマ買取のアップル、超小型モビリティの発売を開始
  4. タジマモーターは自社開発や共同開発のEVを展示
  5. 現代に蘇るイセッタ! 発売開始が待たれる「マイクロリーノ」
  6. “いざというとき浮くクルマ”がコンセプトのFOMM ONE

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なかなか普及が進まない超小型モビリティの普及

一般のクルマよりもさらに小さく、エネルギーの消費も少ない超小型モビリティ。

「カーシェアリング」「小口配送」「都市部の新しい移動手段」「交通未整備地の足」といったジャンルでの活躍が期待されており、2010年には国土交通省が超小型モビリティの実証実験を開始している。

しかし、「ずっと実証実験を繰り返している」という印象が否めなく、実際に使用しているといっても、社会の「あたりまえ」にはまだ遠く、普及しているとは決して言えない状況が続いている。

原因は路上走行するための法にあった!

この原因に、カーシェアリングという概念がなかなか浸透していないことや、超小型EVを路上で走らせるための法整備が今だに明確に決まっていないことなどがあった。

ところが、排気ガス削減対策は待った無しの状況にあり、国土交通省は超小型モビリティの普及を目指すべく全国各地で公務・業務利用、観光利用などの実証実験を拡大している。

問題となっている「超小型モビリティはどのカテゴリに入るのか」という結論は、まだ出ていない。

超小型モビリティが市民権を得る日はもうすぐ?

以前、超小型モビリティは通常の軽自動車と同じ扱いだったが、2013年に国土交通省は「超小型モビリティ認定制度」を定めた。これは、サイズは軽自動車以下、乗員は2名以内、定格出力8kW以下(125cc 以下)、高速道路を走行せず、最高速度30km/h以下であれば衝突安全性に関する基準を適用除外にするなど、一般的な軽自動車よりぐっと開発や参入をラクにする制度だった。

更なる認定制度が議論される中、トヨタが一歩前へ

しかし、普及には認定制度をさらに使いやすくする必要があるとして、全長2.5m以下、全幅1.3m以下、排気量50cc以上660cc以下、定員4名、構造上最高速度60km/h以下などの条件を満たせば型式指定を取得できるようにする、という議論がされるに至った(平成30年度の車両安全対策検討会が行なった「超小型モビリティ安全対策ワーキングにおける議題」より)。

そんな中、トヨタが市販予定する超小型EV(仮称)を発表し、今までなんとなく遠い世界の話に感じられた超小型モビリティも、一気に実用化の足音が聞こえてきそうな雰囲気になった。

クルマ買取のアップル、超小型モビリティの発売を開始

この流れを受けてか、今回の東京モーターショーでは超小型モビリティの出展が数多くみられた。

クルマ買取で知られるアップルは、新たに中国のジャイアン(JIAYUAN)社製超小型EVの独占輸入権を獲得。店舗を全国展開する強みを生かし、「イーアップル」として発売を開始した。現在は「ミニカー扱い」「原付登録」のため、2名乗車可能な車体を持ちながらも一人乗りとなっているが、アップルの担当者は「その問題も超小型EVの法整備で解決するのではないか」と語っていた。ターゲットはカーシェアではなく、ズバリオーナードライバーとのことだ。

イーアップルの特徴は装備が豊かなことで、エアコン・ヒーターがつくのはとても嬉しい。その他、オーディオ&リアビューモニター、ルームランプ、ドリンクホルダーやパノラマルーフ、4輪ディスクブレーキなどが標準で備わる。バッテリーの種類によって2種類のモデルを設定している。家庭用電源で6~8時間の充電を行えば、約80~120Km走行可能だ。

タジマモーターは自社開発や共同開発のEVを展示

「パイクスピークヒルクライム」に挑戦を続け、「モンスター田嶋」として親しまれた田嶋伸博氏の会社「タジマモーターコーポレーション」が新たに設立した「タジマEV」は、東京モーターショー2019に大規模なブースを構え数多くのEVを展示した。

タジマEVでは自社でもEVを開発を行っており、今回は4人乗りも可能な「イーランナーULP1」、デリバリー用の「イーランナーULD1」、片側3ドア6人乗りの「イーランナー GSM6」、地域交通を支える移動手段として開発された小型バス「イーランナー EMB23」を並べた。

「ULP1」「ULD1」は、ケン奥山氏こと奥山清行氏のデザインである。

今後制定が期待される超小型モビリティの条件では、乗車人員4名となることが予想されるため、「ULP1」も4人乗りになっていることが特徴だ。リアドアは逆ヒンジで観音開き状に開閉が可能となっている。一方、「GSM6」は軽自動車規格に収まるサイズながら2+2+2の6人乗りを実現。

しかもシェアタクシーなどで「隣に知らない人が来るのはいやだな」ということがないように、それぞれのシートにドアが付いているのが面白い。6人乗りのため、時速20km/h以下で走行する4人乗り以上の電気自動車「グリーンスローモビリティ」に分類される。

出光興産とのMaaS事業も

そのほか、タジマモーターコーポレーションは、出光興産と組んで次世代モビリティ・MaaSビジネスモデルの共同開発を行なっていくことも発表した。

出光興産によると、ガソリンスタンド(SS)はその存続も含め、今後地域にどのように寄与してくかを検討した結果、超小型モビリティによるカーシェアリング事業に至ったという。そこで、タジマEVが販売しているジャイアン製超小型EVを用いて、この8月から岐阜県の飛騨市と高山市で実証実験を開始しているという。

現代に蘇るイセッタ! 発売開始が待たれる「マイクロリーノ」

超小型モビリティの普及には、デザインの良さもカギになっているのではないか、と思わせるのが「マイクロリーノ」だ。

スイスのスクーター(キックボード)ブランド「マイクロスクーター」の日本法人が持ち込んだマイクロリーノの特徴は「前から乗り降りすること」。見た瞬間に、このクルマのモチーフが「イセッタだ!」と思い浮かべた人も多いと思う。イセッタとは、1950年代にイタリアのイソ社が開発したマイクロカーで、BMWがライセンス生産を行なったことでも知られている(どちらかというとBMWイセッタのほうがメジャー)。マイクロリーノはまさにイセッタのイメージを現代によみがえらせたモデルなのだ。

マイクロリーノ 日本での発売は?

定員は2名で、車体後前部には乗降用ドア、後部にはトランクにアクセスできるハッチを備える。全長は約2.4m、全幅1.5m、車重は435kgだ。バッテリー容量(8kW/hもしくは14.4kW/h)は2種類をラインナップし、最高速度は90km/hに達する。オプションでクーラーの取り付けも可能だという。ヘッドライトの後部がミラーになっているのはナイスなアイデア。

日本で発売する場合、全幅が1.3mを超えてしまうため現状での超小型モビリティの認定は難しい状態だが、この可愛いクルマが日本の道をたくさん走ることを期待したい。

“いざというとき浮くクルマ”がコンセプトのFOMM ONE

FOMMは、セブンイレブンなどで使用されている超小型EV「トヨタ COMS(コムス 開発はトヨタ車体)」を開発した鶴巻日出夫氏が起こしたベンチャー企業で、「ONE」はタイの工場で製造される超小型4人乗りEVだ。一見するとデザインに優れた小型EVという感じのONEだが、「水に浮く」という驚きの“特技”を持っている。

でも、どうやって浮くの?浮いたらどうやって推進や方向転換をするの?と疑問がたくさん出てくるかもしれない。

まず、浮くのはボディがバスタブ構造になっているため。推進と方向転換は、なんと前輪が担当する。ホイールがフィンのようになっており、車輪を回転させるとホイールが水を吸い込んで後部に吐出することで、推進力を得る。方向転換も前輪が担当するので、水上走行時の操作は、ふつうのクルマと同じようにステアリングを操作するだけで良い。

水上走行は緊急の機能なので、車外のスクリューや別機構による舵を設けなかったとのこと。発売先を想定しているアジアではまだ水害も多い。そのときクルマが浮いて水上での移動が可能なら、クルマが廃車になることもないだろう……というこのアイデアは、東日本大震災が契機になったという。

スタイリッシュなデザインで、内外装の作りも非常に良かった(さすが元トヨタ車体のエンジニア作!)ONE。現状では、超小型モビリティ認定の全長2.5mを少し超えてしまうが、

小型モビリティ普及に向けた強い意欲を感じさせるモデルだった。

[筆者:遠藤 イヅル]

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遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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