ショーに展示されるマツダのクルマは、いつも記憶に残る。黒一色で統一されたシックな空間にライトアップされた美しいクルマたちが浮き上がる…というマツダらしい展示によるものだ。そして、無論クルマ自体が美しいことが最も大きな理由であることは言うまでもない。
マツダは2012年以降、「魂動(こどう)デザイン」をテーマに、デザインをクルマの商品力や魅力にした販売戦略を展開し、市場で成長を遂げて来た。そのため、東京モーターショーなどの大きなショーでは、マツダの近未来を示すデザインスタディが数多く出展される。
今回の東京モーターショー2017では、2台のコンセプトカーが展示された。そのうちの1台が、ブースの中心部奥で美しい姿を見せていた「マツダ VISION COUPE」だ。
マツダ VISION COUPEは、マツダが目指す「エレガントで上質なスタイル」を描いた次世代デザインのビジョンモデルだ。
極めて長いノーズとなだらかに下るルーフラインからクーペであることがわかるが、VISION COUPEの特徴は、かつて同社から発売されていたロータリーエンジンを搭載したスポーツカー、RX−8と同じく4ドアであること。
マツダは「伸びやかな4ドアクーペで、クルマらしい美しさ、マシンとしての性能の高さを感じさせるシルエットを与えた」としており、VISION COUPEまさにそのイメージ通りに獰猛さを秘めた美しいクーペに仕上がっていた。そのシルエット自体の美しさには「なんてキレイなんだ」という言葉しか出ない。ためいきが出てしまうほどだ。
フロントデザインは力強く造形されていて、シンプルな美しさの中に高性能なクルマであることを示している。マツダらしさを形成する5ポイントグリルは強い逆スラントでボディに埋められ、深い彫りを持つヘッドライト周辺とともに陰影の大きな印象的なフロントマスクを作り出す。
生命感、日本の美意識を体現するマツダらしい「エレガンス」を追求した、深化した魂動デザインである、とマツダが説明するデザインの構成される要素は極めて少なく、絵で言えば「とにかく線が少ない」「引き算の美学」という削り落としたデザインの美しさを持っている。
前後フェンダーはなめらかに連続してつながり、ボディ側面の大きなえぐれとフェンダーのショルダー部分が繊細かつ大胆で大きな影を作り上げている。VISION COUPEは回転する台座に展示されているのだが、動くことによってデザインの上を光が繊細に走り、クルマの美しさを引き立たせるようだった。
今後このデザインビジョンがどのように市販車に展開されていくのかが楽しみだ。そして期待されるロータリーエンジンの復活がこのような美しいクーペに搭載されないのだろうか、など様々な「夢」も感じさせてくれる一台といえる。
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