東京モーターショー2017は11月5日(日)18時に全日程を終え閉幕した。
一般公開直後の週末が悪天候となり、例年の平日並みの来場者に留まったこともあって、会期中の総来場者数は前回よりも4万人ほど少ない77万1200人。それでも会期後半11月3日からの3連休では来場者数が10万人を越える日が続いて、多くの家族連れなどで会場は大変な賑わいを見せた。
前回の第44回モーターショーも前々回の9割程度に留まったが、その前回を下回る来場者数の週末からスタートした今回の第45回東京モーターショー2017。開幕した直後から自動車媒体、一般媒体問わず「またも前年割れの来場者数」というタイトルの記事が大量に流れた。
しかし、プレスデー2日間と、一般公開日も4日間程会場を訪れた私からすると、その報道は違和感を覚えないではいられないものだった。
確かに序盤の荒天時はかなり客足も少なく、やや寂しいという印象もあったが、それ以降天気が回復してからは会場のあちこちに長蛇の列も見られ、会場内の移動もかなり困難を極めるほどだったからだ。
ということで、会期終盤で会場を訪れた際、来場者の何人かに少し話を聞いたところ「楽しみにしていたクルマが観られてよかった」とか、「やはり昔からモーターショーは外せない。今でも二年に一度の楽しみ。最終日に何とか来ることができてよかった」など、まだまだ楽しみにしている人も多く、モビリティを楽しんでいて、社会の中で自動車が果たす役割に対して期待しているという傾向もしっかりと感じることのできた。
中には「これ以上混んでいると観るのがきつい。今回もかなり場所によってはきつかった。」という声もあった。こんな声を聞くと、今年の東京モーターショーは、むしろ前回よりは活況なのではないか、と思う一面も。
来場者の事を考えると、しっかりと見学して各ブースでの情報をしっかりキャッチできるような環境整備は不可欠であろう。その点では営業会社の成績評価のように「結果がすべて! 来場者数は前回よりも減少した、以上!」などと、全体的な数値だけで判断し、モーターショーの行く末を自分たちでミスリードするのは本末転倒。今回良かった点はまたさらに横展開・増強させるなどし、さらに盛り上げていけるような施策も考えて欲しい!
というのが、主催者に対する要望だ。
また主催者から早速発表されたところによれば、女性の来場者が増えて、来場者の男女構成比が3:1になったという。前回調査では2割に満たなかった女性比率を考えると、彼女らに東京モーターショーの開催が明確に浸透している傾向とみることが出来るのではないだろうか。
そしてこのことは、リーチの拡大以上に「一般的な存在になりつつある」ということであり、おおいに歓迎すべき指標と言わねばならない。
さらに注目すべきは、15歳~39歳までの来場者が半数強を占めているということ。こちらも高く評価すべき点だろう。
第45回東京モーターショー2017は、女性来場者と若者の来場者が顕著に増加したショーだったのだ。
また試乗体験プログラムの体験人数も延べ5000名に上ったのだという。楽しさや安全性など、最新技術を体験し、肌で感じる。「知識はウェブでもわかるけれども、その先のリアルな体験ができるかどうか」という点においても少しずつ進歩していることがうかがえる結果ではないだろうか。
「モーターショーを楽しみにしている」層にはしっかりとリーチし、それなりに収穫を持ち帰ってもらえた、というのが第45回東京モーターショー2017の感想だ。
これだけインターネットが発展している今、自動車に関しての最新情報を直接発信するリアルイベントが「モーターショー」なのだ。当然各メーカー、出展企業は、少しでも自社を、そして自社の製品や技術を一人でも多くの来場者に知ってほしい!という思いで各ブースに立ち続けたコンパニオンや、会場のスタッフたち。
プレスデーから数えると約2週間、準備期間まで含めれば数か月という単位で準備をし、日に何度もステージプログラムなども行ってきた彼らにとっても、有終の美。最後の総仕上げとなるのが最終日の夕方最後のステージだ。
このステージを楽しみにしているファンも実は少なくない。想いの先に表現がある。そして想いを込めれば込めるほど、来場者にメッセージは響き、本人たち自身も感極まるというものだろう。
最後のステージでは「私たちのブランドを愛してくれてありがとうございます」と大きな声で感謝の言葉を一人ずつ述べるブースもあれば、閉会時間が迫り、来場者を見送るように一斉に整列してお辞儀をするなど、様々な演出で各ブース毎にモーターショーを締めくくる。
始まれば、やがて終焉を迎えるのは世の常である。しかし、その諸行に期待で胸をふくらまし、終焉にまた寂しさを覚えるのは、モーターショーでの話題の中心はクルマでありつつも、それを囲んで人と人とがかかわり、響きあうからこそなのではないだろうか。世紀を超えて私たちと共に進化発展し続けている自動車をこうして眺めることができること自体感謝なくしては語れない。そしてここにかかわる人たちの想いに触れて「こうしてクルマは今まで歴史を紡いできたのだ。」と改めて実感する。
18時、会場には「蛍の光」が流れ、ほどなくして出口へ向かう来場者と、直ちにばらしの作業に入る搬出のスタッフが入りみだれた。こうして第45回東京モーターショーは幕を下ろす。
再来年の2019年、第46回東京モーターショーでは、まだ見ぬ「未来」をどのようなカタチで乗せたクルマが観られるのだろうか。気が早いが、早くも楽しみでならない。
[レポート:中込 健太郎]
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