日産 セレナのカスタムカー対決!セレナAUTECHとセレナNISMOを比較
セレナAUTECH vs セレナNISMO
セレナAUTECHを語る上で避けて通れないのが、オーテックジャパンが手掛けるセレナNISMO(ニスモ)の存在だろう。今回はセレナAUTECHと標準車、そしてセレナNISMOそれぞれの違いを徹底解剖していきたい。
セレナAUTECHとセレナNISMOは、それぞれグレードとしてはどちらもセレナの1グレードという扱いだが、標準車に対してセレナAUTECHはより上質でプレミアムかつスポーティなイメージ、セレナNISMOはよりピュアスポーツなイメージというように、明確にキャラクター分けがなされている。
AUTECHとNISMOの関係とは?
ブランド誕生の経緯や現在の関係性
そもそもAUTECHもNISMOも会社名がグレードに採用されており、AUTECHは1986年にスカイラインの父としても知られる桜井眞一郎氏が初代社長を務めた株式会社オーテックジャパンが、NISMOは1984年に日産社内のワークスチームが分社化するかたちで設立されたニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社がその名前の由来となっている。
2017年4月1日の組織変更で、オーテックジャパン内に新たに「ニスモカーズ事業部」が新設されたことで、NISMOを冠するロードカー(市販車)はオーテックジャパンが手掛け、レース活動やモータースポーツ向け車両などの事業は引き続きニッサン・モータースポーツ・インターナショナルが手掛ける形になった。
オーテックジャパンは2017年11月に、新たなサブブランドとして「AUTECH」をラインナップとして展開することを発表し、現在のようにAUTECHとNISMOの2つのブランドが共存する形となったという経緯がある。
前述のようにNISMOロードカーはオーテックジャパンのニスモカーズ事業部が手掛ける形になったため、オーテックジャパンはNISMOロードカーとAUTECHなどのカスタムカー、福祉車両や商用特装車を一手に引き受けている。
一方、アフターパーツとしてのNISMOパーツは引き続きニッサン・モータースポーツ・インターナショナルが手掛けており、サスペンションやマフラー、スポーツリセッティング用コンピュータなどがリリースされている。
セレナAUTECH・セレナNISMOを比較(内外装・装備)
一目でセレナAUTECHとわかるプレミアムなエクステリアデザイン
標準車のセレナには、スタンダードなノーマルボディとエアロパーツを纏ったハイウェイスターの2種類が用意される。セレナは5ナンバーサイズのミニバンだが、ハイウェイスターは装着されるエアロパーツによって全幅が1740mmとなるため、3ナンバー登録となっている。
ちなみにハイウェイスターも元々はオーテックジャパンが1995年にラルゴに設定したものであり、翌96年にはセレナ(初代)にも設定されていたが、あまりにも人気が出たために、標準車扱いになったという経緯がある。
セレナAUTECHのベース車はノーマルボディのセレナXとなるが(e-POWER AUTECHはe-POWERハイウェイスターがベース)、フロントバンパーはハイウェイスターと同形状のエアロバンパーが装着される。セレナAUTECHにはさらにメタル調フィニッシュのフロントプロテクターが装着されるため、より精悍なイメージが付与されている。
またAUTECH車に共通する意匠として、ドットひとつひとつを手作業でデザインしたフロントグリルが挙げられる。このドットは、同じ形のものは左右対称部にしか存在していないという。このこだわりが独特の広がり感を生み出し、一目でAUTECHと分かる存在感を放っている。
リアに回ると、こちらも専用形状のバンパーが目を引く。中でもセレナAUTECH Safety PackageとセレナAUTECH SPORTS SPECは専用マフラーとの組み合わせで、バンパーの中にマフラーの出口が組み込まれた複雑なデザインが採用されているのだ。
さらに、装着されるホイールもグレードによって15インチから17インチまで3サイズが用意されるが、その3種類すべてが専用デザインとなっていることも特筆すべき点と言えるだろう。
空力性能を考慮したエアロパーツをまとったセレナNISMO
一方のNISMOは、レースフィールドからフィードバックされたエアロダイナミクスを纏ったエアロパーツが最大の特徴だ。こちらはハイウェイスターがベースとなっているが、外観には大きく手が加えられており、一目見るだけで「スポーティさ」を感じ取れるNISMOシリーズ共通の意匠を纏っている。
見ため重視のエアロパーツではなく、実際に空気抵抗を増やすことなくダウンフォースが高まるデザインとなっているため、車両の姿勢変化が抑えられた安定した走りを実現している。
当然ダウンフォースによってタイヤの接地感も高まり、グリップ性能が向上するため、ハンドリング性能も向上。スポーティで気持ちの良い走りを実現しているのだ。
また、エアロパーツにあしらわれたレッドラインもスポーティなイメージを向上させることに一役買っており、駐車場に止まっている姿を見るだけでも走りを予感させ、ワクワクさせてくれるNISMOらしさが備わっている。
ブルーステッチで上質感を演出したセレナAUTECHの内装
セレナのインテリアは、さすが2018年上半期ミニバン販売台数No.1だけあって、多人数で乗車することが多いミニバンとして、使い勝手に優れている。
豊富なカップホルダーやUSB充電ソケット、シートアレンジの多さも魅力のひとつだろう。
内装色も標準車はブラックとフェザーグレー(ハイウェイスターはグレージュ)の明るい色が選択でき、上級グレードでは合成皮革を用いたプレミアムインテリアも選択できる。
また、オーテック扱いのメーカーオプションとして、ネオソフィールとパートナーのコンビシートとなる「防水シート」も用意。小さな子どもがいるユーザーやアウトドアレジャーに使うユーザーはもちろん、ペットの毛なども楽に掃除ができるため愛犬家などにも支持されている。
セレナAUTECHの内装はブラックを基調とした精悍なもの。シート表皮はベース車とは異なる手触りの良いクリスタルスエードを使用し、ブルーのステッチをワンポイントとして使用。さらにヘッドレストにはAUTECHの刺繍が入っている。
座面部分もダイヤモンドのような意匠のキルトパターンがあしらわれ、ドアトリムやインストパッドもスエード調となり、さりげない上質感が伝わる仕上げとなっている。
また、標準車には用意されない本革シートも一部グレードにオプション設定があり、更なる上質を求めるユーザーのニーズにも応えることができる。
NISMOらしいスポーティでアグレッシブなインテリア
スポーティなイメージを前面に打ち出すセレナNISMOは、ステアリングに施されたレッドセンターマークや、シートやステアリング、ドアトリムなどにレッドのステッチを施し、エアコン吹き出し口やメーターパネルにも赤のフィニッシャーを追加することでNISMOらしいアグレッシブな雰囲気を纏った内装となっている。
そんなセレナNISMOの内装で特筆すべきは、メーカーオプションとして設定されている専用チューニングRECARO製スポーツシート(前席)だろう。強い横Gにも対応できるように大きく張り出したバケット形状を採用しながらも、乗降性にも考慮した専用チューニングシートは、走りを忘れたくないミニバンユーザーにはマストアイテム。オプション価格は27万5400円となるが、RECAROシートが2脚付くことを考えれば破格のオプションと言えるだろう。
セレナAUTECH・セレナNISMOを比較(走行性能)
パワートレイン
標準車のセレナのパワートレインは3種類。ガソリン車とスマートシンプルハイブリッドのS-HYBRID、そしてモーターで駆動しエンジンで発電するe-POWER(イーパワー)の3種類で、e-POWER以外の一部グレードでは4WDも選択が可能となっている。
セレナAUTECHはガソリン車の設定はなく、S-HYBRIDとe-POWERの2種類。S-HYBRID車では4WDも選択可能となっている。
セレナAUTECHのラインナップの中でも、スポーティな走りと高い安定性を両立する最上級グレード「SPORTS SPEC(スポーツスペック)」に注目したい。
セレナAUTECH SPORTS SPECはS-HYBRIDの2WDの設定となるが、ベース車と同様のエンジンとモーターを搭載し、カタログスペック上の最高出力も変更はないものの、ボディ補強や専用サスペンションに加え、専用チューニングコンピューターを採用。ベース車の扱いやすさを維持しながら、スポーティな加速感やその持続性を持たせている。
その結果、発進加速や高速道路の合流、追い越し加速やコーナーの立ち上がりなど、さまざまなシーンで走らせる楽しみを感じさせてくれる仕上がりとなっている。
セレナNISMOのラインナップは、S-HYBRIDの2WDのみ。セレナNISMOも最高出力は標準車と同様となっているのだが、セレナAUTECH SPORTS SPECと同じ補強、足回り、専用チューニングコンピューターが採用されている。
装着されるタイヤの違いで、それぞれが目指す走りの方向性を演出
前述のように、セレナAUTECH SPORTS SPECとセレナNISMOの2車種は、サスペンションのセッティングや走りに繋がるボディ補強、専用パワーステアリング、専用チューニングコンピューターも共通なのである。
では、どこで走りの味に差を出しているかというと、それは装着されているタイヤだ。サイズ(205/50ZR17)は共通なのだが、セレナAUTECH SPORTS SPECがミシュラン パイロットスポーツ4を装着するのに対し、セレナNISMOはブリヂストン ポテンザ アドレナリンRE003を装着することで、絶妙な走り味の違いを演出しているのである。
プレミアムスポーティのAUTECHとピュアスポーツのNISMO
ではそれぞれどんな味付けになっているかというと、セレナAUTECH SPORTS SPECは、どちらかというとロングツーリング向けの味付けと言えるだろう。
もちろん絶対的なグリップ力の高いミシュラン パイロットスポーツ4ではあるが、ゴリゴリのスポーツタイヤというよりも、しっとりした感触が強い欧州車的なハンドリングを見せてくれるので、いいクルマに乗っているというプレミアムでスポーティな実感を得ることができる。直進安定性も高いので、家族を乗せた長距離ツーリングも難なくこなしてくれるはずだ。
一方のNISMOに装着されるブリヂストン ポテンザ アドレナリンRE003は、モータースポーツ用タイヤの開発過程から生まれたトレッドパターンを持っている。
タイヤ自体が高い剛性を持っているため背の高いミニバンでもふらつきを抑制し、NISMO専用エアロパーツが生み出すダウンフォースを相まってピュアスポーティな走りを実現するグリップ性能をもっている。
またウェット性能も高いため、路面状況を問わずスポーティな走りを楽しむことができる。
AUTECHは上質感を求める人に、NISMOはさらなるスポーティさを求める人にオススメ
セレナAUTECH、セレナNISMO共に、他の人とはひと味違うモデルを求めるユーザーにオススメしたい車種となっているが、セレナAUTECHはより上質なプレミアム感を求める人に、NISMOはよりスポーティな走りを求める人に向いていると言えそうだ。
そして間違いなく言えることは、どちらを買っても後悔することはないということだろう。
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Corporate Profile
オーテックジャパン Info
オーテックジャパンとは?
日産自動車の関連会社である株式会社オーテックジャパンは、神奈川県茅ケ崎市に本社および工場を置き、カスタムカー、福祉車両、商用特装車の開発・生産・販売を行っている。カスタムカー部門では、人気のライダーシリーズやボレロを手掛けるともに、2017年からはNISMOロードカーの企画開発も行っている。さらに2017年には、新たなサブブランドである「AUTECH」を立ち上げた。毎年秋には「AOG里帰りミーティング」と称して、全国に納車されて”嫁いで”いったオーテック車が一同に会する大規模ミーティングを開催するなど、オーナーとのコミュニケーションを大切にしている。※AOGとは、Autech Owners Groupの頭文字。
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