MOTAトップ ニュース/記事 特集 特別企画 社長に訊く~フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 代表取締役社長 庄司茂~

国沢光宏
Q
庄司さんは輸入車業界に突如現れた彗星のような存在なので、皆さんどんな人なのか気になっているようです。まずご経歴からお聞きしたいと思います。
庄司社長
普通のサラリーマンです(笑)。商社に在籍して自動車業界に関わってきました。業務内容は日本のクルマを海外で売るという仕事や、部品の調達、工場の海外進出のお手伝いまで広範にわたります。ドイツ、オーストリア、ハンガリー、アメリカ、南アフリカ、ロシア6カ国で仕事をしてきたのが珍しいかもしれません。
国沢光宏
Q
今まで仕事してきて「これは面白かった!」というのを教えてください。仕事の内容がイメージできると思います。
庄司社長
一番面白いのは現在の仕事です(笑)。その次はロシアの事業ですね。サハリンから西の端までディーラー開拓に行ったのですけれど、最初はロシア語で苦労しました。5年居たので言葉を理解出来るようになってからは、大変だけどやり甲斐がありましたね。工場も作ろうとしたんですよ。
国沢光宏
Q
ディーラーを作るより、工場を立ち上げる方がはるかに大変だと思います。この業界でも工場を立ち上げた人はいないでしょう。
庄司社長
日本の自動車メーカーの工場をロシアで立ち上げるため、そこの設立準備会社の代表になりました。複雑な交渉が山ほどあって毎日戦いみたいなものです。政府や当局との折衝を2年やるなどずいぶん進んでいたのですけれど、そのプロジェクトはリーマンショックで中止になってしまいました。
国沢光宏
Q
庄司さんは工場(生産技術)も詳しいんでしょうか? 専門知識が必要だと思います。
庄司社長
それはもう大変でした。本職の人と比べれば専門知識も少ないのに、部品調達の根回しまでやらなくちゃならない。しかもロシアですから普通の国の常識と全く違うようなことも言ってきます。特に役人や地元の顔役との折衝が凄く難しい。最終的には仲良くなりましたけど(笑)
国沢光宏
Q
ロシア人はフトコロに入れば素晴らしい人たちだと聞きます。それには胆力が必要でしょう。奥行きの深いことをやってたんですね。
庄司社長
その前に別のメーカーの購買部門を担当したことがあるのも良かったかもしれません。自動車部品の3次下請けくらいまで入っていくのですけれど、部品の”源流”は内職だったりします。日本の内職は優秀なんですね! レベルが高い。これこそ日本の自動車産業の凄さだと思いました。来週は倍作ってくれと言っても対応出来たりします!
国沢光宏
Q
話を伺っていると、なるほどVWの採用担当が突如、日本の代表にしたのが理解出来るような気がします。もう二度とやりたくないことってありますか?
庄司社長
それはもう工場の建設を取りやめるという話をしなければならかったことです。ほぼ全てが決まっていたんですから。あんなイヤなことは二度としたくない。皆さん一生懸命だったし、生産開始を楽しみにしてましたから。話を切り出した時の落胆ぶりときたら、筆舌に尽くしがたかったです。
国沢光宏
Q
厳しいでしょうね。特にロシアだと身体の危険もありそうです。
庄司社長
当然あります! ロシアに限らず欧米でビジネスをする場合、こちらの都合で契約を止めるときが最も厳しいです。そういうときのために、普段から人間として深く付き合わなければなりません。最終的には納得していただけました。
国沢光宏
Q
今まで聞いてきた話からすれば、VWグループジャパンの代表は精神的にも楽でしょうか?
庄司社長
そんなことはありません! 今までは外国人との付き合いでしたから難しいことや微妙なことになると言葉が分からないフリも出来ました(笑)。日本でビジネスをすると、そういった手は一切使えない。真剣勝負です。別の意味で難しいです。命の心配はないですけど(笑)

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