軽トラリフトアップスタイルを確立させたCARSTYLEがランドクルーザーGRスポーツ風で大迫力の軽トラ「AGETORA CRUSER」に行き着くまで/CARSTYLE Vol.1
いま注目の軽トラリフトアップスタイルのブームを作り出したCARSTYLE
キャンプやアウトドアスポーツの盛り上がりにより、いま注目を集めているのが軽トラ。仕事として使う人だけではなく、オシャレに敏感な若者などさまざまなターゲットから熱い視線が注がれています。中でもゴツゴツとした大径ブロックタイヤを履いてリフトアップした軽トラは、今人気のスタイルです。
この軽トラリフトアップを作り出したのは京都にある「CARSTYLE(カースタイル)」だったことは意外と知られていません。2011年に初めて軽トラリフトアップスタイルの「AGETORA」を作り、翌2012年には雑誌に紹介されるなどメディアにも露出、そうして軽トラリフトアップスタイルのブームを広めていきました。
このように、まだ一般的ではなかった軽トラリフトアップスタイルを確立させ、カスタムシーンに新たな風を吹き込んできたCARSTYLEとは、いったいどんなメーカーなのでしょうか。これまでの足跡をたどりつつ、CARSTYLEについて知っていただきながら、最新の軽トラカスタム「AGETORA CRUSER(アゲトラ・クルーザー)」をご紹介しましょう。
「AGETORA」が話題になり、CARSTYLEの認知が広がった
始まりは2010年。それまで欧州車や高級セダンのカスタムをしていた岡田代表のもとに「今売っているパーツでは、どうやっても格好良くならない。どうにかしてほしい」と、JB23ジムニーに乗る仲間が訪ねてきたことがきっかけでした。
「当時、ジムニー用のパーツはオフロードを走るためで飾り気のないモノばかり。スタイリッシュなイメージはどこにもありませんでした。ならば、新しいスタイルを作ろうと考えました。そこからジムニーをはじめとした四駆を知ることから始めたんです」と岡田代表。
そもそもジムニーでゴツゴツとした岩場や、大きなギャップを乗り越えつつ、転びにくくするには、大径サイズのブロックタイヤは必須。それを履くためのリフトアップも欠かせません。同時にハンドルを切ると、厚みのあるバンパーではタイヤと干渉してしまう。それを防ぐには、バンパーをショートタイプにするのが定石です。そうやって作られてきたのは、オフロードタイプの武骨過ぎるバンパーでした。
それに対してCARSTYLEが作りだしたのが、2連フォグやダクトを取り込んだフロントバンパーでした。ショートタイプながらスタイリッシュなバックショットに仕上げるリアバンパーや、レーシングカーに使われるブリスターフェンダー(タイヤなどの幅に合わせて膨らんだようになっているもの)が加わり、屈強さばかりが目立っていたジムニーシーンに一石を投じます。リフトアップパーツもオリジナルで製作したとのこと。
「発売した当初は、ほとんど見向きもされませんでした。時代の先を行きすぎたんでしょうね。ただ、その流れが大きく変わったのが、軽トラリフトアップスタイルのAGETORAを出してから。そもそもジムニーのイベントで使う荷物を運ぶための軽トラをリフトアップしたのが始まりでした。そのAGETORAが徐々に話題となるのと同時に、CARSTYLEの名が全国的に広まり、ジムニー用のパーツが売れ出したんです」
リフトアップした50プリウスをアメリカのSEMAショーに出展!
CARSTYLEの快進撃が決定的になったのが、2016年に製作したリフトアップ仕様の50プリウス(2015年に発売された4代目のプリウス)を発表したことでした。JB23ジムニーやAGETORAに加え、トヨタ FJクルーザーやジープ ラングラーなどラインアップも増やしたこともあり、CARSTYLEの知名度は確実に高まっていましたが、アメリカで開催されている世界最大級のアフターパーツトレードショー「SEMAショー」に、50プリウスを出展したことで、世界にその存在感を知らしめます。
「世界で注目を集めたいと思えば、SEMAショーしかないと考えました。そこで、左ハンドルの50プリウスを現地で手に入れて、4インチリフトアップして展示しました。すると、USトヨタの方から”You are Crazy!!”と喜んでくれたんです。これは自分にとって最高の褒め言葉でした。他にはないことをやっていることを認められたんですから」
翌年の1月、リフトアップした50プリウスは日本に戻り、今度は東京オートサロン2017に出展を果たす。当時、50プリウスに20インチホイールを履かせ、ローダウンしたエアロカーが数多く並ぶなか、CARSTYLEのリフトアップした50プリウスに多くの人が集まりました。
「トヨタ車体の方からも『こんな50プリウスは見たことない。面白い!』とお褒めの言葉をいただきました。いま考えたら、トヨタがCH-Rを発表しようという直前のタイミング。トヨタが新たにSUVを強く打ち出そうとしているところに、リフトアップした50プリウスが目に付いたんでしょうね」
リフトアップにはオリジナル車高調に加え、ポジティブキャンバー(逆ハの字)にならないようなストラット位置など、ジムニーやAGETORAで培ったノウハウが各所に活かされたのは言うまでもありません。CARSTYLEの50プリウスは、東京オートサロン2017のECOカー部門で金賞を獲得。SEMAショーと東京オートサロンで、CARSTYLEの知名度は確実に高まっていったのです。
2020年には74ジムニー・シエラをSEMAショーに持ち込む!
CARSTYLEの快進撃はまだまだ続きます。2020年には、アメリカでは発売されていないJB74ジムニーシエラをひっさげて、再度SEMAショーに出展を果たします。それまで北米で発売されたジムニーは、1985年登場のSAMURAI(JA51ベース)。ジムニーより一回り大きな10cm広げたボディに、1300ccエンジンを搭載したオープンボディのソフトトップ構造で、西海岸ではビーチカーとして身近な存在でした。
「74ジムニーをSEMAショーに持ち込んだところ、“New Japanese Samurai”と現地の人たちに喜んでもらえました。“現行ジムニーがアメリカで発売されたとしたら……”がコンセプト。実はこのジムニーはリフトアップしていないんです。オフロードだけでなく、街乗りだけでもない。その中間を行くならば、純正車高がいい。厳しくなった車検を気にすることなく、リフトアップしたようなフォルムに仕立てたい。それを、”ゼロスタイル”とネーミングしました」
ポイントとなるのが、タイヤとフェンダーとのクリアランス。片側90mmワイド化したブリスターフェンダーは、アーチを約20mm上げているのに加え、フェンダー形状により車高が上がって見えます。そこに大径タイヤ(225/75−16)を装着し、密度感のある足元に仕立てることで、さらにリフトアップ感を高めています。タイヤ外径が大きくなったことで、2インチほど車高は上がっていますが、足回りは純正車高のまま。もちろん、オリジナルの足回りを取り付けているため、純正車高のままでも走行性や乗り心地を高い次元で両立しています。
フロントバンパーは、大径タイヤとの干渉を防ぐために、ショートタイプを採用。両サイドに厚みを抑えながら、純正フォグと2LEDを両サイドに、メッシュ張りしたダクトをセンターに配置し、オフロード走行性とスタイリッシュなビジュアルを融合。真正面から見ると、タイヤのトレッドパターンが見えて、ワイルドな走りを予感させます。
AGETORAの集大成として登場した最新モデル、それが「AGETORA CRUSER」
そんなCARSTYLEが2023年に送り出すのが、最新モデルのダイハツ ハイゼットトラックがベース「AGETORA CRUSER」です。
「AGETORAを10年やってきた集大成が、今回打ち出す『AGETORA CRUSER』です。フェイスはランドクルーザーGRスポーツをモチーフにしたハニカム風グリルに、両サイドのフィン形状ダクトを取り込みました。ブリスター風オーバーフェンダーは片側9mmワイドの車検対応モデル。トーヨー・オープンカントリーR/T(165/80−14)と合わせ、2インチのリフトアップをしています」
ボディキットに加えて、荷台に装着したラック「ラックボックスタワーバー」にも注目。ロールバーの雰囲気を取り込んだデザインが印象的で、ライトをオプションで取り付ければ、さらにワイルド感を高められます。
「ラックスボックスタワーバー」にはアルミボックスを積み込めるのも特徴。キーロックを取り付ければ、遊び道具や大切な荷物を置いておけます。さらに荷台の横には「サイドユーティリティキャビネット」を装着。水を入れたタンクを積み込めるもので、ビジュアルと実用性を兼ね備えたアイテムとして、注目されること間違いありません。
東京オートサロン2023では「フューエルタンクガード」「リアバンパー」「リアバンパーガード」などを取り付けたフル装備のハイゼット・トラックを展示。多くの人が足を止め、カッコよく仕上がったハイゼットを興味深そうに眺めていました。
2023年のCARSTYLEの視線は世界に向いている!
ある日、映画『ワイルドスピード』で、ハン役をしていたサン・カンさんが、突然CARSTYLEを訪ねてきたとのこと。
「カーカルチャー好きで知られる彼は、『AGETORAを作ったのは君だろう? ホンモノを作った君に会いたくて、京都まで来ました』と言ってくれました。さっそく、製作したばかりのAGETORA・クルーザーを実際に乗ってもらい、喜んでもらいました。カンさんとの出会いをきっかけに、2023年は次のステージに向かいます。ご期待ください」
AGETORAをつくったCARSTYLEの岡田代表。2023年もその動向に目が離せそうもない!
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- 筆者 岡本 晃
- 元自動車雑誌編集者/編集長。現在は「オフィス・アヘッド」という屋号で、ライター/編集者として活躍している。自動車雑誌、カスタム系雑誌への寄稿が多く、関西エリアを拠点に活動中。ジャンルを問わず、面白いモノ・コトを掘り起こして執筆することに力を注いでいる。
Brand Info - CARSTYLE(カースタイル)
京都にある「CARSTYLE」は、軽トラをリフトアップした“AGETORA”をはじめ、ジムニー、FJクルーザーなどのエクステリアやインテリア、サスペンションなどの展開・販売を行う。アメリカのSEMAショーや東京オートサロンなど、様々なイベントに出展をしながら、挑戦的コンセプトカーを発表している新進気鋭のカスタムメーカー。