ボルボはなぜシェア7割の人気ディーゼルを廃止し電動化にシフトするのか
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:MOTA編集部/ボルボ・カー・ジャパン
2020年8月25日、ボルボ・カー・ジャパンは大胆な戦略に打って出た。2020年中に全ての市販モデルを電動化すると宣言したのだ。ガソリン・ディーゼル(内燃機関)のみのモデルは廃止され、プラグインハイブリッド車などへ一斉置き換えされる。
ディーゼル廃止!? 人気のXC60ほかボルボのSUVモデルを画像で見てみる
人気SUVのXC60では実に販売の7割を占めていたディーゼルを止める理由とは。
2017年には本国で全モデルの電動化を宣言していたボルボ
時はさかのぼって2017年。スウェーデンのボルボ・カーズCEOが「世界に先駆け、ボルボは全モデルを電動化する」と宣言し注目を集めた。
当時の一部報道では「電動化=EV(電気自動車)シフト」と誤解した記述も見られたが、意図としては本国で発売される全てのボルボ車には2019年以降電気モーターを搭載し、BEV(バッテリーEV)か、PHEV(プラグインハイブリッド)、HEV(ハイブリッド)のいずれかが必ず選択されるというのが正解。つまり、従来通りの内燃機関(ガソリンもしくはディーゼルエンジン)単体で動くモデルは2019年以降なくなる、ということだ。
本国同様に日本でも2020年中の全車電動化を実現へ
そして2020年8月、日本においてもいよいよこの流れがやってきた。電動化シフトの「第一弾」として、2020年中にボルボが日本で販売する全てのガソリンエンジン車を48Vハイブリッドもしくはプラグインハイブリッドへと置き換えると発表したのだ。
まず今回、コンパクトSUV「XC40」において、従来のT5・T4ガソリンエンジンを48VハイブリッドのB5・B4エンジンに変更するとともに、プラグインハイブリッドの「Recharge Plug-in hybrid T5」を新たに導入した。
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欧州の輸入車の中でも特にセールス好調なディーゼル
今回の発表で同時に行われたのは、ディーゼルエンジン車の廃止という重要な決断だった。
ディーゼルエンジンはパワフルさと低燃費を兼ね備えるパワートレインで、車体の大きなSUVモデルとも相性が良い。実際ボルボの主力SUVで、2019年には国内で年間3172台を販売した「XC60」では、7割のユーザーがディーゼルを選択しているほど人気も集めている。
他のドイツやフランス、イギリス等の輸入車メーカーも同様の傾向で、SUVモデルにはディーゼルをラインナップするのが定番となっている。好調なセールスを考えれば、ディーゼルを残すという選択肢もあったはずだ。しかしボルボの回答は明確だった。
ボルボがディーゼルの電動化を実施しない理由は明確だった
スウェーデン・イエテボリに拠点を持つボルボ・カーズは、企業目標として「Freedom to Move(モビリティの自由)」を掲げている。それも、持続可能かつ安全なモビリティを提供したいという明確な目標だ。
そのための戦略も非常に明確で、例えばボルボでは、2040年までにクライメイトニュートラルを実現すると宣言している。クルマのみならず、工場や企業の取り組みなど全ての面で、環境負荷を与えないカーボンフリー企業を実現させるという長期ビジョンだ。
同様の目標を掲げる企業はもちろん他にもあるが、SDGs(持続可能な開発目標)の国際ランキングで常に上位に位置する環境大国スウェーデンのボルボは、やはり徹底している。冒頭の電動化シフト宣言もここにつながる。
機構が複雑、かつ補助装置を必要とするディーゼルの電動化は「なし」
ススや黒煙をまき散らす過去のイメージとは異なり、近年のディーゼルは環境負荷を低減させる様々な技術が開発され“クリーンディーゼル”とまで呼ばれるようになった。
しかしその分複雑な機構と補助装置がつき、重量もかさむのも事実。ここへさらにバッテリーやモーターを追加し、ハイブリッドやプラグインハイブリッドへ発展させるという考え方は、いくらセールスが好調だとしても、ボルボ的には「なし」ということなのだ。
欧州では一定の評価を受けた電動化シフト、セールス好調な日本ではどうなる!?
イギリスの市場調査会社IHSのデータによると、欧州におけるボルボは2020年上半期のプレミアムブランド電動化で首位。中でもPHEVとEVの「Recharge」モデルが欧州のボルボ全体のほぼ4分の1を占めているという。ボルボの電動化シフト戦略は、欧州市場でも一定の支持を集めていることがわかる。
2019年は近年で最高となる18,564台のセールスを記録し、売れ行きも絶好調な日本のボルボ。果たして日本での電動化シフト宣言はどうセールスに影響を与えていくのだろうか。引き続き注目していきたい。
[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)/撮影:MOTA編集部/ボルボ・カー・ジャパン]
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