コシヒカリの産地として有名な新潟県南魚沼市にある「ryugon」は、食や建物などを通して雪国ならではの暮らし文化が体感できる古民家ホテルだ。2019年に将棋の竜王戦の舞台でもあった名宿「龍言」をリニューアル。約1500坪の敷地内にある建物の大半は、約200年前の庄屋や豪農の館を移築したものである。雪国の知恵を生かしながらモダンに蘇った館内に一歩踏み入れたなら、まるで豪農に招かれたかのような気分になってしまうだろう。
目次
異日常体験長屋門の先からは “異日常”の時間が始まる
外と中の世界をまるで結界のように仕切る長屋門をくぐり、敷地内に足を踏み入れたなら、雪国ならではの建築様式、中門造(ちゅうもんづくり)の荘厳な建物が現れる。
入口脇の土間に吊り下げられた稲藁や鮭、天日干しにした野菜や梅など、雪国に古くから伝わる素朴な営みに、ともすれば別の時代、文化圏にでもやってきたような気分になるだろう。そう、門から一歩入った瞬間から、すでに連綿とこの地で紡がれてきた雪国の日常、ゲストにとっての“異日常”の時間に切り替わるのだ。
国の登録有形文化財に指定されている母屋でまず目を引くのは、真っ赤な楕円形のソファだ。“魔除け”や“生命力”などを意味する緋毛氈(ひもうせん)の緋色を配したソファに腰掛け、ウエルカムドリンクで一息するひととき。ryugonでの滞在が特別なものになるであろう期待に、胸が高鳴る。
部屋日本家屋ならではのゆったりとした空間が心地いい
客室のカテゴリーは大きく分けて2つある。母屋と廊下で結ばれた離れにあるモダンな「Villa Suite」と、母屋にある幕末時代の庄屋の館「Classic」。どちらも和風建築をリノベーションしたラグジュアリーな空間だ。また、「Villa Suite」と「Classic」の一部客室についている露天風呂は、六日町温泉の源泉を引いている。
のびのびと誰の目も気にせずに過ごしたいなら、プライベートな空間が楽しめる「Villa Suite」がおすすめだ。Bluetooth対応のBOSEスピーカーや手挽きのコーヒーミルなど、普段よりもゆっくりと、そして快適に過ごすためのアイテムが揃っている。数日間部屋に籠ったとしても全く飽きないだろう。丸みのあるファニチャーは、岡山県西粟倉村の「ようび」が手掛けたryugonオリジナルライン「snow cover」。職人が無垢の板を削り出して作った作品は、温かみのある肌触り。いつまでもそこにいたくなるような心地良さで、疲れた旅人の心身を癒してくれる。
料理「雪国ガストロノミー」で味わう、豪雪地帯の贈り物
南魚沼は、雪の恩恵を受けた食材の宝庫である。その筆頭格が魚沼産コシヒカリ。雪解け水の養分をたっぷりと含んだ土の恵みが、最上級のお米を生み出している。精米したての塩沢地区限定一等米を、夜は土鍋、朝は羽釜で食味を変えて提供しており、それらを享受する喜びは産地の宿に泊まるゲストの特権だ。
長い冬の間にじっくりと醸される麹や味噌などの発酵文化、雪下人参や乾燥野菜などの貯蔵・保存文化が成熟している南魚沼の宿から生まれた「雪国ガストロノミー」は、普段よりもゆっくりと食事の時間を味わうのにふさわしい料理だ。近隣の山で採れる山菜やきのこをふんだんに使った精進料理、ダイニング中央で行われる炭火の立焼は、地元の銘酒「八海山」や「鶴齢」との相性も抜群だ。
ボリュームたっぷりのディナーコースだが、翌朝の朝食も忘れずに。禅寺にゆかりのあるryugonならではの具沢山のけんちん汁は、全身に染み渡るうまさでさらにご飯が進んでしまう。
アクティビティ四季折々に雪国を楽しむ、充実のアクティビティ
春の芽吹きの季節は山菜採りや山登りを楽しみ、夏は風を感じながら電動自転車でサイクリングして清らかな水の流れに親しむ。収穫の秋は黄金色の田園地帯でランチを楽しみ、時にはきのこ狩りへ。冬はスノーシューを履いて誰も足跡をつけていない真白な雪の上を歩く。ryugonには、雪国の自然や文化を体感するアクティビティが豊富に用意されている。
中でも、通年の予約制で午前中に行われている「土間クッキングクラス」は、この地でしかできない体験だ。地域のお母さんと一緒にかまどでご飯を炊きながら、きのこ汁や地域に伝わる郷土料理を作る。土間に並べられた梅酒や乾燥野菜などの保存食の作り方を聞きながら料理をいただく時間は、どこか懐かしさを感じさせ、童心に返る。
「宿は地域のショールームである」という代表の井口智裕氏の言葉を一番体現できるのは、四季を通したエクスカーション(体験もの)の豊富さにあるのではないだろうか。
共有空間朝から夜まで寛げる 多彩なコモンスペース
コモンスペースの多さもryugonの特徴だ。ロビーから館内の奥にある六日町温泉の源泉を引いた大浴場、裏山の上のテラスまで、広い敷地内はお屋敷探検をするかのような楽しさがある。
まずはレセプションそば、象徴的な白い囲炉裏と雪にちなんだ蔵書の並ぶライブラリーのあるロビーでは、コーヒーやジュースなどのドリンク類と軽食のサービスがあり、日本庭園を望むラウンジまで持って行くことが可能だ。庭園の緑や雪を見ながら、かまくらのようなソファにすっぽりと包まれたなら、普段とは少し異なる時間の流れを感じられるだろう。
アフタヌーンティーが人気のryugon cafeでのひとときもいい。カウンターに座って外を眺めると、目に入るのは母屋。どこか時間旅行をしているような気分になる場所である。夕食後は座敷で映画鑑賞し、バーカウンターで地酒やクラフトビール、自家製果実酒のカクテルに杯を傾ける。古民家に息づく“時間の襞(ひだ)”は、極上の異日常を体感させてくれる。
ryugon最寄りの関越自動車道六日町ICまで、東京からクルマで約2時間。あっという間の異日常への旅では、豪雪地帯で冬の間に紡がれてきたゆっくりとした時の流れに身を任せてみるといい。ryugonは、長期滞在のワーケーションにも対応。地域に伝わる生活の知恵や文化を未来へと継承する雪国の宿に滞在し、自然や文化にインスピレーションを受ける旅は、思い出深いものとなるはずだ。
キーパーソン
家業である旅館を引継ぎ、2005年に「越後湯澤 HATAGO井仙」として第二創業。「宿は地域のショールーム」との思いを持ったユニークな経営スタイルが多くの反響を呼ぶ。2008年、周辺7市町村で構成される一般社団法人「雪国観光圏」をプランナーとして立ち上げ、2011年には代表理事に就任。2018年、第4回ジャパンツーリズムアワードの大賞を受賞し、日本のDMO(観光地域づくり法人)の草分け的存在として注目を浴びる。旅館経営者としての経験と地域づくりの視点から、宿と地域が共生することで生まれる新しいツーリズムの世界を「旅館3.0」と命名。その思想を具現化するために「温泉御宿 龍言」の経営を引継ぎ、2019年に「ryugon」を誕生させる。
「『古松般若断真如幽鳥弄』。これはryugonの本館に創業当時より飾られた襖の一文です。ここには『心静かに自然と向き合うことで、古い松や微かな鳥の鳴き声が世の真理を教えてくれる』という禅の言葉が書かれています。すべてが予定された日常の日々とは異なり、旅先には予定されていない未知との出会いが溢れています。その土地で出会う食文化や暮らしの風景、また異なる文化から発想された新たな感性など、普段とは違った時間の流れの中に身を委ねることで、旅する人それぞれに新たな気づきを与えてくれます。ryugonでは、お客様一人ひとりが、それぞれの感性のおもむくまま、自分の心と向き合う時を大切にしたいと考えています」
お知らせ
- 衛生管理(新型コロナウイルス感染予防対策)について
- 新型コロナウイルス感染(COVID-19)の拡大防止と、お客様に安心してご宿泊頂けますように、
以下の対策を実施しております。
・ご来館者様へのアルコール消毒。
・館内の清掃時の換気、ドアノブ、トイレなど、各備品のアルコール消毒。
・パブリックスペースの定期的な消毒と換気を実施し、大浴場の利用人数制限を実施。
・従業員の出勤時の検温、定期的な消毒、手洗い、うがいを実施。また、勤務中のマスク着用を義務付け。
・玄関に専用の手洗器の設置
・タブレットによる非接触型による館内説明
・抗ウィルスのガラスコーティングを全館に実施
・サクラクオリティーによる定期的な感染症予防マニュアルの見直し
などの対策を行っております。
また全館平屋建ての広い敷地の中で比較的広めのパブリックスペースを用意しておりますので、
お客様同士が介在する場面も少なくなっております。 - 更新日:2021年01月26日