北に八ヶ岳、南には富士山がそびえる甲府盆地。富士川の源流・笛吹川のほとりにある石和(いさわ)温泉に佇むのが「銘石の宿かげつ」だ。6,000坪という敷地には、数えきれないほどの巨石・奇石、20もの滝が彩る日本庭園。そしてそれを囲むように、数寄屋造りの5つの建物が連なる。宿の玄関をくぐると、静寂とくつろぎに包まれるのがわかる。その瞬間、麗しき石庭が常に寄り添い、美食と名湯に癒やされる滞在が幕を開けるのだ。
目次
庭園 海外専門誌も太鼓判 数々の銘石が演出する本格日本庭園
宿の象徴的な存在が、広大な敷地に広がる日本庭園だ。「伊予の青石」、大分の「赤鎧石」といった巨石・奇石がそこここにそびえ立ち、清らかな池には約8,000匹の鯉が雅やかに泳ぐ。神秘さえ感じるその光景を前にすると、まるで異世界に足を踏み入れたかのような錯覚に陥るだろう。アメリカの専門誌”The Journal of Japanese Gardening”の「しおさいプロジェクト 日本庭園全国ランキング」には、2009年から毎年選出。ランクインできるのは、旧邸宅や美術館など全国1,000以上の施設から50カ所のみだ。
開業当時の1963年、石和は温泉が湧出したばかりで、あたりは一面ぶどう畑だったという。「『石和』の地名にちなんだ石庭をつくって、お客さまに楽しんでいただきたい」。そう考えた先代の横森巌氏(現会長)が自ら全国を駆け巡り、美しい石を買い入れて造園・作庭を重ね、今日のような姿になった。チェックインしたらまず散策して、そのスケールを感じてほしい。
客室 純和風・数寄屋造りの36室 ゆとりの空間でほっと安らげる
かげつには、「東殿」「中殿」「西殿」、それに「南殿」「奥の殿」を加えた2階建ての5つの棟に、合わせて36の客室がある。種類は大きく分けて、一間客室、次の間付き客室、露天風呂付き客室の3つ。ベッドが入った和洋室タイプも選択可能だ。
いずれも純和風の数寄屋造り。部屋に足を踏み入れると、い草の香りに包まれてほっと心が安らぐ。応接間や小上がり、洗面台やトイレに至るまで、ゆとりのある設計になっているため、どの客室も広くて開放感がある。
やはりおすすめしたいのは、7室ある露天風呂付き客室だ。4部屋には広々とした大理石の浴槽、そして2021年秋にリニューアルされた3室には信楽焼の湯船が。庭園に臨む露天風呂で、プライベートな湯浴みのひとときを心ゆくまで楽しもう。
客室からの風景 清流に舞う鯉を愛でる 全客室から望める石庭の情景
すべての客室は、石庭に面して配置されている。椅子に座って窓に目をやると、絵画と見まがうような庭園の壮麗な景色が映し出される。窓を開けて耳をすませば、石を打つ滝の音色が心地よい。
ふと池に視線を落とすと、その透明度の高さにハッとする。園内の水は常に淀みなく流れているから、この清らかさが保たれているのだ。その中をゆったりと舞い踊るのが、光沢のある黄金色の体躯を持つ「山吹」、白・赤・黒に彩られた「松之助三色」など、鮮やかな錦鯉たち。流れに手が届きそうな1階客室の縁側からは、エサをやることもできる。「当館の鯉は、錦鯉発祥の新潟・旧山古志村出身の養殖家にご協力いただいて飼育しています。その優美な姿は、私たちに癒やしを与えてくれますね」とスタッフは話す。
石庭と清流、そして錦鯉が織りなすこの情景に魅せられて、かげつを定宿としているリピーターも多いのだとか。ここでしか味わえない、客室での優雅なひとときをぜひ堪能してほしい。
料理 やわらかな甲州牛は溶岩焼で。 四季折々の山梨の食に触れる
食事処「桃源亭」では、旬の食材をふんだんに使い、四季の移ろいを大切に仕上げた会席料理を堪能できる。北杜市武川(むかわ)地区で作られる甘みの強い「武川米コシヒカリ」をはじめ、山梨県内の農畜産物も使用。中でも厳しい基準をクリアした「甲州牛」は、かげつの名物とも言える逸品だ。天然の溶岩プレートで焼いた選りすぐりの肉は、やわらかくて旨みたっぷり。思わず笑みがこぼれてしまう。
山梨と言えば「ほうとう」が思い浮かぶが、あえて会席には入れていないという。「ほうとうは、お昼に召し上がってくる方がほとんど。せっかくなら、まだ出会っていない山梨のおいしいものに触れていただきたいんです」とスタッフ。「甲斐八珍果」と称される果物の数々、富士川町の郷土食「福箕汁(ふくみじる)」など、季節それぞれの「山梨の食」を発見しよう。
温泉 なめらかな湯と銘石に包まれて 心身が解きほぐされる
木々と草花、銘石と清流が競演する庭園に、自分の身をすっかり委ねて温泉に浸かる―。かげつを訪れた人だけが体験できる、特別な時間だ。大浴場にある露天岩風呂では、石庭の自然と一体化したような不思議な感覚の中で、ゆったりと湯浴みができる。1962年、自然湧出によって開湯した石和温泉は、無色透明でなめらかな湯ざわり。泉質はアルカリ性単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)で、肌への負担が少なく、何度でも楽しめる。
もちろん内風呂の浴槽のそばにも、存在感のある巨石がそびえる。石の存在があるからか、湯船の中では時がゆっくり流れるように感じられる。日常で張り詰めていた心もまた、じんわりと解きほぐされていくだろう。
かげつで感じたのは、訪れた人の心に残る旅を演出しようという真摯な思いだ。これだけの敷地があれば、庭園を削って、建物を高層にして、たくさんの部屋をつくることもできたはずだ。しかし、それを絶対にしないのが、かげつの哲学。「お客さまに、他ではできない体験をしてほしい」。その誠実な思いが底流にあるからこそ、どんなに大きい石も運び、広大な庭園を丁寧に手入れする。部屋の設えや料理のきめ細やかさも、見えなくなるまでゲストに手をふるスタッフの姿も、それを物語っている。この宿には確かに、おもてなしの本質がある。
キーパーソン


山梨県出身。1970年、先代社長の横森巌会長と結婚し入社。お客さまへのおもてなしのあり方を自らに問いながら、女将として現場をまとめてきた。現在、代表取締役。
「私たちは、お客様にゆっくりお過ごしいただくために、『さりげないおもてなし』『過度にならないおもてなし』を心掛けております。先代が造った庭園や客室で、お客様にゆったり、のんびり、心身共に癒されていただき、ご満足いただける宿を目指し、日々努力を重ねてまいります」
お知らせ
衛生管理(新型コロナウイルス感染予防対策)について
【銘石の宿かげつより衛生管理について】
当館では、今般の新型コロナウイルスによる感染症への対策の一環として、館内の衛生強化に努めております。また、お客様の健康と安全ならびに公衆衛生を考慮した取り組みを実施致しております。
山梨県のコロナウイルス感染防止の認証制度「やまなしグリーン・ゾーン認証」も取得しております。取組みの詳細につきましては下記URLをご参照下さい。
※今後の状況により内容を随時更新して参ります。
https://www.isawa-kagetsu.com/fight-covid-19/
更新日:2021年11月15日