京都、東山。南禅寺や平安神宮、哲学の道、京都市美術館など、歴史と文化が息づく静かな住宅街だ。1,000年以上も昔から伝統を紡ぎ、現代の私たちに大切なバトンを繋いできた。そんな東山に、築100年の邸宅がある。天皇の側近であった公家、山科家だ。当時の貴重な遺産とともに、宮廷文化に触れて泊まることができる「山科伯爵邸 源鳳院(げんほういん)」での雅なひとときは、少しだけ時計の進度が遅くなったかのような錯覚を起こす。
目次
文化体験宿と宮廷文化を融合させ 伝統を未来へつなげる
1920年、山科言綏(ときまさ)伯爵の屋敷として創られた源鳳院は、2020年に築100年を迎えた。それを記念し、2018年から宮中文化を積極的に発信してきている。山科家は代々、十二単に代表される「装束」を家職として守り続けてきたという。
源鳳院では、さまざまな講演会やイベントが催されている。「江戸時代の山科家と有職織物」など歴史を紐解くものや、「蹴鞠や御能」といった伝統芸能、七夕など宮廷行事、祇園祭にいたるまで、取り上げるテーマは多岐にわたる。京都で根付き、宮中で大切にされてきたしきたりやならわしを、あらゆる角度から知ることができる貴重な機会となっている。「この建物を引き継いでから、歴史や文化を調査し、宮廷文化や伝統を知るにつれ、その魅力に感銘を受けています」と目を輝かせるのは、代表の加藤由紀子さん。「この建物で、お客様にいかに特別な経験をご提供できるか」と考え、今では1~2ヶ月に1回程度、催しを企画しているそうだ。
部屋からの風景東山の山なみを借景に 豊かな日本庭園を満喫する
平安時代には貴族の別荘地が多く建ったという景勝地・東山。源鳳院は、その山々を借景に、四季折々の彩を感じられる回遊式庭園を擁している。この広い日本庭園は、全室から望むことができる。古の人々は、季節の移ろいとともに表情を変えていく景観と、自分の内側にある世界観とを重ね合わせて、生きる道しるべとしてきたのかもしれない。回遊式なので、飛び石を伝いながら様々な角度から眺めてみるのも趣深い。歩いてみれば、どこから見ても絵画のように見える立体的な庭園の美しさに、引き込まれていくことだろう。
部屋暮らすように過ごせる、幽玄な和空間
伝統的な数寄屋建築で、建物そのものにも価値がある源鳳院。本邸に3室、別邸はなれに1室の計4室からなり、本邸1室と別邸はなれは風呂付客室となっている。い草の柔らかい感触、雪見障子、掛け軸と生け花が飾られた床の間。シンプルだが心が行き届いたおもてなしに、じんわりと心がほどけていくような感覚になる。
さらに共有スペースである大広間や個室、ライブラリーも自由にくつろげる。「もともと宿として建てられた建物ではないので、お客様の別荘のようにくつろいでほしいんです」という加藤さんの言葉通り、伝統と格式のあるしつらえにも関わらず、リラックスできる心地よさを感じる。時間と場所に少し魔法がかかったかのような郷愁があるのだ。
風呂貸切の家族風呂で心地よい湯浴みのひととき
源鳳院の大浴場は貸切予約制で、完全プライベートなバスタイムを過ごすことができる。お風呂の特徴は、温かみと香り、肌なじみの良さを感じる木の浴槽。高野槙の湯船は、お湯を注ぐとアロマが香り立ち、嗅覚からのヒーリング効果がある。広い浴槽で体をうんと伸ばしてお湯に浸かれば、旅の疲れが癒え、ゆったりとした時間が流れるはずだ。
2室ある風呂付き客室では早朝、深夜など時間を気にせずワンステップで入浴することが可能。庭園の情景を愛でながらの湯浴みは、このうえない贅沢だ。このうち「別邸はなれ」の浴槽は、大浴場と同じく高野槙づくりとなっている。
料理精進料理の仕出しプランで健やかな朝食も
観光名所が数多ある京都では、昼食や夕食は料亭やレストランで思い思いに楽しむが、朝食は宿で楽しみたいというケースも多い。源鳳院は素泊まりが原則だが、そうした声に応えた朝食付きプランを用意している。
精進料理で有名な大徳寺にある「京都泉仙」の仕出しを用意。旬の食材を使った優しい味わいの料理を堪能できる。精進料理なのでベジタリアンにも対応が可能だ。「お客様は観光で、昼食や夕食でボリュームたっぷりになることが多いので、さっぱりした味わいはちょうどいいと喜んでいただいています(加藤さん)」。
源鳳院の宿泊客はまず大広間に通される。そこで旅疲れを取るのごと、庭園を眺めながら、お茶とお菓子のおもてなしが。そのお菓子は、山科家の家職「装束」の配色美である「かさね色目」をモチーフに、西陣織の老舗名店「HOSOO」が開発をしたマカロン。すでにここから宮廷文化体験が始まっているのだと、そのホスピタリティに心が躍る。長く公家の中心地であった京都で、ダイレクトにその文化に触れられる希少な宿だ。
キーパーソン


宮崎県都城市出身。以前は東京にて京都の伝統工芸や飲食等に関わる会社に在籍していた。山科家の手を離れ、長い間、国や企業の保養所だった源鳳院の所有者より、運営に携わる人物を探していると相談されたことから、代表として就任。大きなチャレンジをすることになる。
「当館でのご宿泊は、原則素泊まりか、仕出しでの朝食ご提供のみ。このような施設でどうお客様に特別なことをご提供できるか、また私たちがいきいきと創造性を持って日々活動できるか常に考えています。『泊まれる文化施設』への挑戦は、源鳳院の由緒を生かした大きな取り組みです。宿泊されるお客様にとって、別荘のようなくつろぎとともに特別なひとときを過ごしていただけるよう、スタッフ一同お力添えをさせていただきたいと思っております」
お知らせ
衛生管理(新型コロナウイルス感染予防対策)について
【山科伯爵邸源鳳院より衛生管理について】
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぎ、お客様に安心してご宿泊頂けますように、以下の対策を実施しております。
・館内の清掃時の換気、ドアノブ、トイレなど、各備品のアルコール消毒
・パブリックスペースの定期的な消毒・換気と、浴場の利用人数制限
・従業員出勤時の検温、手指消毒、うがいの実施と、勤務中のマスク着用義務付け
・お客様入館時の検温、手指消毒のお願い
お客様には、ご不便をお掛け致しますが、ご理解、ご協力をお願い申し上げます。
更新日:2021年2月16日