山あいを縫うように中央道富士吉田線を走っていく。やがてフロントガラスに、ひときわ大きな左右対称の山が映し出される。インターを下りてその宿にたどり着くと、霊峰は絶対的な存在感を持って佇んでいた。ホテル鐘山苑(かねやまえん)の「別墅然然(べっしょささ)」。間近に迫る富士山と、静寂に包まれた特等席で「対座」できるラグジュアリーな宿だ。露天風呂での湯浴みも、夕食も朝食も、すべてこのプライベートな空間で楽しめる。夢見心地のくつろぎが、ここにはある。
目次
客室 ただ、部屋で過ごす。専用露天風呂つきの和モダン空間
4・5階の2フロアに17ある客室は、すべて専用の露天風呂とダイニングつき。宿がある富士吉田市の、各地区の旧村名を冠した3タイプがある。「瑞穂(みずほ)」と「明見(あすみ)」は、夫婦やカップルにぴったり。家族水入らずで過ごすなら、5名まで宿泊できる「福地(ふくち)」が最適だ。インテリアは色彩が抑えられ、木材のぬくもりを随所に感じる和モダンなデザイン。間接照明も手伝って、何もせず、ただ部屋で過ごしたくなるやすらぎの空間になっている。
「設計にあたっては、誰にも邪魔されず、ゆっくりくつろいでいただけるお部屋を追求しました」とは、宿泊支配人の宮下真一さん。「お客さまそれぞれの別荘でありたいという思いをこめて『別墅』という名をつけたんです」と微笑む。客室でチェックインを済ませたら、作務衣や浴衣に着替え、エスプレッソマシンでコーヒーを淹れる。好きな時間に湯浴みをし、シモンズベッドに身体を預けて深い眠りにつく―。別墅然然の客室では、そんな至高の滞在が約束されているのだ。
客室からの風景 刻々と表情を変える霊峰に抱かれる 圧倒的な眺望
到着してすぐ窓辺に駆け寄ると、南側の富士山が我々を出迎えてくれる。山肌の雪のきらめき、裾野へ連なる森の深い緑まで、つまびらかに捉えられる。標高830m、吉田口登山道にほど近いこの宿からしか望めない、圧倒的な眺めだ。とくにおすすめしたいのは「福地」「明見」のAタイプからの眺望。それぞれの部屋に設けられたテラスの前には植栽があり、その先には富士山と空しかない。夢でも見ているかのような絶景に息を呑む。
客室からずっと霊峰を眺めていると、その表情が刻々と変化していくことに気づかされる。春夏秋冬、朝な夕な、いつ見ても異なる顔を見せてくれる、やはり日本一の山だ。「冬なら、山が朝日に紅く照らされる瞬間。夏なら、山小屋や登山者のライトが見える夜が好きですね。これだけ近い距離で雄大な富士山を望めるのは、当館の自慢です」と宮下さんも胸を張る。
温泉 富士山がくれた自家源泉に浸かり、富士山と向き合う贅沢
部屋付きの露天風呂には、自家源泉の天然温泉が注がれている。富士山に降り注いだ雪や雨が、悠久の時を経て大地の奥底に浸透。1,500mの地下から湧出しているのが、この「富士山温泉」だ。泉質は、カルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉(含芒硝-石膏泉・高アルカリ性)。ゲストからは「肌がつるつるになる」と評判なんだとか。
湯船に浸かり、ヘッドレストにもたれると、視線の先にはやはり富士がある。山姿を見られるよう、目隠しの形状も工夫されているのが嬉しい。静寂に包まれながら、じっくり秀峰と対峙するひととき。時折吹き下ろす風が心地いい。この時間がずっと続いてくれたらと、願わずにはいられない。
別墅然然の宿泊者は、「ホテル鐘山苑」の大浴場も利用可能。宮下さんのおすすめは10階屋上にある「露天風呂 富士山」だ。3段になっている広々とした湯船の向こうには、さえぎるものが一切ない。勇壮な富士の大パノラマを体感してほしい。
料理 夕食も朝食も部屋でゆっくり 旬菜と地元の味に舌鼓
別墅然然では、夕食のみならず朝食も、部屋に備わるダイニングでいただける。プライバシーに配慮し、引き戸を閉めればベッドルームやバスルームが見えなくなる構造なので、客室係の目も気にならない。
夕食の和会席は、木箱に入った「吹き寄せ盛り」からはじまった。色とりどり、季節を感じる種々の旬菜には精緻な造形が施され、見た目にもおいしい。驚いたのは、高原の宿とは思えぬお造りのぷりぷりとした食感。駿河湾で水揚げされた魚を新鮮なうちに仕入れるからこそ、この味わいが実現できるのだ。この日のメインは、牛フィレ肉のステーキ。口の中でほどけるような柔らかさと深い旨みに、思わず唸ってしまった。
ブランド鱒の「甲斐サーモン」など、山梨県内の食材も積極的に使用。もちろん、山梨のワインや地酒もオーダーできる。そして料理の随所には、富士山のエッセンスが散りばめられていた。炊合せに添えられた大根や、朝食の豆腐も富士山型。食べるのがもったいないほどの逸品たちが、旅を優美に彩ってくれる。
館内施設 2万坪の庭園から太鼓ショーまで、楽しみ方は十人十色
ちょっと気分を変えたいときは、宿泊者専用ラウンジを訪れてみよう。時間によって、コーヒーやフレッシュジュース、山梨のワインなどを片手にくつろげる。
ホテル鐘山苑が誇る2万坪の庭園もぜひ歩いてほしい。富士山麓の大自然を体感できる園内には、相模川の源流・桂川をまたぐ橋がかかる。渡った先の奥庭を巡って、東屋や休憩処「忍庵(しのぶあん)」から庭の情景をじっくり堪能しよう。桂川を見下ろす茶室「清流庵」では、瀬音に包まれながら抹茶を味わえる(午後3時から6時まで)。日常とすっかり切り離された空間に身を置いていると、心がリセットされていくような感覚に陥るだろう。
夕食後の午後8時半から開演するのは、社員有志による「霊峰太鼓」(2階ロビーで開催)。40年以上の伝統を誇る勇壮な太鼓は、観る者の心を大きく揺さぶる。クラブラウンジ(1F)やナイトバーラウンジ(2F)で一杯楽しんでから部屋に戻るのもいい。滞在のしかたは十人十色。それが別墅然然の魅力のひとつだ。
「然然」の名の由来となったのは「然(さ)は然(さ)りながら」という言葉。「それはそうだけれど」といった意味だ。宿だけれども、私邸のように過ごせる。落ち着いた空間だけれども、賑やかさも味わえる―。これまでの旅館のイメージをくつがえすような、今までにないくつろぎを享受できるのが、別墅然然なのだ。肩肘を張らずに自然体で、大切な人とこの宿を訪れよう。ここではいつも、雄大な富士があなたを待っていてくれるのだから。
キーパーソン
2008年、ホテル鐘山苑を運営する中央観光株式会社に入社。ブライダル部門を経て09年に宿泊部門へ。「別墅然然」オープンプロジェクトには当初より参画し、2014年6月の開業に道筋をつけた。現在、ホテル鐘山苑 宿泊支配人。
「別墅然然が追求するのは、お越しになってからお帰りになるまで居心地の良い、非日常の空間づくりです。
例えば寝具には、豪華列車にも採用されたパジャマやシーツ・枕カバーを採用。織物の産地であるここ富士北麓地域で生産されたものです。スタッフはつかず離れず、お客さまのご希望を察することができるようなおもてなしを目指しています。『泊まってよかった』『また来たい』。そんなふうに思っていただけたら幸いです。
静けさと華やぎに満ちたこの宿で、旅の醍醐味を思いのままにお楽しみ下さい」
お知らせ
衛生管理(新型コロナウイルス感染予防対策)について
【別墅然然より衛生管理について】
私ども別墅然然(ホテル鐘山苑)は、新型コロナウイルスによる感染症対策といたしまして、様々な予防衛生管理を強化徹底し、お客様に安心してご滞在を楽しんで頂けるよう、全力で取り組んで参ります。
また当館は、山梨県より新型コロナウイルス感染症対策店としてグリーンゾーン認証されました。この認証制度は、 山梨県が作成した「感染症予防対策に係る基準」に沿って、事業者が自ら取り組むべき感染症予防対策 (来館者への感染症予防、従業員の感染症予防、施設・設備の衛生管理の徹底)を定め、県に申請し、山梨県による調査の結果、適切な感染症予防対策に取り組んでいる事業者であると判断した事業者に対して認証されるものです。
衛生管理等の詳細は下記をご覧くださいませ。
https://bessho-sasa.com/concept/
更新日:2021年11月15日