ヴィッツハイブリッドとアクアの違いは?どっちが買い!?徹底比較
- 筆者: 渡辺 陽一郎
トヨタのコンパクトHV、ヴィッツハイブリッドとアクアの“違い”を比較
2017年1月に“トヨタ ヴィッツ”がマイナーチェンジを実施し、ラインナップにハイブリッドモデルが追加された。
現行ヴィッツの欧州仕様である“ヤリスハイブリッド”は2012年5月に発売されている。日本国内ではかなり時間が経過してからハイブリッドが追加された形となるが、コンパクトなハイブリッドカーを求めるユーザーには注目の存在だろう。
一方、トヨタは2011年にコンパクトなハイブリッド専用車である“アクア”を発売、今では定番の人気車となっているのはご存知の通り。ヴィッツハイブリッドとアクアはハイブリッドシステムの基本部分が共通なうえに、ボディサイズや価格帯もほぼ同様。ネッツトヨタ店では両車を扱うので、購入検討ユーザーはどちらを選択すれば良いのか迷うこともあるかもしれない。
そこで今回はヴィッツハイブリッドとアクアの違いを比較しながら、どちらの方が優っているのか、どちらが買いなのかを判定していきたい。
ボディサイズ・外観デザイン比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
ヴィッツハイブリッドのボディサイズは、全長3945mm、全幅1695mm、全高は立体駐車場を使いやすい1500mmだ。
アクアは全長が3995mmだからヴィッツハイブリッドよりも50mm長いが、全幅は同じで全高は45mm低い1455mmとなる。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はヴィッツハイブリッドが2510mm、アクアは2550mmだから、全長に併せて伸びている。
この寸法の違いは、外観にも影響を与えた。ヴィッツは他のコンパクトカーにも多く見られるような、全長を短く抑えて若干背が高く丸みのある形状だが、アクアはボディ全体が低く、長く見えてスポーティだ。ヴィッツハイブリッド、アクア共にサイドウインドウの下端を後ろに向けて持ち上げたことも特徴になる。
また、後席のサイドウインドウを狭めてボディ後端のピラー(天井を支える柱)を太く見せるデザインも共通だ。外観に躍動感を与えられる半面、斜め後方の視界は良くない。
最小回転半径は、ヴィッツハイブリッドの14・15インチタイヤ装着車が4.7m、16インチタイヤのスポーティパッケージは5.6mで大回りになる。アクアは14・15インチタイヤは4.8m、16インチのXアーバンは5.4mだ。14・15インチタイヤ装着車で比べると、ヴィッツハイブリッドの小回り性能が良い。後方視界も、若干ではあるがヴィッツハイブリッドが勝る。
勝者:ヴィッツハイブリッド
前席・後部座席の居住性比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
ヴィッツハイブリッドの前席は、コンパクトカーとして平均的な座り心地だ。サポート性が不足していることも無く、おおむね満足できる。
アクアはヴィッツハイブリッドに比べて全高が45mm低く、そのために着座位置も少し下がる。床と座面の間隔も少ないため、手足を伸ばし気味に座る少しスポーティな運転姿勢となる。
後席はヴィッツハイブリッドの場合、広くはないが窮屈にも感じない。着座位置は適度で腰が落ち込みにくい。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ1つ半。フィットやノートの2つ半に比べるとかなり狭いが、前席の下に足が収まりやすく、着座姿勢にも無理がない。ハイブリッドでは後席の下に駆動用電池が収まるから、座面の柔軟性がノーマルエンジン搭載車に比べて少し劣るが、底突き感は抑えた。
アクアは全高が低く、しかも天井を後方に向けて下降させたので、後席は着座位置がさらに下がる。頭上と足元の空間はヴィッツハイブリッドと大差ないが、腰の落ち込んだ姿勢によって窮屈に感じる。ヴィッツハイブリッドは4名乗車も可能だが、アクアの居住性はクーペに近い。
勝者:ヴィッツハイブリッド
乗降性比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
ヴィッツハイブリッドの乗降性は、コンパクトカーの平均水準だ。
アクアは天井が低く、フロントピラーを寝かせた。そのために前席側のドアは開口部の上下寸法が乏しい。後席は天井が後方に向けて下がるので、前席以上に頭を下げて乗り降りする。
従って、乗降性はヴィッツハイブリッドが勝る。 ただし、アクアも後席の両端に丸みを付けたり足元空間の張り出しを抑えるなど、乗降性を向上させるための細かな工夫を施している。
勝者:ヴィッツハイブリッド
動力性能・加速など走行フィーリング比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
ヴィッツハイブリッドが搭載するシステムは、基本的にはアクアと同じ1.5リッターエンジンをベースにしたタイプだが改良を加えている。燃焼時にシリンダーの中で発生するタンブル流(縦方向の渦)を強くするなど効率を高めた。ピストンのコーティングも施され、現行プリウスのノウハウを活用している。このあたりは発売時期が新しいヴィッツハイブリッドのメリットで、主に燃費に良い影響を与えた。
動力性能は、両車ともにほぼ同じ。車重に対してモーターの駆動力に余裕があり、活発な加速を見せる。特に巡航中にアクセルペダルを踏み増した時などは、瞬発力の強いモーターの効果によって速度を素早く上昇させる。加速感も滑らかだ。
このように両車の運転感覚は似ているが、車重はヴィッツハイブリッドが1110kg(ハイブリッドU)、アクアは1080kg(GとS)だから、アクアに若干ではあるが余裕を感じる。加速力は最終減速比によっても左右されるが、両車とも同じ数値になる。
勝者:アクア
乗り心地比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
ヴィッツではノーマルエンジン、ハイブリッドの両方ともに14インチタイヤを装着したFやジュエラと、15/16インチのUとUスポーティーパッケージでは、足まわりとタイヤのセッティングを分けている。
Fとジュエラは低燃費/低コスト指向が強く、タイヤの指定空気圧も転がり抵抗を抑えるために高い。これに比べてUは快適性を考慮している。その違いもあって、ヴィッツハイブリッドUの乗り心地は、少し硬めながらも粗さを抑えた。ボディの溶接箇所を増やした効果もある。
アクアはヴィッツハイブリッドに比べると、操舵感が機敏で良く曲がる半面、乗り心地は硬めに感じる。
勝者:ヴィッツハイブリッド
燃費性能とエコカー減税比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
JC08モード燃費はヴィッツハイブリッドが34.4km/L、アクアは37km/Lになる。アクアは背が低いために空気抵抗も抑えられ、車両重量は20~30kg軽いので有利になった。
エコカー減税は2017年4月1日に改訂されて減税率を下げる車種が多いが、ヴィッツハイブリッドとアクアは、自動車取得税と同重量税の免税(100%の減税)を今後も保てる。
勝者:アクア
グレードと価格の割安感比較/ヴィッツハイブリッド vs アクア
装備が似通ったグレードは、ヴィッツハイブリッドF(181万9800円)とアクアS(188万7055円)になる。
装備の違いを補正しても、後席の居住性や積載性の優れたヴィッツハイブリッドが少し割安だ。
勝者:ヴィッツハイブリッド
総合評価・どっちが買い!?/ヴィッツハイブリッド vs アクア
後席の居住性や荷室の使い勝手を含めた機能と価格のバランスから判断すると、燃費数値は少し下がるがヴィッツハイブリッドが買い得だ。
しかし実用性を追求すると、今回の比較対象車種では無いが“ホンダ フィットハイブリッド”が有力な候補に挙がってしまう。フィットハイブリッドは、後席の足元空間がヴィッツハイブリッドよりも大幅に広く、4名で乗車しても快適だ。燃料タンクを前席の下に搭載したから荷室も広い。
フィットハイブリッドはJC08モード燃費こそ33.6km/L(ハイブリッドF/Lパッケージ)にとどまり、AT(7速DCT)も少しスムーズさに欠けるが、実用性はヴィッツハイブリッドに比べて断然高い。
そうなるとアクアは、総合評価ではヴィッツハイブリッドに劣っても、5ドアクーペ風の外観とスポーティな運転感覚により、ほかのどのクルマにも似ていない独自の価値を備えている。プリウスと同様に「ハイブリッド専用車」であることも魅力だろう。
2017年2月の登録台数を見ても、アクアは1万1379台、ヴィッツはノーマルエンジンと新型のハイブリッドを合計して8475台であった。アクアにはトヨタの全店(約4900店舗)で販売する強みもあり(ヴィッツはネッツトヨタ店の専売で約1600店舗)、人気も根強い。
総合評価ではヴィッツハイブリッドが勝るが、ユーザーの満足感という点では、むしろアクアが上まわるのかもしれない。特に後席や荷室の広さを問わないユーザーにとって、アクアのパーソナル感覚は魅力だと思う。
勝者:ヴィッツハイブリッド
ヴィッツハイブリッド vs アクア/カテゴリー別勝者一覧
ボディサイズ・外観デザイン比較:ヴィッツハイブリッド
内装デザインとインテリアの質感比較:ヴィッツハイブリッド
前席・後部座席の居住性比較:ヴィッツハイブリッド
乗降性比較:ヴィッツハイブリッド
荷室・ラゲッジルーム比較:ヴィッツハイブリッド
動力性能・加速など走行フィーリング比較:アクア
走行安定性比較:アクア
乗り心地比較:ヴィッツハイブリッド
安全装備比較:引き分け
燃費性能とエコカー減税比較:アクア
グレードと価格の割安感比較:ヴィッツハイブリッド
総合評価 どっちが買い!?:ヴィッツハイブリッド
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