トヨタ ルーミーがデビュー5年後でも大ヒット中! 売れ続ける理由は「200万円以内で全てがそつなく揃ったバランス感覚」にあり
- 筆者: 小鮒 康一
- カメラマン:茂呂 幸正・和田 清志・TOYOTA
2016年デビューのコンパクトカー「トヨタ ルーミー」が、販売ランキングで2位に食い込むなど、デビュー5年目にして売れ行き絶好調な状態にある。人気の秘密はどこにあるのだろうか。軽自動車を含むライバル車を見据え、先進安全装備も充実させながら主力グレードを200万円以内に収める価格設定とするなど、全方位でそつなくまとめられた底力のあるモデルであることが分かった。そんなトヨタ ルーミーを改めてチェックしてみよう。
トヨタ勢が上位を独占した2021年上半期の新車ランキング、その中でも古参「ルーミー」が2位に食い込む理由とは
2021年の登録車新車販売台数ランキング、1月から6月までの上半期のデータを見ると、上位6位までがトヨタを占めるという圧倒的な強さとなっている。
ただ、その中で意外(?)なのが、2位に位置している「トヨタ ルーミー」だろう。需要の高いスライドドアを備えたトールワゴンであることは間違いないが、ルーミーが登場したのは2016年11月のことだから、まもなくデビューから5年が経過したモデルなのである。
5ナンバーサイズでスライドドアを備えるトールワゴンは他メーカーにもライバルが存在しているなか、なぜルーミーがここまで好調を維持しているのか?
その謎を解くべく、実際にトヨタの販売店に足を運んで調査をしてみることにした。
ルーミーが売れる理由その1:兄弟車「タンク」が消滅して一本化されたから?
そもそもルーミーはダイハツが開発した「トール」をベースとしたOEMモデルであり、デビュー時はカローラ店とトヨタ店向けの「ルーミー」と、ネッツ店とトヨペット店向けの「タンク」として別車種として販売されていた。
しかし、トヨタが販売チャネルに関わらず全車取り扱いとなったことを受けて2020年9月のマイナーチェンジ実施のタイミングでルーミーに一本化されたという事実がある。
タンクとルーミーの合算台数よりも、統合後のほうがむしろ販売台数は伸びている事実
そのため、それまではルーミーとタンク、それぞれ別車種としてカウントされていた販売台数を1台に集約したから売れているように見える、という声もあった。
とはいえ、2020年度の上半期(1月~6月)のルーミーとタンクを合わせた販売台数は6万6080台であったのに対し、2021年度の上半期のルーミーの販売台数は7万7492台と、1万台以上多く販売していることになる。
つまり人気が全く衰えていないどころか、昨年以上に売れているということになるため、純粋に合算しただけが理由ということにはならないだろう。
ルーミーが売れる理由その2:軽をもライバルと見据えた価格設定と装備の充実ぶりが秀逸だった
販売店によれば、このクラスを求めるユーザーは、軽自動車のトールワゴンやスーパーハイトワゴンからのクラスアップも少なくないという。ただ、現在の軽自動車は普通車を上回るような充実装備を誇るモデルも珍しくなく、ともすればコンパクトカーの方が装備で劣っている場合もあるほど。
そこにきてルーミーは先進安全装備が全車標準装備であり、最も安価な「X」グレード以外は全車両側パワースライドドアも備わるという充実ぶり。
最上級グレードでも205万円以内という価格設定はむしろ軽スーパーハイト系ターボ車よりお得
にもかかわらず、最も上級グレードでも車両本体価格が204万6000円(消費税込)と、むしろ軽のスーパーハイト系モデルよりも安価とも言えるプライスとなっているのである。
さらに2020年9月のマイナーチェンジでカスタム系には電動パーキングブレーキが搭載され、クルーズコントロールは全車速追従式かつ停止保持機能まで備わるようになったのだ。
クルーズコントロール機能は直接的なライバルであるフリードやソリオにも備わっているが、全車速追従機能と停止保持機能の両方を併せ持つのはルーミーだけ(ソリオにも停止保持機能があるがわずか2秒間だけに留まる)であり、ひとつ頭抜けている印象がある。
ルーミーが売れる理由その3:欲しいものが200万円でオールインワン! 1リッターという排気量も絶妙だった
ライバル「ソリオ」より自動車税が5000円安いルーミー! 軽からのステップアップ勢にこの差は大きい
軽自動車からのクラスアップユーザーにとって、一番のハードルとなるのが維持費だ。特に自動車税に関しては倍以上の額となってしまう。
しかしルーミーの排気量は996ccと、普通車の中では最も低い負担額となる。一方のソリオは1.2リッター、フリードは1.5リッターと、ルーミーよりも1クラス高い税区分となってしまうのだ。ここの差額は5千円程度ではあるが、軽自動車税からの大幅アップと考えると、心理的に1.0リッターのルーミーを選びたくなる気持ちも分からなくもないハズだ。
ターボモデルを用意し、パワー不足を不安視するユーザーもしっかりとフォロー
そして1.0リッターという排気量に対して動力性能的に不安を覚えるユーザーに対しては、ターボモデルが用意されるという点も見逃せない。
例えばホンダ フリードもモーターでアシストするハイブリッドが用意されるが、当然ながらガソリンモデルに比べ価格が大きくアップしてしまうので、相対的にルーミーが格安に見えてくるというワケなのである。
このように、消費者の心理を巧みに突いた車種がルーミーであるということがお分かりいただけただろうか?
価格、機能、装備の全てが程よく揃ってる! ファミリーカーで使うならこれが最適解
もちろん心理面だけでなく、それに見合う実力を持ち合わせていることが最低条件であるが、そこもしっかり押さえているからこそ全方位でスキがないクルマとして選ばれているということなのだろう。
実際、筆者も販売店で話を聞き実車に触れるにつれ、155万6500円から204万6000円という価格や排気量設定の絶妙さ、ちょうどよいボディサイズなど「ファミリーカーとして使うのであればこれが最適解なのでは?」と思ってしまうほど。
デビューから時間が経過したことで、魅惑的な値引き額が提示されることも魅力のひとつであることを付け加えておこう。
[筆者:小鮒 康一/撮影:茂呂 幸正・和田 清志・TOYOTA]
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