トヨタ FJクルーザー デザイナーインタビュー/トヨタデザイン本部 主幹 小川 洋(3/5)
- 筆者:
- カメラマン:茂呂幸正/トヨタ自動車株式会社
「トヨタがこんなデザインのクルマを作ったのか!」
AO:最初から商品化ありきではなかったデザイン重視のコンセプトカーを量産化させるのは大変だったと思いますが、市販化にあたってもっとも苦労したことは何ですか?
O:プロポーション全体を、いかにショーモデルに似せていくかという部分ですね。末端の処理でいうと、基本となるボディカラーとは異なるホワイトルーフの部分です。生産する工場は嫌がるし(笑)、手間もお金もかかりますが、デザイナーの立場としてはゼヒそれをやりたいと主張しました。ショーモデルと市販車は、実際に並べて見るとすごく違うものです。
しかし、見る人が頭の中で描くイメージをソックリ似ている姿にする。これは、デザイン上でもっとも大変だった部分ですが、デザイナーとしての使命であり醍醐味でもあるので、やり甲斐はあったと思います。
AO:北米の女性から支持を受けたポイントは、サイズ以外にどこだったと思われますか?
O:特定の仮想ユーザーは企画上は存在しますが、FJクルーザーに関しては、年齢層、所得層、男女別を限定できない、あるいは限定するのはあまり意味が無いデザインかと思います。
ある意味、あらゆる人に受け入れられるボーダーレス的なデザインかなと。そういったところが幅広い層に受け入れられたのではないでしょうか。ボディカラーに採用した色はSUVの機能性を表すようなソリッドカラーとしているので、普通のクルマでメタリックを見慣れた目には新鮮に映ったことでしょう。
AO:お蔵入りになってしまったけど、設計段階では実はこういうチャレンジもあった、というアイデアはありますか?
O:量産車を作る上で一番大きく変わったのは内装で、量産、法規、コストを考えると実現できなかった部分は多いですね。代表的なところではシートです。アメリカのデザイナーが「畳み」をイメージし、フラットで真っ平らな薄いシートを提案したが、さすがにシートの自由度はそこまで大きいものはなく、断念しました。
AO:アメリカ人デザイナーが畳みを提案したとは面白いですね。
O:ドアを開けたときの華飾や、上下2本になったインパネなどは極力残すようにがんばってトライした部分です。
AO:北米仕様と日本仕様の差は、ハンドル位置以外に何かありますか?
O:左フロントフェンダーに付く補助ミラーと、リアのナンバープレート回りのガーニッシュぐらいですね。それ以外は何もいじりたくありませんでした。「トヨタがこんなデザインのクルマを作ったのか!」とせっかく驚いていただいたので、それと同じものを日本でも出すことはデザイナーの使命だったのです。
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