新車開発が変わった?フルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジが増えた理由(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
プラットフォーム化とモジュール化
近年、車体をプラットフォームと呼ぶことが増えた。これぞ、車の骨格であり、車の走りや乗り味、そしてパワートレインのレイアウトなどを決めてしまうものだ。その昔、自動車メーカーエンジニアでの花形部署はエンジン開発で、新規開発が終わると「このエンジンに合う車体を作れ」、そして「このエンジンと車体に合うデザインを考えろ」といった流れが一般的だった。それが近年では、「このエンジンを載せるイメージで、このデザインを描く」といった流れも出てきた。
こうした車作りの変化は、Aセグメント、Bセグメント、C/Dセグメントといった車のカテゴリー別に、それらの母体となる共通プラットフォームを集中的に開発し、それをベースに事実上の派生車を設計するという手法が取り入れられるようになったからだ。
さらに、設計の中で、パワートレイン周りや、外装や内装で、複数の部品を一体で構成するモジュール化の発想が進み、モジュールを交換することで、見た目や走りを大きく変えることも可能となった。
こうしたプラットフォーム化とコモディティ化は、作り手側の事情である。
一方で、消費者側にも変化がある。
クルマのコモディティ化
クルマを白物家電のように、利便性や価格重視で選ぶような風潮が強まっている。それを車のコモディティ化と呼ぶ。
こうした時代変化を後押ししているのが、ミニバンの普及だ。以前、大手OEM(自動車メーカー)の幹部が「日本でのミニバンは、車という商品ではなく、家族と過ごす時間など、日頃の生活空間をそのまま移動するというイメージ。こうした社会現象は日本特有だ」と、開発の裏話を打ち明けてくれた。
まさに、クルマのコモディティ化に直結する話である。
こうなってくると、OEM(自動車メーカー)にとって重要となるのが、消費者の心をつかむためのマーケティング戦略だ。社会のトレンドをウォッチしながら、消費者動向を先読みし、”売れる車”を想定する。その”売れる車”の想定販売台数と、それにかかる開発コストを天秤にかけて、FMCかMC、またはビックMCを選択する。
このように、FMCまでの期間が長くなっている背景には、クルマと社会との関係が近年、大きく変わってきたという事実がある。
[Text:桃田健史]
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