K4-GP 富士500キロ耐久レース 現地レポート(3/3)

  • 筆者: マリオ 二等兵
  • カメラマン:マリオ二等兵
K4-GP 富士500キロ耐久レース 現地レポート
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「K4-GP」でレース世界に復帰したF3選手も

今回、個人的にもっとも注目したのは元レーシングドライバーの長屋宏和さん。

長屋宏和さんは、若くしてホンダF1プロジェクトレースの「フォーミュラドリーム」で優勝した経歴を持ち、F3選手権にも参戦していた将来有望なレーシングドライバーでしたが、2002年に鈴鹿サーキットで開催されたF1の前座レース中に大クラッシュ。頸椎損傷C6という重傷を負いチェアウォーカーとなられ、引退を余儀なくされました。

しかし、不撓不屈の精神でリハビリを続けた結果、ついに今回の「K4-GP」にて四輪レースの世界にカムバックを果たされたのであります。

男は誰しも「挫折を乗り越える男」を尊敬し、強く憧れるものでありますが、そんな長屋宏和さんの生き様を垣間みるべく、長屋宏和さんが参加するチームである「ランプ・バンW/ピロレーシング」と、エントリーナンバー266のアルトワークスを密かにストーキングし、レース終了後には「K4-GP初参戦」についての感想を語ってもらいました。

自分の壁を乗り越える楽しみは昔より大きい

マリオ:「今回、K4-GPに参戦された理由を教えてください」

長屋さん:「一昨年、富士スピードウェイ本コースにて乗用車を走らせていただいた際に、自分の障害と向き合いながら、今の自分の限界がどこにあるのかを確認することができました。レースを戦っていた頃の自分のイメージに近付けるためにはどこを修正すれば良いのか。そのヒントを得ることができたので、レースの主催者であるマッドハウスの杉山様にご相談し、オフィシャルの皆様のご協力を得て参戦が実現したのです」

マリオ:「久しぶりのレース、その第一印象は?」

長屋さん:「やっぱりレースは楽しい!の一言ですね!応援してくださる方々の気持ちを思うと絶対に無理はできないので、安全面に対しては慎重に走りましたが、純粋にレースの感動を楽しむことができました」

マリオ:「現役時代の走りに、現状ではどのくらい近づけたのでしょうか?」

長屋さん:「現役に比べると1%にも満たないレベルですね。免許を取り立てで何とかクルマを転がしている、という感じでしょうか。マシンの速度は半分以下なので、富士スピードウェイのストレートがすごく長く感じましたが、クルマを走らせることの面白さは何も変わりませんでした」

マリオ:「難しかったことは何ですか?」

長屋さん:「もっとアタックできそうな手応えがあったとしても、今の自分にはまだ危ない、と自分にブレーキをかけながら走ったことでしょうか。自分よりも速いクルマが来たときはハイドウゾ、と抜かせれば良いのですが、自分と同じぐらいの速さのクルマが周囲に居るときは危険な状態にならないよう、かなり気を遣って走りました。今回は初めてなので、そこが難しかったですね。

レーサーの本能として、『なんでアクセルを緩めなければいけないんだ!』と思ってしまう自分も居ましたが、その度にピットで応援してくださっている皆さんの顔を思い出し、無理をして悲しませたくはないと再確認しながら走らせたことが、無事ピットに戻れた要因だったと感じております」

マリオ:「現役時代に走ったレースと、今回のレースとの最大の違いは何でしたか?」

長屋さん:「やはりレーサーですから、昔は自分が一番になってやる!という闘争心をかき立てながら戦っていましたが、今は仲間と一緒にみんなで楽しむことを何よりも重視して走っています。もちろん、レースだから今も“勝ちたい!”という思いは持っていますが、目的意識が少し違います。

勝つこと以上に、まわりの人たちの気持ちのことを最優先に考えるようになりました。あと、今の体では昔と同じことはできませんが、その分、自分の壁を乗り越える楽しみは昔より大きいかも知れません。」

誰もがプロのドライバーと同じ土俵で走れるのが面白い

マリオ:「アルトワークスでのレース・インプレッションをお願いします」

長屋さん:「スタートドライバーは私の友人であり、1999年には一緒にフランスでレースを戦っていた高崎保浩選手にお任せし、ピットインまでで9位まで浮上。さすがレーシングドライバーとチームを沸かせてくれました。私は3スティント目を担当させて頂きました。練習走行の際に、ブレーキングを残した状態でフロント荷重をかけるとステアリングが重くなり、ステアリングが切れなくなるのを感じたので、決勝では走りを変えました。

ブレーキングは残さず、スピードを殺さずに惰性でコーナーへ進入する走りで対応。この走りは一人であれば問題ないのですが、まわりに他車が居ると自分の走りが出来ず、やや苦労させられました。ピットからの無線で交代ドライバーの準備ができたことが分かり、9周、約25分間の走行を終えてピットへ戻りました。

ドライバー5人全員がそれぞれ1回ずつのスティントを担当し、周回数76周を走りノートラブルで無事ゴール。今回の目標にしていた“完走”をチーム一丸となって成し遂げることができて、本当に感動です。順位は48位ですが、健常者なら1分も掛らずにできるドライバー交代に10分以上掛ることを考えると、初参戦でゴールを迎えることができたのは、目標以上の結果だったと思います」

マリオ:「K4-GPには来年以降も参戦されますか?」

長屋さん:「K4-GPでは、軽自動車でレースをする楽しさを学ばせていただきました。いろいろなドライバーが幅広く参加できるのが楽しいですね。観戦するよりも参加するほうが圧倒的に楽しいレースです。K4-GPなら学生さんや女の子でも参加でき、誰もがプロのドライバーと同じ土俵で走れるのも面白い点だと思います。

上位に入れなくても、何事もなく無事に完走しただけでも十分に満足できるので、無理をする必要はどこにもありません。来年以降も、個人的に何らかの前進、進歩を遂げながら参加したいですね」

ランプ・バンW/ピロレーシング

今回、長屋宏和さんが参加したチーム「ランプ・バンW/ピロレーシング」長屋宏和さんと同じ頚椎損傷C6の重傷を負った相川宏光さんからの誘いにより、レース参戦が実現。

相川宏光さん自身が持つガレージでレース用マシンを作り、開発。

「クルマの運転ができるかできないかの瀬戸際にある頚椎損傷C6の重傷を負ってもレースを楽しむことができることを証明し、同じ障害の方々にも『できる!』という勇気をお伝え出来たらと思っております」

現地にはSTI 辰己英治さんやスバル 広報の方も!

STIのカリスマテストエンジニア・辰己英治師匠のお姿を発見!

辰己師匠みずから屋根をぶった切って製作したヴィヴィオベースのレースカーのテストを実施しておられました。練習走行時には大雨が振りましたが、そのおかげで悪天候下の挙動をジックリとテストできたのだとか。

「このレースカーは市販車の開発に反映されるのか?」との質問に対しては「なんとも言えないネ」とのことですが、純粋に走りを楽しんでおられるご様子に感動!

また、スバル広報の清田氏はR2で1,000キロ耐久に参戦。

「チームスバル456F」は、新宿スバルビル本社勤務の「事務系社員」の有志で結成されたチームで、てっきり業務の一環なのかと思いきや、お盆休み中のプライベート参戦と聞いてビックリ!

休日出勤扱いにならないのに、自社のクルマでレースに参戦するという志の高さに感動しました。さすがスバルの社員さんであります。

スバル有志の皆さんの走りにかける熱い思いに、敬礼!

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筆者マリオ 二等兵
樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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