日産自動車 ゼロエミッション事業本部事業部長 島田哲夫氏インタビュー(3/3)

日産自動車 ゼロエミッション事業本部事業部長 島田哲夫氏インタビュー
日産自動車ゼロエミッション事業本部事業部長 島田哲夫氏 モータージャーナリスト 森口将之氏 日産自動車ゼロエミッション事業本部事業部長 島田哲夫氏 日産自動車ゼロエミッション事業本部事業部長 島田哲夫氏 画像ギャラリーはこちら

目標は世界最大の「電池メーカー」

AO:バッテリーだけリースにして販売するという噂がありましたが。

S:いまも検討はしています。でも今回は時期尚早であることと、補助金を使えば競争力の高い価格になるのでバッテリー込みとしました。リース方式は電池が高いという意識に基づくものですが、現実にはかなり安くなっています。

モータージャーナリスト 森口将之氏

AO:バッテリーの二次利用という話も出ています。太陽光や風力発電は天候によって能力に差が出るので、貯めて使う考え方が必要だと思うんですが。

S:関係各省庁でいろいろなブレークスルーを考えていますし、日産でも住友商事さんと「4R」という事業を立ち上げています。ただし二次利用にはバッテリーの規格化が必要です。リーフのバッテリーは個々のモジュールが小さいので、フレキシブルに対応できます。そこまで考えて設計しているのです。

AO:車検や整備代はガソリン車より安くなりそうな気がするんですが。

S:オイル交換は必要ないですが、バッテリーやモーターのチェック項目は増えるので、少し安くなる程度に収まるのではないでしょうか。まったく新しい技術を使っているので、安全第一で取り組みたいと考えています。

AO:リーフをCセグメントで出したのはどんな理由からでしょうか。他のセグメントへのEV計画はあるのでしょうか。

日産自動車ゼロエミッション事業本部事業部長 島田哲夫氏

S:乗用車ではこのクラスが、世界的にいちばん需要が大きいからです。量産量販が可能で、コストが下げられます。それ以外の車種では、2012年にデリバリーバンを出すほか、インフィニティブランドでアッパークラス、コンパクトカーの合計4セグメントを考えています。

AO:日産は横浜市などと、まちぐるみでEVを導入する提携を結んでいます。全国のディーラーに充電器を置くという発表は、それとは相容れない感じがするのですが。

S:自治体との提携は、インフラの課題解決が主眼です。たとえば充電器は1戸建てには簡単に置けますが、マンションのパレット式駐車場ではむずかしい。そういった問題を解決するための相談をしています。課金については、電気を売るのではなく、設備を貸す方式にすれば可能です。

AO:当面のライバルはプラグイン・ハイブリッドカー(PHV)になりそうですが、EVの優位点はどこにあると考えますか。

S:環境負荷からいえばEVはゼロです。PHVはエンジンを併用しているのでCO2は出ます。ゼロと1では全然違います。しかもPHVは複雑で、価格を安くするのはむずかしいのではないでしょうか。

AO:日産は最近、ダイムラーと資本提携を結びましたが、それによってEVのプロジェクトが変わる可能性はありますか。

S:日産とルノーは、今後50万台レベルでEVを出し、世界最大の電池メーカーになることを目標にしています。バッテリーやインフラはパソコンのOS同様、デファクトスタンダードが業界標準になるでしょう。量を取ることが重要なのです。ダイムラーとの提携は間違いなく、その実現にプラスになるはずです。

インタビューを終えて

全ディーラーへの充電器配置。県庁や市役所を拠点とした試乗会。これらはどれも従来の自動車業界では出なかった大胆な発想だ。

EVの長所だけでなく、短所も冷静に分析しているからこそ、合理的な対策を実行 できるのだろう。

EVのマーケティングにはガソリン自動車とは違う手法が必要という認識に立った日産のゼロエミッション事業は、予想以上の成功を収めるかもしれない。

日産の今後の展開に注目だ。

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森口 将之
筆者森口 将之

1962年東京都生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。自動車専門誌の編集部を経て1993年フリーに。各種雑誌、インターネット、ラジオなどのメディアで活動。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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