高速道路の新料金体系に思う/清水草一のコラム(2/2)

割引が無くなると地方の通勤利用者へ負担が

通勤5割引の廃止で、地方都市の通勤客が高速道路を使えなくなるのも、CO2削減には痛い。

地方では公共交通機関が衰退しているから、自家用車でないと通勤できない地域が非常に多く、通勤ラッシュ時、一般道は渋滞する。でも高速はガラガラだから、そこを有効活用すべきだということで、通勤割引が導入されたのだ。

おかげで数%が高速道路に転換し、一般道の渋滞は半減以下になった路線もある。渋滞と言うのは、交通量が数%減るとガックリ減るものだからだ。

が、通勤割引がなくなれば、毎日高速道路で短距離を走る人には非常に負担が重くなる。通勤割引だけでなくマイレージ割引もなくなるのだから、負担は一気に2倍以上だ。もう通勤に高速を使えるのは、一部富裕層だけになってしまう。これで一般道の渋滞は再び悪化して、CO2排出量も増える。

レジャーに関しても、全般に長距離ドライブが優遇されるわけで、これまでの千円高速同様、鉄道にはマイナスだ。乗用車の10倍エネルギー効率が高い鉄道客が減り、自家用車が増えるのだから、これまたCO2排出量は増える。

この政策、必ずしもマイナス面だけではない。私も個人的には非常に助かる。これからは平日にガンガン遠くに行ってやろう!とワクワクしている。ただ、CO2削減に関しては、すべてマイナスに働く。

この新料金体系は、「高速を使うなら長距離にしろ」と誘導するものだからだ。地産地消のエコなライフスタイルに真っ向逆行する。

鳩山政権は何を考えているのか?やろうとしていることがすべてバラバラだ。いったい彼らは最終的にどんな国づくりを目指しているのか。それがサッパリわからない。恐らく、そんな大きなビジョンなど一切ないのだろう・・・。

清水草一が提唱する割引案は

私が以前から提唱している割引は、実に単純明快だ。現在の利用密度に比例して、混んでいるところほど高く、空いているところほど安く、まったくガラガラのところはタダに、というものだ。

混んでいるところは、これ以上クルマが走ったら困るんだから料金現状維持。空いているところは、せっかく造った高速道路が有効活用されていないんだから安くして利用客を増やす。実に経済原理にかなった方法ではないか?

私は、東名・名神や道東道・東九州道が同じ料金水準なのは、悪平等だと思っている。東名・名神は、一般道に降りたら高速の3倍以上時間がかかるが、過疎地では国道の流れが速いから、時間短縮効果はかなり小さい。しかも地方ほど所得水準は低いのだ。そんな高速を誰が使うだろうか?

しかし、都会からクルマで出かけると、最初は高いがだんだん安くなっていって、最後はタダになるようにすれば、この歪みは解消される。

過疎地は不便な分高速代は安いというのは、格差是正にもなる。これなら、混んでいるところは料金収入が減らず、空いているところは利用客が増える分、割引に要する予算も減らすことができて、国家財政にもいい。一石三鳥なのだ。

民主党は、そろそろ私のところに話を聞きにきたらどうか?もちろん、そんな気配は皆無だが・・・。

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清水 草一
筆者清水 草一

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で交通ジャーナリストとしても活動中。雑誌連載多数。日本文芸家協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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