レクサス初の電気自動車はあえて“フツー”の仕上がりに! 一体レクサスはなぜその判断をした!?

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テスラなど電気自動車といえば、今までのクルマにはない強烈な加速、あるいはどデカいモニターを搭載するなど、これまでのモノとは一線を画すクルマがほとんど。だが、レクサスが初めて作った電気自動車は見た目も走りも至ってフツーであった。一体なぜレクサスはその判断をしたのか? 開発者に直接聞いてみた。

目次[開く][閉じる]
  1. ガソリン車から乗り換えでも違和感なしの無難な仕上がり
  2. レクサスにとってEVは選択肢のひとつ。今後もHVなど多くの選択肢を用意
  3. EVといえば強力な回生ブレーキだが、レクサスは“自然な”動きを優先
  4. 内装だって特別感なし。後席の快適性は難あり
  5. ハイブリッドだけではダメ! 次なる一手が必ず必要

ガソリン車から乗り換えでも違和感なしの無難な仕上がり

レクサス初、トヨタ初のEV(電気自動車)「UX300e」を試乗した数日後、開発者にオンラインでインタビューすることができた。

記事にも書いた通り、UX300eに対する僕の評価は「レクサスらしい快適性に対する配慮は行き届いているが、EVらしさやEVでないと体験できないドライビングは皆無」というものだった。

ハイブリッド比で200万円弱アップ! なのに機能や見た目はほぼ一緒

具体的な長所は、静粛性の高さや荒れた舗装路面への対応力の大きさなど。装備では、後席にもシートヒーターが備わっているのがレクサス流の“おもてなし”を表していた。

その一方で“EVらしくない”というのは、EV走行の特徴である回生ブレーキの効き具合の弱さと、どんな設定でも明確な回生を選べないもどかしさだ。

加えて、インテリアデザインやドライバーインターフェイスなどもエンジン版のUX200やUX250hとまったく変わらず、“パワートレインをバッテリーとモーターに置き換えただけのクルマ”でしかないところが、僕にはもったいなく思えたのだ。

なぜならば他ブランドのEVの中には、パワートレインをバッテリーとモーターに置き換えただけにとどまらず、プラスアルファの実力と魅力を備えているクルマが少なくないからだった。

>>よく見ればかなり違うゾ! ガソリンのUXとEVモデルを写真で比較

レクサスにとってEVは選択肢のひとつ。今後もHVなど多くの選択肢を用意

 

まずは、それらについてUX300eのチーフエンジニアである渡辺 剛さんに画面越しに訊ねてみた。

「レクサスとしてEVにこだわりを持っているというよりは、電動化のゴールをどう進化させるのか? が重要になってきます。EVが造りたかったわけではないのです。将来のカーボンニュートラルをいかに実現するかが重要となってきています」

つまり、カーボンニュートラルという大きな目標に向けてさまざまなことを行わなければならないがEVの開発と製造、つまりUX300eはあくまでもそのうちのひとつであるということなのだ。

>>いま話題のカーボンニュートラルって何? そして電動化を勝ち抜くのは欧州か、それとも日本なのか!?

EVといえば強力な回生ブレーキだが、レクサスは“自然な”動きを優先

では、回生ブレーキの弱さや操作系統の変わらなさなどについては、どんな開発指針にもとづくものなのだろうか?

「回生ブレーキはこれまでの内燃機関(エンジン)を持つクルマの運転感覚には存在しなかったものです。レクサスとしては、“人の感性に合ったクルマ”を造ることを大切にしていますので、回生ブレーキのような、人がクルマに合わせなければならないような特性を持たせることはできません」

たしかに回生ブレーキというものが自動車に用いられるようになったものはプリウスなどのハイブリッドカー登場以降のことで、その感覚はまだまだ新しいモノだ。初めてのもの、新しいものを“新鮮でワクワクする。未知の感覚だ”と面白がる人もいれば、“今まで感じたことがない”というだけで遠ざけてしまう人もいるだろう。

内装だって特別感なし。後席の快適性は難あり

操作部分がほぼ同じでドライバーインターフェイスが内燃機関版のUXと変わらない点については、次のように答えを受けた。

「Cプラットフォームのコンバージョンの限界の中で造りましたので、変わっていません」

Cプラットフォームというのは、内燃機関版のUXやトヨタC-HRなどに用いられているトヨタのプラットフォームのこと。中国では、EV版のC-HRが販売されている。

プラットフォームのサイズの制限があるとはいえ、UX300eの後席に座ると前席のシートと床の間の隙間がほぼゼロなので、そこに爪先が収まらなくて具合が良くない。

たった20センチにも満たないのだが、その分だけ足が伸ばせず、脚部を屈曲したり、組み変えたりしにくく、“体育座り”のような姿勢をずっと続けざるを得ないから後席で移動するのは子どもでないと苦しいだろう。

「ご指摘の通りです。バッテリーが車内側に出っ張っているために、前席のシート下に足を収めるのは難しくなっています」

このシート下のスペース不足やドライバーインターフェイスの変わらなさなどは、あくまでもUX300eがガソリンモデルのUX200やハイブリッド版のUX250hという内燃機関を用いたクルマをベースに造られたEVであることを強く認識させられる。

>>かなり違う! ガソリンモデルとEVモデルの後席を写真で比較

ハイブリッドだけではダメ! 次なる一手が必ず必要

世界のEVの中には、UX300eのように内燃機関で走るクルマを極力変えずに使って造り上げられたEVがある一方で、プラットフォームなど共有しながらも、EVらしく回生ブレーキの作動範囲も広く取り、エクステリアデザインやインターフェイスもEVの新しさをさらに盛り込んでいるクルマもある。

代表的なものとしては、ジャガー I-PACEやアウディ e-tronなどが挙げられる。日産リーフもそのグループに入るだろう。ホンダeなどは先んじていて、リアにモーターを搭載し後輪を駆動するRRレイアウトを採用し、EVならではの新しい運転感覚を実現し、前に向かって進んでいる感じを強く受けることができて、とても魅力的だ。

テスラと考え方が真逆! バッテリーの捉え方で作りが変わる

さらに言えばEVにはテスラという巨人が存在していて、第一号の「ロードスター」以外のテスラ各車はベースとなる内燃機関モデルを持たず、最初からEVオリジナルとして造られている。

現在、世界で販売されているEVの一方の端にUX300eにあるとすれば、そのもう一方の端はテスラの各モデルだ。

「テスラは“バッテリーファーストでクルマを造ると、こうなるよね”という良い見本です」と先述の渡辺さんは語るが、どういうことだろうか?

「なにか元となるクルマから造られたEVが“既存のシャーシにバッテリーをどう載せれば良いか?” と苦心しているのに対して、テスラは“バッテリーを上手く載せるためにはどんなシャシーが必要となってくるか?”と考えられて造られています」

つまり、テスラとテスラ以外のEVでは設計コンセプトの発想がまったく逆だというのだ。渡辺さんのその説明はとてもわかりやすく説得力があるので唸ってしまった。

テスラはアルミ素材をシャシーに上手く活用しているが、他のメーカーではアルミ以外にも素材を活用している。「アウディはアルミだけでなく、マグネシウムや鉄と組み合わせ、アルミ一辺倒ではない取り組みを行っていて興味深いですね」

電動車の開発はパワートレインだけでなく、シャシーや素材への新しい取り組みが要求されてくる。

レクサスがEVに賭けた秘めたる決意とは

「ハイブリッドをやってきた我々(トヨタグループ)の強みを生かしていくべきですが、“ハイブリッドさえやっていれば大丈夫”と言える状況ではもうありません」

ようやく本音のようなものが渡辺さんの口から聞こえてきたようだ。

「レクサスのEVはパフォーマンスだけ良ければいいというものではありません。ユーザーにも社会にもメリットとなるEVが求められるでしょう」まさしくそうしたEVがレクサスから登場する日のことを大いに期待したい。

渡辺さんの言葉は非常にマジメで優等生的なもので、文字だけ読むと言い訳のように読めてしまうかもしれないけれども、最後に、今後のレクサスのEVと電動車に賭ける決意のようなものが聞けた。

【筆者:金子 浩久】

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金子 浩久
筆者金子 浩久

モータリングライター 1961年東京生まれ。 自動車と自動車に関わる人間について執筆活動を行う。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』など。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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